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幾夜大黒堂『境界のないセカイ』を読みました。
聞き覚えのあるタイトルだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。この漫画、一度連載打ち切り騒動で話題になっているのです。
ウィキペディアから引用すると、こんな経緯。
2014年中に講談社からの単行本化が決定、その作業も完了していたが、2015年3月に講談社が「表現上の問題」から単行本の発売中止を決定した。これによりマンガボックス側の収益見込みが立たなくなり、連載の打ち切りが決定した。幾夜は講談社のこの決定について、引いて見た立場からは理解できるとしつつも、同時に弱腰であるともして批判している。また当初、作中第5話で登場する「女性なら男性と恋するのが普通でしょう?」という台詞がLGBT団体から問題視されるのを恐れたのではないかという見方もあったが、LGBT人権団体のひとつ「レインボー・アクション」は同月、この作品の内容は差別表現にあたらない事を確認する旨および連載打ち切りの事態に抗議する旨の声明を出した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/境界のないセカイ
ようするに出版社側が作品内容が問題視されることを過剰に気にして打ち切りにしてしまったということらしい。
あきらかに出版社側に問題があるわけですが、この記事ではそこを掘り下げることが目的ではないので深く考察したりはしません。作品の話に入りましょう。
この漫画の背景となっているのは「性選択制度」が普及し、18歳以上の国民が自分の意思で性別を選択できる社会です。
初めは一風変わったラブコメとして始まるのですが、意外にもしだいに性を巡るシリアスな話に移っていきます。
結論から書くと、予想以上に面白かった。あくまで男性、女性という二元論的な性差にのっとっているところは限界がある気もするけれど、男性向け漫画としては革新的といってもいいテーマでしょう。
最終回とか、なかなかすごい。いったんの打ち切りを乗り越えて作品を完結させた作者の志を感じますね。
ちなみに性の自由選択というアイディアはSF小説ではわりと一般的なテーマで、ハインラインの影響を受けたジョン・ヴァーリィの『八世界シリーズ』は性別が簡単に変更可能な未来社会を描いています。
もし簡単に異性になることができたら?というのは、だれでも考えるところなのでしょうね。
また、リアルに「性適合手術」を受けた著者の体験を描いたノンフィクション漫画に『生まれる性別まちがえた!』があります。
ネットで無料で読めるのでちょっと読んでみるといいかも。
どこまでも明るくポジティヴに描かれているけれど、大変なことなのだろうな、ということは想像がつく。
まあ、『境界のないセカイ』の場合は現実より容易に性別を選択できる時代を描いているわけですけれど、じっさい、そういうふうにできたら救われる人は大勢いるでしょうね。
もしもヴァーリィの小説のように簡単に性別をチェンジできる時代が来たら性差別も意味がなくなるかもしれません。
もちろん、仮にそういうことになったとしても大半の人は生まれたときの性別で生きていくことを選ぶはずですが、簡単に異性を「体験」できるとなれば、異性が普段どんな気持ちで生きているのか? より共感しやすくなるのではないでしょうか。
そういう「境界のない世界」にもそれはそれで新しい問題が生まれてくるでしょうが、そうなったら色々なことがうまくいく気がする。
そもそも男性は男性として生まれ、女性は女性として生まれ、そのままに生きていくしかないという現実は不自由なものです。
それがあたりまえであるからこそ、ぼくたちはそういうものだと思って生活しているけれど、性を選択できるとなったら、一度は異性になってみたいと思う人もたくさんいるのでは?
あるいは
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