マル激!メールマガジン 2014年7月2日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第689回(2014年06月28日)
安倍政権は日本をどうしたいのか
ゲスト:中野晃一氏(上智大学国際教養学部教授)
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6月22日に閉幕した通常国会では改正法案を含めると100本の法律が可決している。その中には医療や介護制度を大きく変える法律や、電力市場の自由化に関するもの、教育委員会を事実上首長の下に置く教育関連の法律など、ありとあらゆる法律が含まれている。政府が提出した法案の97.5%が成立していることからもわかるように、政治の舞台では弱小の上に内輪揉めを繰り返す野党がほとんど何の抵抗もできない中、安倍政権並びに自民党のやりたい放題がまかり通っている状態だ。
しかし、今国会で可決した一連の法案の中身を見ると安倍政権の基本路線は明確だ。まずは、財政負担を減らすための切り捨て。特に弱者の切り捨ての比重が大きい。そして民主党政権下で一部切り崩されかけた官僚支配の再強化。その上で、自民党や与党の票田や支持母体となっている既得権益にはほとんど手をつけずに温存するというもの。
何と言っても安倍政権の方向性を決定づける極めつけは、今週自民党が公明党との間で合意に達したとされる集団的自衛権の行使容認だろう。これも最終段階で制約条件ばかりがメディアで取り上げられたために全体像が見えにくくなっているが、どんな国内向けの子供だましの議論でごまかそうが、戦後の日本で一貫して武力行使の明確な歯止めとして機能してきた、「自国が武力攻撃を受けない限り武力行使はできない」という専守防衛の一線が破られたことに変わりはない。今後他国、とりわけアメリカ政府から第三国に対する武力行使への協力や参加を求められた時、時の政府に交渉によってそれを断ることができるとはとても思えない。
今さら軍事大国を目指そうというわけではないが、とにかく戦後の日本を縛ってきた平和主義憲法の軛から何とかして日本を解き放ちたい。解き放ってどうしようというところまで考えているとも思えないが、とにかくそれを解き放つこと自体に意味があると言わんばかりの、事実上の憲法の改正が、早ければ7月1日に閣議決定という形で行われようとしている。正規の憲法改正手続きを踏まずに事実上憲法を変更する行為は、クーデターの誹りを免れないほど重大な意味を持つものだが、今の政権にも与党にも、その自覚があるようには見えないのはなぜだろうか。
安倍政権が目指す日本の姿とは一体どのようなものになるのだろうか。その帰結が最終的にわれわれにどのような形でのしかかってくることになるのか。欧米の政治制度にも詳しい政治学者の中野晃一氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・「自助」という言葉でイデオロギーを押し付ける「医療・介護推進法」
・文教関連法案が、教育の政治利用を促進する懸念
・どさくさに紛れ、やりたい放題の「原子力損害賠償支援機構法」
・集団的自衛権の容認で、日本は“対米交渉上の最大の武器”を捨てるのか
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