マル激!メールマガジン 2019年4月10日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第939回(2019年4月6日)
平成の失敗を活かせる令和にしよう
ゲスト:野口悠紀雄氏(一橋大学名誉教授)
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 5月1日から始まる新しい元号も発表になり、30年続いた平成もいよいよ最後の月を迎えた。
 バブル景気の熱狂のさなかに始まった平成は、冷戦の終結に湾岸戦争、幾度かの金融危機に2つの大地震と原発事故等々、実に多くの歴史的なできごとがあった。
 しかし、一橋大学名誉教授で経済学者の野口悠紀雄氏は、平成を一言でまとめるなら「日本が世界経済の大きな変化から取り残され、その国際的地位を右肩下がりに下げた30年だった」といわざるを得ないと苦言を呈す。その上で、日本は平成の30年間、世界に何が起きているかわからずに、「寝てしまった」というのだ。今、新しい時代を迎えるにあたり、平成の失敗を総括し、その教訓を元に改革を進めていかなければ、令和の時代も日本の国際的な地位の低下には歯止めがかからないだろうと、野口氏は言う。
 野口氏の言う世界経済の大きな変化は「ソ連の崩壊」「中国の台頭」「IT革命」「製造業の垂直統合から水平分業への移行」などだ。この変化に対応するために、日本は輸出依存の大量生産型の製造業から脱却し、低賃金労働力のある海外へ生産拠点を移転した上で、水平分業型の製造業への構造転換にいち早く取り組む必要があった。しかし、当然のことながら、改革は痛みを伴う。経営者も政治家も、この痛みを甘受することができず、様々な言い訳をつけて、必要とされる改革を先送りした。その結果が日本の国際競争力の喪失であり、平成の始まる直前には一時、世界のトップクラスの経済力を手にしながら、この30年で事実上の二等国へ転落してしまった最大の理由だった。
 やや手遅れ感はあるが、野口氏は令和の時代に日本が最低限しなければならないこととして、産業構造の転換、移民や高齢者、女性の活用を通じた労働力不足への手当、うなぎ登りの社会保障費の抑制、間もなく世界一の超大国になる隣国中国との関係、そして規制緩和などをあげる。逆に、それができなければ日本の右肩下がりの凋落は続き、日本の将来はお先が真っ暗だということになる。
 平成の時代を振り返り、来るべき令和の時代にわれわれが何をしなければならないかを、野口氏とともにジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が考えた。

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今週の論点
・変化に気づけず、世界から取り残された日本
・日本が「眠り続けている」理由とは
・スティーブ・ジョブズも、日本ではただの変人
・日本人は危機感を持つことができるか
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■変化に気づけず、世界から取り残された日本

神保: 新元号にゴーンさんの再逮捕、また宮台さんのラジオ『デイ・キャッチ!』の終了など、話題はたくさんありますが、さっそくゲストをご紹介します。インタビューを合わせると5回目のご出演となります、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんです。
 前回はブロックチェーンの話、その前は財政の話で、ドゥームズデイという言葉もありました。また、インフレ目標2%は達成不可能だということもありました。実際に、野口さんが「糸は引っ張れるが押せない」とおっしゃったように、達成できていません。
 そして、野口さんは『平成はなぜ失敗したのか-「失われた30年」の分析-』という本を出されています。平成最後の1ヶ月ということで、「平成企画」は数多くありますが、美化するような話や懐かしむものが多く、失敗論みたいなものは少ないです。そのなかで、明確に「失敗」と書かれていますが、宮台さんからすると、これでも野口さんは優しくなったということです。

宮台: そうですね。野口さんには震災の前後、2010年と2012年に「ドゥームズデイ」がらみで出ていただいています。野口さんは非常にオーソドックスに、リフレ派のちょうど反対で、