マル激!メールマガジン 2020年7月15日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第1005回(2020年7月11日)
日本経済はコロナと五輪ショックを乗り切れるのか
ゲスト:白井さゆり氏(慶応義塾大学総合政策学部教授)
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 コロナ禍に見舞われるはるか以前から、日本経済には危険信号が灯っていた。かなり危うい状況下で、日本が最後の心の支えにしてきたのが、2020年の東京五輪だった。
 安倍政権が日銀総裁に黒田東彦氏を指名し大々的にアベノミクスの旗を掲げた時期(2013年2月)と、2020年の東京五輪の開催の決定(2013年9月7日)時期はほぼ重なっていることには重要な意味がある。日本は大胆な金融緩和に加え、五輪のためのインフラや環境整備の名目で大量の公共支出が正当化され、また民間も五輪需要を当て込んだ積極的な投資が行われてきた。端的に言えば、あまり期待できるニュースがない中で、日本経済はこの7年間、アベノミクスによるインフラ期待と五輪特需期待だけで回ってきたといっても過言ではなかった。
 ところが今や一向に達成できないインフレターゲットに加え、データを誤魔化してまで辛うじて上昇していたことになっていた賃金が実はまったく上がっていなかったことまで明らかになると、アベノミクスの神通力は完全に消え失せてしまった。それどころか、一時は「黒田バズーカ」だの「異次元」だのと囃された金融緩和が、今やその出口シナリオさえ描けないままその副作用にのたうち回っているのが実情だ。
 そこで最後の期待が集まっていたのが五輪特需と言われる五輪の経済効果だった。しかし、元日銀の審議委員で慶應大学総合政策学部教授の白井さゆり氏は、20兆と見積もられている五輪の経済効果のうち日本は既に16兆を消費済で、もともとそれほど多くの弾は残っていないのが実情だという。
 しかも、本来であれば再来週にも開会式を迎えるはずだった東京五輪が、新型コロナ感染症の蔓延によって、今のところは来年7月まで延期されることになった。現時点では「延期」とされているが、現実問題としてまだ世界中にこれだけコロナが広がり続ける中、来年の夏までに世界中の国々が各競技で五輪予選や選考会を開いて代表を決めることなど到底不可能だろう。五輪頼みだった日本経済が、五輪という目標を失った時、一体何が起きるのか。
 白井氏はまた、金融破綻による需要の落ち込みが世界経済全体の足を引っ張る形となったリーマンショックと比べて、今回のコロナに起因する経済への打撃は、需要と供給の両方が落ち込んでいることから、そこからの立ち直りは容易ではないとの見方を示す。
 外食産業のようにコロナが恐くて一時的に客が利用を控えているものもあるが、例えば今回のコロナで国際会議などは遠隔で行うのがデフォルトになってしまった結果、これまで当たり前のように利用されていた国際会議場や飛行機、ホテルなどの旅客業はもう二度と以前のような状態には戻らない可能性も高い。
 そもそもコロナが来る前からやばかった日本経済が、コロナの襲来によって、一体今どんな状態になっているのか。また、そもそも五輪後が危ないと言われつつも、7年間五輪頼みでやってきた日本にあって、その五輪の中止がほぼ確定的となった今、その影響はどのような形で出るのか。
 白川総裁と黒田総裁の2人の総裁の下で日銀の審議委員を5年にわたり務め、現在は大学教員のかたわらで企業のESG化(ESG=Environment, Social, Governance)の啓蒙に積極的に関わる白井氏に、コロナと五輪の延期、あるいは中止による「五輪ショック」の日本経済への影響と、この先、日本が経済的に生き残る道としてどのような選択肢があり得るのかなどを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。

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今週の論点
・リーマンショックとの対比と、コロナ以降の不可逆的な変化
・出口のない経済政策と、ただ“安心”を求める国民性
・五輪開催での「レガシー効果」という幻想
・あきらめた日本人が立ち向かうべき課題
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■リーマンショックとの対比と、コロナ以降の不可逆的な変化

神保: 感染者数を見ると「コロナ後」なんて言葉を使ってはいけないのではないか、というくらい、まだ全然終わっていないのですが、ここまでの状況をきちんと見て、特に経済面での影響をテーマにしたいと考えました。宮台さん、最初に何かありますか。

宮台: 感染判明者が2日続けて200人を超えていますが、検査数は倍には増えておらず、1.5倍強なので、第二波が来ていることはほぼ確定です。楽天的な人は第二波は来ないと言っていましたが、どんなに僕らがコロナ風邪の免疫を持っているとしても、スケールは欧米より小さいが当然、第二波は来るわけです。政権はそれを針小棒大化して政治利用したという経緯はありますが、ここから「大したたことない」と言っても、もうちょっと遅いですね。