現役時代は「ムエタイキラー」として名を馳せ、「キックぼんやり層」にその面白さを解説してくる鈴木秀明氏。今回のテーマはスアキムをムエタイ引退に追い込んだギャンブラーを解説します!
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――那須川天心選手と激闘を繰り広げたスアキム選手が突然、引退を宣言しました(その10日後の4月20日にRISE参戦を発表)。理由はムエタイのギャンブラーやファンの存在がイヤになったということですが……。
――それは凄い話ですね……。
鈴木 ギャンブルというと、普通は胴元がいますよね。ムエタイの場合はスタジアム内に胴元的立場のギャンブラーたちがたくさんいるんです。関係性でいえばスタジアム内の客同士が賭けていると言えますね。たとえばギャンブラーのA さんが1対2のオッズを出したとする。Bさんは逆に3対1のオッズを出す場合もあるんですよね。
―― ギャンブラーたちがそれぞれ独自オッズに出して、お客さんが賭けに興じるんですね。
鈴木 ラウンドごとにオッズも変わっていくんですよ。選手Aの2 対1に賭けてるけど、3ラウンドまでの内容で選手Bが勝ちそうとなったらB有利のオッズを探すんです。もしBの3対1のオッズがあればプラス1になる。
―― ムエタイがギャンブルの対象になっていることは法的にはどうなんですか?
鈴木 基本的にスタジアム内はオッケーです。ただ、テレビマッチなんかを見ながら賭けている人はいると思います。
――ギャンブラーの資格はあるんですか?
鈴木 いや、誰でもなりますよ。出したオッズに誰かが乗ればそれで賭けは成立します。でも、よくやり方がわかってない外国人とか、お金を払わないで逃げるかもしれない人間は難しいと思いますね。だからスタジアムでギャンブルをやっているのは顔見知りが多いんです。
鈴木 懐に見合わないギャンブルをして、お金を払えなくなっちゃう人もいます。昔はスタジアムの入り口に、自分の名前と、いくら踏み倒しました的なことが書いてある紙を持った人間の写真が貼ってありましたね。お金を払わずに逃げて制裁されて顔はボコボコなんですけど(笑)。
――ハハハハハハハ! 指名手配犯みたいなもんですね。
鈴木 その人たちはスタジアム出禁らしいです。みんな殴られて顔が腫れてるからインパクトはありましたねぇ。もうひとつある賭けは「ドゥンパン」といって、対戦する選手の陣営同士がお金を持ちよって、買ったほうがお金を総取りするシステムなんです。そのお金は選手、ジムのオーナー、 ギャンブラー、ジムの近所のおばちゃんからも。
――責任重大だ(笑)。
鈴木 たとえばこの「ドゥンパン」もいろいろな駆け引きがあったりして、4万バーツをお互いに出して取り合ったとする。負けた側が「今度は倍でやろう」と持ちかけるんです。勝ったほうは「また勝てる」と再戦を受けたら、じつは負けた側は再戦で勝つために最初の試合はそこまで本気でやってなかった。そういった駆け引きもあったりもするんですよ。
――倍プッシュを引き出すための常套手段(笑)。しかし、どうしてギャンブラーが勝敗に影響力を持つようになったんですか?
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