僕が愛用しているスタジオNOAHというグループの中に「ピアノNOAH」と言って田園調布の東横線沿線にあるので、要するに今まで電車の中から何回も見て来た。その度に「天国と地獄」の誘拐犯の気分にさせてくれる。

 

 格差だのリア充だのワープアだの色々な言葉でパスされてきた貧困と富裕の問題だが、まあ少なくとも、東京都内に於いては、とするが、田園調布に来て、駅周辺を歩き、自分がどんな気分になるか、自分とちゃんと向き合えば、自分の精神的なポジションがわかる。

 

 新東宝~東宝の第二昭和初期作品を見ると、エグゼクティヴの邸宅として、同じ屋敷が出てくるので、作品内でもすぐ分かるし、現在に至っても、駅舎以外、実は景観はほとんど変わっていない。栄枯盛衰の歴史を踏んでいないのだ。田園調布は。

 

 「ピアノNOAH 田園調布店」はもう、他の店舗とは全然違う。まあまあ一言、シャトーだ。何せここは、アップライトからフルコンまで、アコースティックピアノだけに特化されたスタジオで、エントランスはエステサロンのようだ。

 

 展示用のブリュートナーのアップライトが、入り口付近にさっと置いてあり、エレベーターの地下一階を示すボタンには「B1 SALON」とあるので、オオオオオと思い、こっそり寄って見たら、簡単な室内楽のライブぐらいできる、洒落たスペース。みたいなのがあって、特に性的な欲求不満者でもない僕でも、「犯してやる」という衝動が笑、立ち上がるほどの育ちの良さである。