第30号 2013.3.19発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、AKB48ブームから現代社会を掘り下げる(本当は新参ヲタの応援記!?)「今週のAKB48」、よしりんの愛用品を紹介していく「今週の一品」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※遂にTPP交渉参加を表明した安倍晋三。TPP参加で、農業はどうなる?国民皆保険は本当に守られるのか?ISD条項で日本の文化はどうなる??今週の「ゴー宣」では、安倍が誤魔化す日本に課せられた参加条件や、TPP参加を巡る自民党議員の裏切りなどが明白に!さらに、安倍政権とネトウヨの関係性、ネトウヨに屈するヘタレ組織の問題も取り上げる!
※愛らしく、時に珍妙なキャラグッズを生み出してきた『おぼっちゃまくん』!今週、取り上げるのは「エクスきゅうすミー 茶魔語湯呑み」。こんな豪華な湯呑み、かつてあっただろうか!?さすが『おぼっちゃまくん』、湯飲みと言っても、ただの「湯飲み」ではなかった…!!
※「そうよ、私は神様失格…」弟・スサノオノミコトのデストローイ!な行為で、アマテラスオオミカミ、日本最古の鬱、さらには、ひきこもりに!?日を失った世界は永久に夜の世界へ…。さぁ、神様たち、どうする??作家・泉美木蘭が描く「天の岩戸」物語は、どんな展開を見せるのか!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第33回「TPPとネトウヨとへタレ組織」
2. 茶魔ちゃま秘宝館・#004「エクスきゅうすミー 茶魔語湯呑み」
3. もくれんの「ザ・神様!」・第5回「神様失格――鬱の女神・アマテラスの岩屋隠れ、さあどうする!?」
4. よしりん漫画宝庫・第30回「『いなか王兆作』②のんびり、ほのぼのへの果敢な挑戦!!」
5. Q&Aコーナー
6. 今週のよしりん・第30回「『軽油を10リットル』の哀しみ」
7. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
8. 読者から寄せられた感想・ご要望など
9. 編集後記
第33回「TPPとネトウヨとへタレ組織」
完全に予想通りだったが、安倍晋三はTPP交渉参加を表明した。
ついに日本の伝統・文化の全てをグローバル競争の中に投下し、破壊しつくしてしまいかねない「地獄行き」のバスに乗ってしまったのだ。
自民党内には選挙の際に「TPP反対」を掲げ、農業団体の支持を受けて当選した議員も多くいたにもかかわらず、徹底的に反対を貫いた者は一人もいなかった。
安倍晋三がTPPで守ると言っている重要五品目は農産品だけで、これは21分野に亘る交渉のほんの1分野の、さらに1分野にすぎない。その農産品の関税とて死守できるはずがない。
国民皆保険は残ると安心させているが、それも騙しのテクニックで、盲点に触れていない。皆保険制度を残したままでも、TPPで医療に市場競争を導入され、混合診療の全面解禁に向かえば、新薬や診療は利益率の高い保険外枠に入れられていくので、国民の医療格差は拡大する。
現在の社会主義的な国民皆保険制度がいつまでもつか、そのうちアメリカの保険会社からISD条項で訴えられて、崩壊してしまうだろう。
公共事業も外資が受注できるようになり、外国人労働者に日本人の職が奪われることになろう。
非関税障壁の撤廃とは、日本独特の不文律・ルールの撤廃であり、世界柔道から礼の精神が失われたように、日本の「公」を大切にする国柄は失われていく。
基本は欧米人(狩猟民族)型の、市場原理主義、弱肉強食の強欲市場主義への大きな「前進」なのだから、行き付くところは楽天のように、公用語が英語になってしまうだけだろう。
TPPに遅れて交渉参加して、米議会の承認を取り付けて、日本が本格的に交渉に参加できるのは9月、もう諸外国の間で決定済みの条件は覆すことは出来ない。安倍晋三自身も「既に合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実だ」と明言している。
それなのに同じ声明で「いったん参加すれば、重要なプレイヤーとしてルール作りをリードできる」などとデタラメな矛盾を言っているのだから、呆れ果てる。
いずれ国民が参加条件を知って驚愕することになるだろう。そして再び激しい抵抗やデモが起きるかもしれない。
だがもう参加を断念して引き返すことは無理だ。世論調査によると国民の60%が交渉に不利とわかれば、参加断念できると考えているらしい。
これも安倍晋三の大嘘に騙され、マスコミもこのTPP交渉のリアルを伝えてないからである。マスコミが国民の為に真実を伝えるという役割を果たしてないのだ。
実際はもはや参加断念は無理とわかっている。アメリカが激怒することになり、日米同盟に決定的なヒビが入ると、マスコミも親米革新ホシュも安倍晋三を擁護し、粛々と環太平洋の経済戦争に突入、日本国内のルール・文化の解体に邁進していくことになる。
