何年か前にぼくは家にある本をすべて処分したのですが、そのとき残した小説本が三冊だけあって、そのなかの一冊が栗本薫の『トワイライト・サーガ(1) カローンの蜘蛛』でした。

 これは、『グイン・サーガ』と同じ世界の、幾百年後、幾千年後とも知れない未来を描いたシリーズで、すでに惑星は頽廃の季(とき)を迎え、かつて封じられた妖しい魔物たちや古い神々たちがよみがえろうとしています。

 そのたそがれの世界を旅するのが闇王朝パロの美貌の王子ゼフィールと、自らかれの旅の供となることを申し出た傭兵ヴァン・カルス。ふたりはその魔術と剣でもって、行く手に待ち受けるひそやかな悪魔的な秘密やさまざまな闇黒の領域を切り開いていきます。しかし、やがてふたりを待つのは避けられない別れの時なのです。

 この『トワイライト・サーガ』、栗本薫がデビュー前、二十代前半の頃に書いていた物語ですが、すでに完成度は異常に高く、美