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その悪癖、もしかしたら自然に治るかもよ?」の続きです!(#1,#2,#3,#4,#5)

 

このシリーズでは、依存症の世界でよく見かける「自然回復」って現象をもとに、「悪癖が自然に改善しちゃう人は何が違うのか?」ってのを深掘りしております。「なんとなく酒がやめられたなー」とか「気づいたらタバコを吸う量が減ったなー」みたいな体験をした人たちのデータを参考にしながら、私たちの悪癖を改善するヒントを得ようってことですな。

 

前回は、「自然回復」を起こすための手法として「役割が変わる」ってのをお伝えしましたんで、今回はその続きで「アイデンティティが変わる」のパターンを見てみましょう。

 

 

 

アイデンティティを変えるのが有効な理由

悪癖を改善しようとすると、多くの人は「どうやって我慢するか?」を考えるわけですが、実際に心理学や習慣の研究を眺めていると、この発想がうまくいくことはあんまなかったりします。というのも、人間の行動ってのは基本的に「理由がある限り続く」ものでして、たとえば「夜中にスマホを触ってしまう!」って悪癖に悩んでる人ってのは、

 

  • 退屈を埋めてくれる
  • 不安を紛らわせてくれる
  • ちょっとした刺激がもらえる

 

みたいな理由でスマホに触れているわけじゃないですか。つまり、この悪癖は、当人にとってはちゃんと「意味のある行動」になっているわけですよ。だから、いくら「やめよう」と決意しても、行動の理由そのものが残っている限り、なかなか消えてくれないんですね。

 

で、ここで重要になってくるのがアイデンティティであります。心理学の研究によると、私たちは無意識のうちに「自分らしい行動」を選ぶ傾向があると言われており、これは「自己一致」と呼ばれる現象でして、人間ってのは、

 

  • 自分の価値観
  • 自分のイメージ
  • 自分の物語

 

と一致する行動を取ると、強い納得感を覚えるんですね。そのため、逆に言うとその行動が「自分らしくない」と感じ始めると、途端に魅力が落ちてしまうんですな。たとえば、

 

  • 「健康を大事にする人」というセルフイメージが強くなると、暴飲暴食がなんとなくしっくりこなくなる

  • 「落ち着いた生活を好む人」という意識が芽生えると、深夜のSNSスクロールが妙に疲れる

  • 「自分の時間を大切にする人」という感覚が育つと、無意味なネットサーフィンが空しくなる

 

みたいな変化が起きるわけです。この状態になると、それまで悪癖を根っこで支えていた「やる理由」が、自然と消えていくんですね。つまり、「我慢してやめる!」という状態ではなく、「なんかもうやる意味がないなー」って感覚に変わるわけです。

 

この変化が起きると、悪癖は驚くほど弱くなります。なにしろ、脳の中で「やる理由」そのものが消えちゃうんだから、当然ですよね。実際、過去に行われた依存や習慣の研究(R)を見ても、長期的に行動を変えられた人たちは、単に「強い意志を持っていた」わけじゃないですからね。多くの場合は、

 

  • 環境が変わり
  • 役割が変わり
  • その結果として、自己イメージが変わる

 

というプロセスをたどってまして、最後には「これはもう自分の行動じゃないな」という感覚に落ち着いているんですよ。で、いったんこの状態になってしまえば、悪癖はほとんど自然消滅するはず。つまり、悪癖を改善するうえで大事なのは、「どうやってやめるか?」ではなく、「いかにその行動が自分らしくなくなる状況を作るか?」なのだと申せましょう。

 

では、いかにすれば「アイデンティティを変える」ことができるのか? 実践的なアイデアをいくつか紹介しましょう。