安倍が交渉参加を表明する前日、自民党内で反対派議員も参加して行われた会合は、当初「時間無制限」で行うと言っていたはずのものが、たった2時間足らずで拍手のうちに終了した。ただ地元に帰って「努力はつくした」と言い訳するためのパフォーマンスでしかなかったのである。
TPPが日本の国益を決定的に損ね、日本の文化・伝統を根こそぎ破壊しかねないものだとわかっていても、党を割ろうという動きもなければ、離党した議員もいなかった。せっかく政権与党に返り咲いたばかりで、野党暮らしには戻りたくないとしか考えていなかったのだ。
結局、彼らが守りたいのは日本の国益でも国柄でもなく、自分の権力だけだったのである。
政治家は野党になると本当にみじめなもので、誰もちやほやしてくれず、お金も入ってこなくなる。影響はありとあらゆるところにまで表れて、会議の時に出てくる弁当まで格段にランクが落ちるらしい。そんな思いに3年以上耐え、ようやく取り戻した権力だ。もう放してなるものか。権力さえ維持できるなら、日本なんか、いくらでも売っ払っちゃったってかまわない! というのが、国会議員というものなのだ。
もし安倍政権の支持率が低迷していれば、こうはいかなかっただろう。TPP参加を強行したら反発を招いて、次の選挙が危ういとなれば、反対派の議員もきちんと動いただろうし、参加も阻止できたかもしれない。しかし、支持率が70%近くにも上っていると、もう抵抗のしようがない。
第2次安倍政権の発足当初は、まだマスコミ内にも政権批判があったが、今ではそんなものは一向に見かけなくなっている。支持率も、発足直後の「ご祝儀相場」からは下降するのが普通なのに、逆に上昇するという異例の状態となっている。
大手マスコミはスポンサー・財界の意向に沿って全員一致でTPP賛成になっているわけだが、TPPの件に留まらず、以前なら集中砲火していたはずの「タカ派」批判や、健康不安についての懸念まですっかり消えてしまったのは異様な光景というしかない。そして、そんな状況を作り上げた一因に、ネトウヨの抗議行動が効果を上げたという事実にも、注目しておく必要がある。
その中でも大きな転機になったのは、フジテレビの朝のワイドショーで、たかが「お腹が痛くて辞めちゃった人」と言っただけのことに抗議が殺到し、司会者があっさり謝罪した件だったのではないだろうか。
そもそも何度も指摘しているように、難病患者が首相になってその重責に耐えられるのか、危機管理上問題ではないかと懸念を示すのは、難病患者に対する差別でも何でもない。重度のてんかん患者が自動車の運転をしてはいけないというのと同じことである。
ところが、これを「潰瘍性大腸炎患者全体への侮蔑」だと問題をすり替え、抗議行動を煽ったのは他ならぬ安倍晋三本人である。
安倍は自身のFacebookで「ちゃかしすぎた中傷は、私以外の同じ病で苦しんでいる人達を傷つけていることをワイドショーの人達には知って欲しいと思います」「意図的な中傷であると判断せざるを得ません。テレビに出てくる資格無しです」と発言し、謝罪を勝ち取った後には「多くの方が番組に抗議して頂いた結果でしょう。これは正にネットの勝利ですね」「私と共に戦って戴いた皆さんに感謝します」と、ベタボメの感謝まで表明したのだ。
こうしてネトウヨ連中は首相お墨付きの絶対正義を背負ったと図に乗ってしまい、もう「お腹が痛くて辞めちゃった人」程度のことも完全に禁句となってしまった。
そんな時に、うちの時浦がTwitterに「下痢ピー安倍に政権任せて、いざ有事の際にトイレに籠られたらどうなるんだよ」と書いたものだから、たちまち「炎上」が始まったのだった。
時浦の報告によれば、これに抗議してくるネトウヨは判で押したように「潰瘍性大腸炎患者への差別だ!」の一点張りで、何をどう説明しようが一切聞く耳を持たないらしい。
それにしても、普段在日コリアンへの差別意識をむき出しにして、聞くに堪えないヘイトスピーチをやっているような連中が、この件に関してだけは差別反対の「良識派」に豹変するのだから呆れ果てる。
Twitterの炎上は延々続き、時浦は「人生でこんなにたくさん『人間のクズ』呼ばわりされることがあるとは思わなかった」と笑っていたが、全く退かずにかえって「下痢ピー首相・安倍」を連呼した。そして先週号で書いたように、ネトウヨが「SAPIO」編集部に抗議電話をかけ、ついには時浦のTwitterに抗議する街宣デモを小学館本社ビル前で行うという、前代未聞の珍事が起きたのである。
それにしてもイイ歳して、本人に言っても聞かないから「先生に言いつけちゃる!」と職員室に駆け込む駄々っ子並みの行動を、しかも時浦のTwitterに何の責任も負っているわけがない小学館に対して行うという、異常なほどに知能が足りない人間が、この世にはいるのである。
そして、そんな人間を安倍晋三は賛美し、頼りにしているのである!!
