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マル激!メールマガジン 2024年6月5日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1208回)
5金スペシャル
あなたはそのサプリの中身を知っていますか
ゲスト:田村忠司氏(ヘルシーパス代表取締役社長)
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多くの人が飲んでいるサプリメント。日本では少なくとも20歳以上の人口の3割以上の人がサプリを利用しているそうだ。しかもその市場は年々拡大しており、今やサプリメントを含む健康食品市場の規模は1兆円とも2兆円とも言われている。しかし、日常的に身体に取り込んでいるものであるにもかかわらず、ことサプリに関してはどういうわけかその中身やリスクについて正しい知識を持って飲んでいる人は意外に少ない。
小林製薬の紅麹食害事件では、問題となったサプリメントが機能性表示食品の届け出をしていたことから、機能性表示食品制度の見直しがしきりと取り沙汰されていて、政府は5月31日、被害報告の義務付けを含む対応方針を取りまとめている。確かに機能性表示食品という制度は、消費者に対する実態以上の権威付けになっているという意味で問題が多いが、かといってサプリの中には必ずしも機能性表示食品のお墨付きを得ていないものも多い。
実際、サプリを飲んでいる人の多くは、それが機能性表示食品としての届け出がされているかどうかには必ずしもこだわっていないようにも見える。どちらかというと、有名人などが語る広告文句に乗せられて買っている人や、場合によっては効くかどうかは度外視して、自身の生活スタイルに対する免罪符や気休めとして飲んでいる人が多いのではないか。
医療機関に特化したサプリメントを製造販売している「ヘルシーパス」社長の田村忠司氏は、現在市場に出回っているサプリには問題が多すぎると指摘する。まず、ほとんどのサプリは、有効成分は1%程度しか含まれておらず、残る99%は添加物であることを認識する必要がある。わざわざお金を払って添加物を買っているのだ。さらに、サプリに含まれている栄養素には科学的根拠が希薄だったり効果が怪しいものも多い。また、実際に表示されている分量の有効成分が含まれているかどうかも、確認のしようがない。
また、サプリによっては実際に表示されているだけの有効成分が含まれている場合もあるが、それを毎日摂取したり他の薬と併せて摂ることによって、アレルギーなど予期せぬ副作用が生じる場合もある。 東京都が毎年行っている健康食品の試買調査では、店頭で売られている44品目のうち26品目に、不適正な表示・広告が見られたという。インターネットの通信販売にいたっては、81品目中79品目に問題のある表示が見つかっている。
例えば、飲むだけで痩せるとか、膝の痛みが治るなどといった過大広告が蔓延する中、われわれ消費者は何に気をつければいいのか。田村氏は、まずサプリのパッケージをよく見て購入することが重要だと言う。パッケージの裏側を見れば、栄養素の種類や配合量、添加物の有無などほとんどの重要なことは分かるようになっている。実際、多くの人が表に書かれている効果の部分は見ていても、裏側の成分表示はほとんど見ていないのではないか。
その意味では買う前にパッケージを確認することができないテレビショッピングでの購入は問題が多いと田村氏は警鐘を鳴らす。また、「医療機関向けサプリ」と謳っていながら一般向けに販売していたり、「ドクターズサプリ」と言いながら医師の関与なしに販売していないかについてもチェックする必要があるという。広告で平気で嘘をつくような会社が、製造過程でお金をかけてきちんと温度管理をしたり、不要な添加物を減らす努力をしているとは到底思えない。
たとえ無駄だとしても、サプリを飲むことで安心感や満足感が得られるなら、それはそれでいいではないかという議論もあるのかもしれない。プラシーボ効果というものもあり得る。しかし、その一方で、サプリには医薬品と変わらないほどの効果を持つ成分が含まれている場合もある。例えば、昨今問題になっている紅麹サプリについては、アメリカの医薬品にも使われているモナコリンKが含まれていて、実際にコレステロールを低減する効果が期待できると考えられているのだ。
今回は死亡事故が起きたことでようやく社会も問題視するようになったが、死亡事故にまで至らない副作用が起きている事例は実際には多いはずだと田村氏は言う。
