マル激!メールマガジン 2014年6月11日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第686回(2014年06月07日)
年金制度に対する根本的な疑問とその解
ゲスト:駒村康平氏(慶應義塾大学経済学部教授)
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厚生労働省が6月3日に発表した公的年金に関する長期見通しによると、日本経済がある程度以上のペースで成長すれば、目安とされる「所得代替率」の50%は辛うじてクリアできるが、過去20年の鈍い経済成長が続けば35%まで低下するという。所得代替率とは現役世代の手取り平均収入と厚生年金のモデル世帯における給付の割合で、端的に言うと引退して年金をもらう年齢に達した時、現役時代の平均給料の何割が年金として支給されるかを示すものだ。特に国民年金にしか加入していない約4割の加入者にとって、年金はもはや老後の安寧を保障する制度とは言えなくなったと言わざるを得ない。
社会保障政策や年金問題に詳しい慶応大学教授の駒村康平氏も今回の政府の試算について、「経済成長を高く見積もった条件での試算が目につく。また、このままでは年金財政は維持できるが、最低保障という年金本来の機能が失われてしまう恐れもある」と厳しい見方を示す。実際、国民の多くは、このまま年金制度が維持できるかどうか、将来年金をもらえるかどうかに対してとても懐疑的になっている。
年金制度に関する議論では、現在の制度を手直ししていく修正型や賦課方式をやめて積み立て方式に移行する積立型、または年金財源を全額税金で賄う税方式化型などいくつかの類型がある。その中で駒村氏は、税金で最低保障部分をカバーしながら報酬比例部分は残していく制度を提唱する。これはスウェーデン型と呼ばれる方式で、基本的には現役時代の負担に対して応分の年金が支給されることとし、そこで支給額が現在の国民年金の給付基準を下回る低所得層に対しては、生活保護と同様の考え方で税金によって一定額を補填するというもの。そうすることで、「たくさん払った人はそれ相応の年金を受け取れる」一方で、所得が低くて僅かしか年金を支払わなかった人が、とても老後の生活を支えられない程度の年金しかもらえなくなるような事態を避けることが可能になる。
年金は給付を減らしたり給付年齢を引き上げたり、あるいは保険料を上げたりすれば、制度そのものは破綻しないかもしれない。しかし、年金が老後の生活を保障するものにならなければ、もはやそれは年金の意味を成さない、単なる積み立て定期預金になってしまう。「年金は破綻しません」と言っているだけでは意味がないのだ。
国家の根幹に関わる公的年金問題をわれわれはどう考えればいいのか。今回示された試算を参照しながら、年金制度に関する議論の状況や政治の役割、報道の問題点などについて、ゲストの駒村康平氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・公的年金の見通しについて、各紙の評価が分れる理由
・楽観できない8つのシナリオ
・年金改革の4類型――日本に合うのは「スウェーデン型」か
・政府は「やるべきこと」をやり、国民を納得させられるか
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