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長谷川利夫氏:精神科病院で身体拘束が世界一多い日本で遂に違法判断が出たことの意味
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長谷川利夫氏:精神科病院で身体拘束が世界一多い日本で遂に違法判断が出たことの意味

2021-11-17 22:00
    マル激!メールマガジン 2021年11月17日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1075回)
    精神科病院で身体拘束が世界一多い日本で遂に違法判断が出たことの意味
    ゲスト:長谷川利夫氏(杏林大学保健学部作業療法学科教授)
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     先月、精神科病院で5年前に亡くなった40歳の男性に対して、違法な身体拘束による死であるとの判断が最高裁で確定した。精神科病院での身体拘束による死亡は、これまでも訴訟が提起されてきたが、最高裁で違法との判断が確定するのはこれが初めてだ日本の精神科医療は、先進国のなかでも特異な状況にある。
     OECDによると、精神病床数としてはアメリカの8万2500、ドイツの10万6000に対して日本には32万もの病床がある。日本の人口1000人あたりの病床数はアメリカの8倍、先進国のなかでも多い部類に属するドイツの2倍になる。平均在院日数も日本は265日ととびぬけて多い。行われている医療内容も、身体拘束、隔離などの行動制限が多用されるなど、日本は他の先進国とは明らかに様相を異にしている。
     この問題を追及してきた杏林大学の長谷川利夫教授が2015年に行った調査では、身体拘束が行われていた245人の患者の平均拘束日数は96日で、最も長い人は1000日を超えていた。他の国でも精神科医療で身体拘束が行われることはあるが、これが著しい人権侵害となることを考慮した上で、やむを得ない最小限の時間に限定されている場合が多く、実際の拘束時間は数時間からせいぜい数十時間が上限となっている。日本の数日単位、ましてや月単位や年単位という長さは常軌を逸しているといわざるを得ない。
     今回、判決が確定した大畠一也さんのケースでは、統合失調症で入院した3日後に隔離され、その後、注射しようとした際に嫌がって抵抗したという理由で、その翌日に興奮や抵抗がないにもかかわらず身体拘束が開始された。そして6日後に拘束を解除した直後に肺動脈血栓塞栓症で亡くなっている。その後、両親が精神科病院を提訴し、一審の金沢地裁で、医師の裁量を認め違法ではないとされたが、二審の名古屋高裁は、身体拘束の開始も継続も違法として病院側に賠償を命じ、逆転勝訴となった。そして10月19日に、最高裁第三小法廷が病院側の上告を退け、高裁判決が確定した。
     実は、精神科医療の身体拘束についてビデオニュース・ドットコムでは、2017年3月に『マル激トーク・オン・ディマンド・プラス』で長谷川氏に話を聞き、問題の深刻さを伝えたが、その後、5月にニュージーランドから日本語を教えにきていたケリー・サベジさんが、神奈川県内の精神科病院で10日間の身体拘束の後、肺塞栓症の疑いで亡くなるという事態が起きていた。その事態を受けて長谷川氏は「精神科医療の身体拘束を考える会」を立ち上げ、メディア等に問題の重大さを訴えかける活動を積極的に続けてきた。
     サベジさんや大畠さんのご家族にとって、治療のためと思って入院した病院で起きた身内の突然の死は到底受け入れられるものではなく、理解しがたいものだ。精神病棟という密室の中で何が起きていたのか、なぜ愛する家族は死ななければならなかったのか、情報開示も不十分で、病院側と患者や患者の家族の間には大きな壁がたちはだかっている。
     しかし、今回の最高裁判断は、これまで精神病棟で当たり前のように身体拘束が行われてきた日本で、僅かながら希望の扉が開かれる結果となった。患者の死亡という特殊な状況の下とは言え、合理的な理由なき身体拘束は違法であるという至極当然の主張がようやく認められたことの意味は決して小さくない。とは言え、無論、まだまだ日本の精神科医療の課題は山積している。いまも「精神科医療の身体拘束を考える会」代表として孤軍奮闘、活動を続けている長谷川氏と、日本の精神科医療の問題点やその背景などについて社会学者・宮台真司とジャーナリスト・迫田朋子が議論した。

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    今週の論点
    ・日本の精神医療の異常性
    ・歴史的な違法判断が出た事件の経緯とは
    ・私人が人権を制限できてしまう医療保護入院制度
    ・日本が変わるには、外圧に頼るしかないのか
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    ■日本の精神医療の異常性

    迫田: 今回は医療の話をしますが、コロナに関して、「日本は病床がこんなに多いのに、なぜ自宅療養で病院に入れないんだ」という話がありました。そのときに、実は精神科の病床が非常に多いんだ、という話もしていましたね。

    宮台: マル激でも少しだけ触れました。

    迫田: 日本の精神科の医療が非常に閉鎖的で、諸外国と比べてとても問題だということはマル激でも伝えたことがあります。そのなかで、やっとほんの少し扉が開いたということを今回はお伝えしようと思います。実は先月、精神科病院で5年前に亡くなった40歳の男性に対して、違法な身体拘束による死であるとの判断が最高裁で確定しました。精神科病院での身体拘束による死亡については、これまでも訴訟が何度も提起されてきましたが、最高裁で違法という判断が確定するのは初めてです。今回は、精神科病院の問題を提起し続け、私から見るとお一人で孤軍奮闘されてきた杏林大学教授の長谷川利夫さんにお越しいただきました。 
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