マル激!メールマガジン 2015年5月6日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第734回(2015年5月2日)
アベノミクスは機能しているか
ゲスト:高橋洋一氏(嘉悦大学教授)
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アベノミクスで日本経済は復活に向かっているのか。
アベノミクスの異次元金融緩和によって市場で流通する資金が増えれば、物価が上昇すると予想する人が増え、消費が刺激される。それが企業の収益力を上昇させ、従業員の給与もあがり、再び日本経済は成長軌道に乗ることができる。われわれはそんなセオリーを聞かされてきたし、また、それに期待もしてきた。ということは、アベノミクスが本当に機能するかどうかは、何をおいても物価があがるかどうかに賭かっていることになる。では、アベノミクスの要諦とも言うべき「インフレ率2%」は本当に達成可能なのか。
ここまでのところ株高や円安による輸出関連企業の業績回復などもあり、一見日本経済は改善してきているように見える。しかし、肝心の物価は、今年3月の消費者物価指数は前年同月比で2.2%上昇しているものの、消費税増税の影響を差し引くと0.2%にとどまり、本格的な物価上昇に向けて改善しているとは言いがたい。日銀がどれだけ市場に資金を供給しようとしても(マネタリーベース)、企業や消費者の側に旺盛な投資・消費マインドが存在しなければ、その資金は設備投資や新たな消費には回らない。それでは実際に流通する総貨幣量(マネーストック)が増えないため、結局、資金を供給しただけでは物価は上がらないし、景気はよくならないという考え方が、従来は支配的だった。
しかし、この点について嘉悦大学教授の高橋洋一氏は「重要なのはマネタリーベースであり、マネーストックは関係ない」と話す。マネーストックはマネタリーベースが設備投資や消費に回る副次的な作用の結果増えるが、浸透には数年単位の時間がかかり、物価に与える影響としてはさほど重要視しなくていいという。そして高橋氏は、日本の経済は景気回復の兆しが既に出始めていることから、この先、インフレ率2%の達成は可能だと見る。
一方、アベノミクスに懐疑的な姿勢を示す経済学者で慶應義塾大学大学院准教授の小幡績氏は、人々の期待に働きかけて、予想インフレ率を上昇させて物価上昇につなげようというアベノミクスの金融政策は、株式市場などの金融資産市場では資産価格を動かす可能性はあるが、われわれの日常生活に関係するような製品やサービスの取引には影響しないと説く。つまり、アベノミクスのリフレ政策では物価上昇はおろか、予想インフレ率の上昇、つまりインフレ期待も起こせないというのが、小幡氏の主張だ。
マスメディア上などではアベノミクス効果による株高や大企業の賃金上昇などが囃されてはいるが、確かにわれわれ個人の生活レベルで、好景気を実感できる場面は少ないように見える。むしろ円安の影響で輸入製品の価格が上がったために、食料品や日用品の値段はあがっている。これで所得が増えなければ、実質賃金の減少となり、アベノミクスのセオリーとは逆の方向に進みかねない。
アベノミクスによる物価上昇2%は、今後実現するのだろうか。その結果、日本経済が今後、成長軌道に乗ることが本当に期待できるのか。リフレ派の論客、高橋洋一氏とともに、経済学者の小幡績氏、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・高橋洋一が語る、黒田会見のポイント
・インフレ率に影響するのはマネーストックか、マネタリーベースか
・アベノミクス批判に対する反論
・アベノミクスに対する小幡の見方と、高橋の答え
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■高橋洋一が語る、黒田会見のポイント
宮台: 神保さんが取材でお休みです。今回は経済ネタなので、お馴染みの慶応義塾大学大学院准教授の経済学者、小幡績さんに神保さんの代役とプラスαを務めていただきます。4月30日に日銀の金融政策決定会合が開かれ、黒田総裁が記者会見を行いました。そこで今週は、日本の経済政策とインフレ、アベノミクスについて考えていきます。
小幡: 黒田さんの記者会見を整理すると、以下のようになります。
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