マル激!メールマガジン 2014年5月14日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第682回(2014年05月10日)
TPPの背後にある新自由主義とどう向き合うか
ゲスト:萩原伸次郎氏(横浜国立大学名誉教授)
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アメリカは一体日本をどうしたいのだろうか。
TPPの日米協議が難航し、久々の日米貿易摩擦らしきものが表面化している。日米間の貿易摩擦が激化した80年~90年代のそれと比べるべくもないほど静かなものだが、今回は交渉の内容が基本的に非公開とされ外野は黙って静かに状況を見守るしかない中で、近年になく日本の経済や社会制度にまで踏み込んだ交渉が行われているようだ。
マスメディアは日本が聖域とした5品目の取り扱いや関税の税率など個別分野にばかり注目する傾向があるが、そうした報道からは過去の日米構造協議や日米包括協議などの日米交渉において、日本の社会や市民生活が大きな質的変化を強いられたことへの認識は微塵も感じられない。結果的に、仮にTPPが目指す関税の原則全面撤廃が行われた時、日本の社会がどう変質するかについては、まだ十分に検証されたとは言えないのではないか。
アメリカの通商政策や国際貿易問題に詳しい横浜国立大学の萩原伸次郎名誉教授は、「TPPは第3の構造改革」になると指摘する。TPPは単に関税などの貿易障壁の撤廃を求めるだけにとどまらず、自由貿易に代表される新自由主義的な価値観やそれを前提とした経済・社会制度の変質まで迫るものになる可能性が高いからだ。
戦後、経済成長を遂げ、貿易黒字を貯め込むようになった日本は1980年代以降、中曽根政権の土光臨調や前川リポートなどを通じて構造改革を進めてきた。1980年代以降の日本の大きな制度改革の背後には、決まってアメリカの要請があった。1990年代に入ると、アメリカから毎年年次改革要望書なる書面が届くようになり、日本の改革はほぼその要望書に沿って行われてきたといっても過言ではない。
70年から80年代に日本の経済的台頭を許したアメリカは、日本の経常黒字や消費者利益といった正義をかざしながら、自国利益を追求するために厳しく、そして着実に日本を新自由主義陣営に引き込み、アメリカ製の商品が買われやすい状況を作ろうと努めてきた。しかし、にもかかわらず、アメリカ商品は依然として日本では必ずしも売れているとは言えない。無理矢理大店法を撤廃させ、日本中にシャッター通りを作っておきながら、アメリカの大型店舗はほとんど日本に入ってきていない。
アメリカは日本をどうしたいのか。われわれはアメリカの要求の背後にある新自由主義や自由貿易とどう向き合うべきなのか。それに従っていれば日本は幸せになるのか。日米繊維交渉からTPP問題にいたる日米貿易交渉の歴史を振り返りながら、ゲストの萩原伸次郎氏とともに、神保哲生と宮台真司が日本が得たものと失ったものを議論した。
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今週の論点
・日米通商交渉の歴史と転換点
・大規模小売店舗法改正の功罪
・日本人が無自覚な、社会資本に対する「せめぎ合い」
・市場主義経済学は「科学」でなはい――日本人が自立するために
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