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「キックぼんやり層」にもそのヤバさが伝わってきた那須川天心vsロッタン!! 現役時代は「ムエタイキラー」として名を馳せた鈴木秀明氏が、「神童」を封じ込めたロッタンの戦略や強さ、そして瀬戸際で見せた天心の底力を語ります。必読です!
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――6月17日に行なわれた那須川天心vsロッタン・ジットムアンノンの一戦ですが、鈴木さんはどういう予想をされていたんですか?
鈴木 ボクは7:3で那須川選手が勝つと思っていました。
――おお~、那須川選手の優勢予想。
鈴木 はい。那須川選手のスピードというのは、本当にビックリするぐらいの速さなので。それにフェイントの技術も凄い。さらにムエタイでは基本的にやらない三日月蹴りだったり、顔への前蹴り、バックブロー、バックキック……そういう多彩な技を繰り出せるので、ロッタン選手はやりづらいかなあと思っていました。ロッタン選手のミットを見ても、ガードが凄く高いというわけじゃないのでパンチは当たるんじゃないかなと。ただ、結果的にそういう試合にはならなかったですねえ。
――那須川選手にとっては本当に苦しい試合だったというか。
鈴木 じつはボク、この試合の直前にタイでロッタン選手の練習を見てきたんですよ。ロッタン選手が所属するジットムアンノンジムは、ムエタイで3年連続MVPを獲ったパンパヤック選手をはじめ、凄い選手が何人も所属しているので、一度見に行きたくて。そのときにロッタン選手のミット打ちの練習も見てきたんですけど、感覚が面白い選手だなって。
――面白いといいますと?
鈴木 基本的に、ミット打ちってパターンが3つあるんですよ。コンビネーションを決めて打つミット打ちが一つ、トレーナーが指示をしながらそこに打ち込むミット打ちが一つ、そして最後の一つが、選手の攻撃に合わせてトレーナーが受けるミット打ちなんですけど。ロッタン選手がやっていたのは、3つ目のタイプのミット打ちだったんですね。凄く独創性があるというか。近距離での打ち合いも凄く上手で、普通に打っている中に所々フェイント入れたりとか、ちょっとズラして打ったりとか。そうした近距離での戦いが、今回の試合でも効果的に出ていたなって。
――それが那須川選手の戦いづらさにつながったということですか?
鈴木 そうです。そもそも那須川選手は距離を取って戦うタイプなんですよ。那須川選手の何が凄いって、フェイントを混ぜておいて相手が詰めようとしたすれ違いさまに「切る!」 みたいな。そういう攻撃が得意な選手だから、本来ならある程度は距離が必要なんですよね。だけど、今回はロッタン選手の戦略にハマって、近い距離で戦ってしまった。試合前にロッタン選手は那須川選手のことを凄く煽ってましたよね?
――那須川選手に「逃げるな」と挑発してましたね。
鈴木 那須川選手はプロ意識の高い選手なので「じゃあ、やってやるよ!」と思ったかもしれない。それがあの距離の近さに影響してしまったのかなって。
――見事にロッタン選手の戦略にハマってしまっていたということですか。
鈴木 だからボクは序盤の戦いを見て、もしこの距離ずっと続いたら、ロッタン選手が有利だろうなと思いました。スタートで最初の一歩目を引き寄せちゃうと、ロッタン選手はやりやすいんですよ。ただ、那須川選手は煽られてあの距離になったものの、意外とパンチも当てやすかったというのもあって、1、2ラウンド目をロッタン選手の距離で過ごしてしまったんでしょうね。
――打撃が当たっていたがゆえに、相手の距離を許してしまった。面白いですねぇ。
鈴木 それが那須川選手の最大のミスだったと思います。「この距離でも戦える」と思ったんでしょうし、実際に2ラウンドはパンチをけっこう当てていましたし。
――でも、そこで那須川選手はもう一度自分の距離に戻すことはできないんですか?
鈴木 いや、一回この距離をやっちゃうと、ロッタン選手は自然にこの距離に入りやすいんですよ。これ、ムエタイの首相撲とかもそうなんですけど、一回組まないと、なかなかそのあとも組みづらいんですけど、一回組んじゃうと今度はどんどん組みやすくなるという。
――距離感を掴みやすくなる。
鈴木 総合の選手もいきなりタックルに入るんじゃなくて、わざと胸元とかにパンチとかして距離を掴むとか言いますよね? 「この距離だ」と把握するために。だからパンチを出して「これが触れるタイミングだな」とわかったら、それでタックルを決めにいくみたいな。
――身体が自然とその距離を決めてしまうということですか。
鈴木 さすがに那須川選手も距離を置こうとはしているんですよ。ただ、ロッタン選手は構えを右と左でパッパッと変えるタイプで、そうなると那須川選手は的が絞りづらい。それに加えて、ロッタン選手はちょこちょこちょこと前に出て距離を詰めてくるんですよね。普通、右vs左というのは、右利きの選手は左を取りたがるんですよ。そうすると距離が取れるから。でも、ロッタン選手は右と左で構えを変えるし、さらに“ちょこちょこ歩き”をしてインサイドに入ってくるから、すぐに距離が詰まっちゃうんですよね。この“ちょこちょこ歩き”って、普通はあんまりやらないんですけどね。
――けっこう珍しいんですね。
鈴木 珍しいですね。こういう詰め方はしないです。こうなると那須川選手の得意な攻撃を出しづらくなるんです。那須川選手はカウンターもそうですが、ヒジから先の変化が凄いんですよ。パンチって、そのまま「ドンッ」と打つのと、ヒジから先をストンと変化させる打ち方があるんですけど、那須川選手はそこで肩をフッて外すような感じなんですよね。だから普通の人よりパンチが伸びるんです。それに加えて、手首の角度を変えるというか。
――つまり、パンチが伸びてくるし、途中で軌道も変わるんですね。
鈴木 しかもそれをカウンターでできるから相手が倒れるんですけど、このロッタン戦の近距離になっちゃうと、肩をグンとはずして伸ばすのも、手首を変化させるのもなかなかできないんですよ。だからいつもより那須川選手のパンチが当てづらくなるんですよね。
――距離が詰まると那須川選手はかなり戦いづらくなってしまったと。
鈴木 一番効く攻撃が何かというと、やっぱり“見えない攻撃”なんですよ。つまりカウンター。前田日明さんが安生洋二さんに後ろから殴られたときに、あれは“見えない”から倒れるんですよ。
――よく大沢ケンジさんも「パンチって、もらおうと思ったら効かない」と言ってますね。
鈴木 ただですね、恐ろしいのは、ロッタン選手にはその“見えない攻撃”が効かないんですね。
――どういうことですか?
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