
最新の目標達成テク「DPM」ってなんだろう?
わたくし、拙著「最高の体調」にこんなことを書いております。
狩猟採集民の「価値観」について考えてみましょう。
人類学のデータによれば、彼らが生涯にわたって持つ人生の目的はシンプルで、ひとことで言えば「生きる産む育てる」の3つだけです。狩りをしながら日々の糧を稼ぎ、部族内のパートナーと子を産み、愛する我が子の成長を死ぬまで見守れば、人生の目的は達成されてしまいます。
すべての生物は遺伝子による「産めよ増やせよ地に満ちよ」という命令に従って行動します。その点ではヒトも例外ではなく、あなたの喜びも悲しみも生きがいも、すべては種の保存のために備わった機能のひとつに過ぎません。人生に哲学的な目的などあろうはずがなく、それゆえに原始人にとって人生の意味はいまよりも単純でした。
ところが、ライフサイクルが複雑化した現代では、「生きる産む育てる」の他にも、私たちは様々な行為に価値を見出すようになりました。
「有名になる」「金持ちになる」「良い会社に入る」「好きなことをして生きる」……。
価値観の多様化といえば聞こえはいいですが、定期的に新しいライフスタイルや人生の意味が提示され続ければ、どうしても迷いや不安が生まれてきます。新しい商品が出て楽しい気分になったものの、そのせいでどれも選べなくなり、逆にストレスを抱えたようなものです。
価値観の多様化が問題なのは、私たちの未来像を、ぼんやりとしたものに変えてしまうからです。
狩猟採集民のように「生きる産む育てる」だけを目的にすれば、その時点で未来の姿は100%確定し、もはや次の行動に思い悩む必要はなくなります。いっぽうで現代のように選択肢が豊富な社会では、未来の姿はいくつにも分岐をくり返し、決してひとつに定まることがありません。
あいまいな将来は私たちのなかで明確な像を結ばなくなり、結果として未来との心理的距離は遠くなっていきます。これが、価値観のブレによって不安が起こる理由です。
この問題を解決するには、いったん分岐した未来をまとめるしかありません。
ということで、「最高の体調」では、「不安を解消するには未来との心理的距離が大事だよー」「未来の自分をどれだけリアルに感じられるかが重要だよー」ってポイントを強調してるわけですね。
そのため、この本の中では「価値観を生み出すワーク」を紹介していて、パレオチャンネルでも大量の類似ワークを見てきたわけです。ただ、上記の「未来との心理的距離」をまとめる方法はほかにもありまして、新しい研究(R)では、「1日事前構成法(Day Preconstruction Method)」というテクニックの効果が検証されてまして、これがメンタル強化にめっちゃ使えるものだったので内容をチェックしておきましょう。
これはスウェーデンのカールスタード大学などによる研究で、まず研究チームは、こんな指摘をしておられます。
- 「未来の自分をどれだけリアルに想像できるか」で、今の行動や価値観が変わる!
これがどういうことかと言いますと、だいたい以下のようなことです。
- 未来の自分が遠く感じるほど→ 長期的な目標がどうでもよくなる
- 未来の自分がリアルに感じられるほど→ 今の行動が価値に沿いやすくなる
これは、パレオな男でもおなじみの視点で、たとえば「20年後の自分を想像してみて!」って言われても、正直かなりぼんやりしていて実感がわかないものじゃないですか。このように未来の自分がぼんやりしていると、「まあ未来は未来だから、今はラクすればいいか…」みたいな意思決定になりがちなんですよ。逆に、未来の自分がリアルにイメージできる状態だと、いまの行動が自然と未来に沿ったものになるわけです。
実際のところ、自分の未来像が大事なことはいくつかの研究で確かめられていて、
- 自分の顔を老化させた未来の写真を見ると、貯金の額が増える(R)。
- 未来の自分に手紙を書くワークを行ったグループは、衝動的な選択(すぐの報酬)よりも長期的な利益を選びやすくなった(R)。
- ダイエットの実験では「理想の体型で生活している自分」を具体的にイメージしたグループのほうが、食事制限や運動の継続率が高かった(R)。
といった報告が出ております。これらのことから、「いかに未来の自分をクリアに思い描けるか?」は、長い目標を達成するために、めっちゃ大事なことだと考えられるんですよ。私も未来志向が苦手な人間なので、このポイントについてはいつも困っております。
で、そこで未来をリアルにするためのテクニックとして研究チームが推奨するのが「1日事前構成法(DPM:Day Preconstruction Method)」というテクニックであります。名前はややこしいですが、やることはめっちゃ簡単で、以下のような問いに答えて、未来の1日をできるだけ具体的に描くだけです。
- 20年後のある朝、どこで目覚める?
- 誰といる?
- どんな場所?
- どんな気持ち?
- なぜそう感じている?
たとえば、
20年後の朝、私は静かな郊外の家で目を覚ます。カーテンの隙間から柔らかい光が差し込んでいて、部屋の空気はひんやりして気持ちいい。隣ではパートナーがまだ眠っていて、キッチンからはコーヒーの香りが漂ってくる。私は軽くストレッチをしてからデスクに向かい、いつものように文章を書き始める。仕事のペースは落ち着いていて、焦りはまったくない。むしろ「今日もやるべきことがはっきりしている」という安心感がある。昔のような無駄な不安はほとんどなく、自分の選んだ生活に納得しながら、一日を静かに始めている。
みたいな感じっすね。めっちゃ簡単でいいですな。
でもって、このテクニックの効果を確かめるべく、研究チームはオンラインで参加者を集め、全体を2つの条件にランダムに割り振っております。具体的には、
- 短期条件:3ヶ月後の未来を想像させる
- 長期条件:20年後の未来を想像させる
って感じでして、この2つを比べることで「未来の距離」が心理に与える影響を見たんですな。その上で、みんなにDPMをやってもらってまして、
「指定された未来のある朝に目覚めた1日を、できるだけリアルに描写してください」
って感じで指示したらしい。なかなかちゃんとした研究でよろしいですなぁ。
でもって、そのあとで、いくつかの心理指標を測定し、さらにその1週間後に再度アンケートを取って「DPMのせいで実際の行動が変わったか?」までチェックしたんだそうな。
すると、結果には明確な違いが出まして、ポジティブな未来をイメージした人ほど、
- 1週間後も、自分の価値観に沿った生活を送る傾向が強かった
って結果だったんだそうな。つまり、「家族を大切にする」って価値観を持っている人は家族との時間が増え、「成長を重視する」人は学習や仕事に時間を使うようになりまして、いまの自分の行動が良い方向に変わったわけです。未来を思い描くだけで日々の行動の質や一貫性が手に入るなら、めっちゃ手軽でいいですなぁ。
DPMを使ってみよう!
DPMの威力がわかったところで、実生活でこいつをどう使う?かってことで、この研究を踏まえると、実践としては以下のように行うのがいいんじゃないでしょうか。
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