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柴山哲也氏:総務省接待スキャンダルの根底にある、政府による放送免許の許認可という大問題
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柴山哲也氏:総務省接待スキャンダルの根底にある、政府による放送免許の許認可という大問題

2021-03-17 20:00
    マル激!メールマガジン 2021年3月17日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1040回)
    総務省接待スキャンダルの根底にある、政府による放送免許の許認可という大問題
    ゲスト:柴山哲也氏(ジャーナリスト、メディア研究者)
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     総務省の接待スキャンダルが底なしの様相を呈している。
     菅首相の長男が幹部を務める衛星放送事業者の東北新社による総務省の幹部クラスに対する大規模な接待攻勢はその後、接待の主体がNTTに、接待対象が野田聖子、高市早苗両総務大臣経験者へと燎原の火のごとき広がりを見せるにいたり、いよいよ腐敗の深刻さを印象付けている。
     しかし、今回一連の接待の主体が放送事業者とNTTという日本最大の通信事業者だったことは、決して偶然ではない。なぜならば、総務省が管轄する放送と通信の2分野は、日本の数ある産業の中でももっとも既得権益企業による寡占状態が維持されている分野であり、利権としての性格が強いものだからだ。今回は放送、通信という総務省が持つ2つの巨大利権のうち、特に放送利権について取り上げる。
     日本の放送行政は異常だ。日本は先進国では異例中の異例とも言うべき、政府が放送事業者に直接放送免許を付与する権限を持つ。これでは政府から免許を頂戴する立場にある事業者に政府を監視したり権力の暴走をチェックする報道本来の機能を果たせるはずがない。今回の接待スキャンダルの背景を考えても、放送事業者にとっては、自社の生殺与奪を握る放送免許の付与権を一手に握る総務省に逆らえるはずもないし、そこで競合他社が優遇されるようなことがあれば、競争上も圧倒的に不利になることは目に見えている。
     実は日本は戦後、GHQの要求に屈する形で、放送免許の付与権を持つ政府から独立した放送委員会を設立した時期があった。1950年に設立された電波監理委員会がそれだ。しかし、1952年4月にサンフランシスコ講和条約が発行し日本が施政権を回復すると、何とその2週間後に吉田茂内閣は電波3法の改正案を国会に提出し、電波監理委員会の廃止を図っている。主権回復後の日本政府が何よりも最初に手を付けたのが、放送免許の付与権を政府に取り戻すことだったのだ。
     以来日本では政府が放送免許の付与権を一手に握り続け、放送業界は政府に対して常に弱い立場に置かれる一方で、政府は放送事業への新規参入を厳しく制限し続けてきた。放送と新聞が同一資本で結ばれる、いわゆるクロスオーナーシップに制限がない日本では、本来政府から何の規制も受けないはずの新聞社も、放送局の株主という立場故に政府に対して弱い立場に立たされる一方で、寡占市場の放送から莫大な利益を得ている。今回の接待スキャンダルを巡り、放送局が背後にある放送免許の問題に触れたくないのはやむを得ないとしても、新聞社までが日本の放送行政の異常さにだんまりを決め込んでいるのは、新聞社がテレビ局と系列化していること、すなわち新聞社が放送利権の受益者であることと決して無関係ではないだろう。もし無関係だとすれば、あまりにも無知に過ぎる。
     このような形で放送と通信が利権化し、政治権力や接待攻勢によって容易に行政が歪められる構造になっていることの最大の被害者は言うまでもなく国民だ。特定の大手既得権益企業による寡占が続き新規参入がないことで競争が阻害されるため、当然の帰結として通信料金は割高になり、放送内容は劣悪になる。いずれも国民にとっては大きな損失だ。
     日本の民主主義、ひいては行政の機能不全が指摘されて久しい。しかし、そもそも民主主義の大前提にある言論や情報の自由な流れが、このような形で大元で制限されていて、民主主義が機能しないのは当然のことだ。
     今週はジャーナリストでメディア研究家の柴山哲也氏とともに、総務省接待スキャンダルの根底にある、日本の放送利権、とりわけ政府による放送免許の付与権の独占問題とその影響、電波オークション導入の是非などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・“文春砲”に頼らざるを得なくなったメディア
    ・菅総理の答弁が象徴する、政府による許認可の「合理性のなさ」
    ・恐怖心や不安感から接待に走るテレビ局
    ・電波オークションも今の日本では危険か
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    ■“文春砲”に頼らざるを得なくなったメディア

    神保: 今回のテーマは非常に重要ですが、マル激でこれまで普通に話してきたことでもあります。長く見ている方にとっては、若干いまさら感があるかもしれない。

    宮台: マル激の最初の本が『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』ですからね。

    神保: そう、最初から話していることなのですが、これが広く共有されないところに、宮台さんのいう「鍵のかかった箱の中の鍵」問題がある。メディア自身が利害当事者だから、問題に触れないです。今回のような接待スキャンダルが起きても、放送免許の「め」の字も出さない。そこに触れずに接待問題をずっと追及するという、不思議な報道になっています。

    宮台: 山田真貴子内閣広報官、あるいは菅ジュニアがスケープゴートになっていますね。 
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