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毎週の返信と質問への回答、ありがとうございます。
「ゴー宣」を読み、私の質問への回答を読み、岸端さんの返信を読み、他の読者の皆さんの質問とそれらへの回答、コメントを読み…、心が晴れたり曇ったり、それらを繰り返すほどの盛りだくさんの内容であります。
しかし今や「国難」の色が濃くなってきました。この「国難」という言葉で思い出すのは、「昭和天皇論」でも引用されていましたが、山田風太郎「戦中派不戦日記」です。昭和20年8月14日から16日にかけての章に注目です。そして山田氏の言葉で印象深いのは、作品のテーマにもなった「正義の政府はあり得るか」…。さほど状況が変わっていないようです。
少し湿っぽくなりましたが、質問は娯楽篇にしようと思っています。これからも期待しております。頑張ってください。
Vol.30の配信ありがとうございました。
木蘭先生の「ザ・神様!」のタイトル「鬱の女神・アマテラス」だけで噴いてしまいました。で、神々たちのコントな会話にも大爆笑でした。これからの展開も楽しみにしています。
また、大東亜論のチラ見せ、ありがとうございました。絵の迫力があって、大いに楽しみです。
ようやく春が訪れ、新たな芽の息吹が聞こえるようになりました。それに反した暗澹たる社会情勢ですが、ライジング,ゴー宣と共に、私も春芽の如く、日出づるライジングを目指して行きたいと感じています。
遅れてしまいましたが、vol.30配信ありがとうございます。
安倍売国総理のTPP交渉参加については、怒りとか悲しみとかそんなの通り越してあきれてしまいました。また、自民党の議員の大半がTPP反対を公約に選挙で勝ったのに、バカ総理の参加表明については何もしない。もはや自分の中で政治家というものが一切信用できなくなりました、彼らは「日本を取り戻す」とか言っておきながら、その実、「日本を売り渡す」でしたから(わかってたけど・・・)。それでもボンクラで三流大学の哲学科在籍の自分も出来ることを精一杯やるしかありません。いくら底辺に落ちてもネトウヨのようになりたくありませんから。
TPPが決まっても、厳しい世の中になっても
身体と周りを大事にしながら生きていこう
ゴー宣ライジング30号おめでとうございます。
今週の『ゴー宣』を読んで、反TPPで当選した自民党政治家に
ネトウヨに抗議された企業が反対も反論もしないのは
目先の利益、にしか見ておらず、公のこと、将来のことは
毛ほども考えていないことをを感じました。
安倍晋三やネトウヨが増長したのは、身近に叱る人がいないのが
原因ではないでしょうか。これは4月開催のゴー宣道場の
テーマにも絡んでくるような気がします。
岸端女史、今回もゴー宣ライジング配信、ありがとうございます。
安倍氏が常備薬として用いているアサコールは自分の周囲では「ぴー、ぴー」と呼ぶと下痢になってしまう「安倍のピーピーキャンディ」と呼ばれています(ピーピーキャンディは鳥山明原作のドラゴンボールに出てくる下剤飴で効果は同じ)。なんでも、オバマや米政府に「TPP(ティーぴー、ぴー)」と連打されてしまうことを恐れて反対できなかったか、実際に連打されてしまって我慢しきれず、早々と参加表明を約束してしまったのだというのです。
それと、自分が以前に勤めていた某大企業は暗黙のスローガンとして掲げていたのが「人命は地球より重い、しかし、一銭の黒字(数字上)は人命よりも重い」でした。その大企業は国内の工業と人員(大半は派遣)を縮小する一方で海外に工業と人員を求めては製品を輸出に回すという典型的なグローバル大企業でした。「人命は地球より重い、しかし、一銭の黒字(数字上)は人命よりも重い」のならば、國内がどうなろうと、企業の人員がどうなろうと、企業がどんな理不尽な言いがかりをされようとも、数字上の結果さえ出していれば良いということであるのでそんな企業に名誉の概念などあるはずもなく、また、そんな団体に支援されている政治家が國や臣民を守ろうとするはずがありません。