またメディアの責任も重大だ。地上波やBS、CSでひっきりなしに流れている健康食品やサプリのテレビショッピングは、売り上げの大半が放送局に電波料として入る仕組みになっているものが多く、放送局としてはサプリの問題を殊更に取り上げたくない事情がある。紙媒体でもサプリの広告出稿量は多く、メディア側の大人の事情として、死亡事故でも起きない限りあえてサプリの問題を取り上げようという動機は起きにくい。
サプリというのは、有効成分がほとんど入っていなかったり科学的根拠が希薄なため、ほとんど効かないものは効かないもので、そんな添加物の塊のようなものをメディアが喧伝し、消費者に年間兆円単位のおカネを費やさせていていいのかという問題もあるが、逆に効くものは効くもので、医師の指導なく服用することにはそれ相応の危険が伴う。
市場に出回るサプリの危険性や自分にとって効くサプリと効かないサプリの見分け方、われわれの多くがついついサプリを頼りたくなってしまう心理の背景にある不全感や焦燥感、孤独感などの正体について、ヘルシーパス代表取締役社長の田村忠司氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・なぜわれわれはサプリメントを求めるのか
・実は知られていないサプリ業界の裏側
・市場にまん延する過大広告
・安全で効果のあるサプリとそうでないものの見分け方
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■ なぜわれわれはサプリメントを求めるのか
神保: 今日は2024年5月30日の木曜日です。今回は健康食品の中でもサプリを特に取り上げたいと思います。
宮台: 僕は1979年から86年までアウェアネス・トレーニングに関わっていました。92年にアウェアネス・トレーニングへの大バッシングが世界中で起きたことにより、アウェアネス・トレーニングを名乗るものがなくなり、個人ではなく企業をクライアントにするコーチングに一挙に変わっていく。そのコーチングも、社会に適応しなくても良い、自分の道を行け、というものが社会や会社に適応させる方向にどんどん変わっていく。その延長線上でアンチエイジングが出てきて、その後にサプリメントブームが起こりました。要するにやってる感の問題です。
神保: 根底にある不全感の問題にも目を向けないといけません。一方的に責められないところがありますから。
宮台: 毎日、狩猟・採集・農耕で肉体を使いまくって疲れてご飯を食べて寝るという生活であれば、そこにサプリメントが入り込む余地はないでしょう。
神保: 厚労省のデータだとサプリメントを飲んでいる人の割合は人口の30%台くらいですが、実際には5割を超えているとも言われています。1億2,000万人の人口があるということを考えればこれはすごいことです。宮台さんの言うような病理の問題ですね。
一方で、紅麹で人が亡くなる事件がありました。死者が出て初めて話が大きくなっていますが、そもそもサプリの錠剤に含まれている有効成分は1%くらいで、99%は添加物だということです。つまり添加物の塊を飲んでいるということを認識しなければなりません。今回のように人が死ぬという事態はめったにないかもしれませんが、このことの害を認識しなければなりません。
ゲストの方には、業界の実態がどうなっているかということを含めてお伺いしたいと思います。今回のゲストは、この分野の権威である、ヘルシーパス代表取締役社長の田村忠司さんです。ヘルシーパスというのはサプリメントの会社ですが、お医者さんと歯医者さんに供給するためのサプリメントを出す会社であるということですね。田村さんのような、お医者さん専門に医薬品ではない商品を提供する会社というのは他にありますか。
田村: 医療機関だけに絞っている会社というのはなかなかありません。医療機関に供給していることを宣伝材料にして、市販しているところはありますが。
神保: なぜ市販しないのですか?
田村: 会社の成り立ちがそれを許さないのです。栄養状態が悪い患者さんを助けたいドクターがいたのですが、探しても探しても良いサプリメントがなかった。そこで、いいサプリメントを作る会社を作ってしまおう、というドクターがお金を集め、それを預かって会社が始まりました。市販することは、お医者さんやその患者さんたちなど、株主の意志に反することになります。
宮台: 最初のステップからして、市販のサプリメントにはまともなものがあまりないということが前提で始まったわけですね。
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