また、70%の支持率という前代未聞の高支持率の裏にはスパイが凄んでいるという危機意識がないのにもあまりにも恐ろしく感じます。小林よしのりライジングvol.12で小林師範が近衛文麿と安倍晋三が類似していると指摘していましたが、近衛文麿の側近にスパイである尾崎秀美が暗躍していたように、安倍政権にもスパイが暗躍しているという警戒心を強めるべきだと思うのですが考えすぎでしょうが?ネトウヨが支持する女性宮家反対派にも共産党支持者がいたわけですから、今回のTPP参加にもスパイが暗躍していると見たほうがいいと思うのですがいかがでしょうか?
泉女史の「ザ・神様」は今回も傑作の一言です。現在、社会問題となっている鬱病、引きこもり、堕胎、家庭崩壊、そして重犯罪である婦女暴行は太古の昔どころか神話の昔から、神々の間でも行われ、いまでも人々が引き継いでは問題が解消しきれていないのだと思いました。神々自らが人類の社会問題を実践してしまうとはさすがは古事記。そして、その古事記を見事な文章力で表現する泉女史の実力に今後も期待しています。
今週のライジングは、木蘭師範の『ザ・神様!』が面白かったです!
「天の岩戸」のお話は、世界は暗黒に包まれてしまった…と言った超深刻なイメージがあったんですが、神様達の停電時の様なドタバタぶりや、まさかの鬱病患者の処置方法など、古代の神々が現代人に見えてきて、改めて「古事記」の普遍性を感じる事ができました(^ ^)
木蘭師範が、どうやってアマテラスを岩屋から出すのか?とても楽しみです!
話は変わって、『ザ・神様!』を称賛しておいた後で気が引けるんですが(汗)、20日に待望のHKT48のデビューシングル「スキ!スキ!スキップ」が発売され、よしりん先生が次回の『今週のAKB』でHKT48をどのように分析するのか!?これも今からとても楽しみでしょうがないです(^^;;
将来TPPの実害があらわれてきても、新刊本が買える身分を維持しようと腹の底から思っています。その身分を保つことができれば人を助ける力だって残っているかもしれないと、個人的にそう思っています。
記念すべきVol.30、おめでとうございます! あ、先週のバカコメすいませんでしたorz
あっという間に月曜日、もう明日はライジングの発行日ですね!
遅ればせながら、30号突破、おめでとうございます!
代車の話で、運転されてみてガソリン車とディーゼル車、
何か違いとか感じられましたか?
今週のよしりんに爆笑しました。軽油10リットルの哀しみっていうタイトルがまず笑わせるし、読んでみたらみなぼんのツッコミがおもしろすぎるし、先生の慌てぶりも面白い(笑)セルフスタンドだったらストレスフリーでいれられたのかな?私は免許とったのが六年前なんですが、有人スタンドでは数えるほどしか入れたことがありません。近所に存在しないんです。あと、私の軽自動車は満タンいれても約30リットルだから、10リットルって決して少なくないですけどね…そんな、恥ずかしがるような数字じゃないし、スタンドの人もわざわざ少数入れる人は代車…ってわかってるかも。いろんなお客さんいるはずですから、なんとも思ってないですよ。変なイチャモンつけるクレーマーのほうがよほど噂されて恥ずかしいですよ。
軽油は貧乏人が入れるもの…あぁ、その失言、ありそう(笑)みなぼん、心中お察し申し上げます(--;)チーン でもわらっちゃう(笑)