
9月15日DEEPで関鉄矢戦に臨む五明宏人インタビューです(聞き手/ジャン斉藤)
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――五明選手は伝統派空手出身ですけど、伝統派空手もルールがいろいろあったりするんですよね。
――大まかにどういう流派に分かれるんですか?
五明 四大流派ってあるんですよ。松濤館、剛柔流糸東流、和道流。さらに沖縄空手とか、流派が枝分かれしたり。
――その流派によってルールが微妙に違ってくるわけですね。
五明 はい。四大流派もかなり違いますし、大会も別々でやってます。合わせてやるのは全空連主催の天皇杯や国体ですね。あとは小学生、中学生の全国大会、インターハイとか。
――五明選手はどの流派なんですか?
五明 ボクはもともとは松濤館です。
――松濤館のルールはどういうものなんですか?
五明 全空連は寸止めで、当てたら反則なんですけど、松濤館は多少当ててもOKです。
――その「多少」はどこまで許されるんですか?
五明 相手がケガしなければ……血が出たりしなければ、しっかり当てても大丈夫です。
――へえー。血が出ていたら「これは反則だ」と。
五明 「やめ」がかかって状態をチェックして、血が出てたら反則になったり、血が出てなかったら有効打で。松濤館館の試合はけっこう当てるので面白いですね。
――当てるけどもそこまで振り切らないってことですか?
五明 コントロールさえしっかりできれば。しっかり当てたあとに引く残心が大事ですね。
――いままで当てて反則になったことってあるんですか?
五明 もちろんあります。相手が気を失ったりすることもありますし……。
――うわー!ルールによって伝統派空手もスポーツの要素が強かったり、もしくは武道寄りになったりするわけですね。
五明 松濤館は武道寄りですね。ただ、オリンピック種目を目指すにあたっては当てたら反則。それはスポーツ化するためにはそうしたんだろうなって感じです。
五明 そうです。ボクは小学1年生から26歳までやってたので、かなり長かったですねぇ。
――大学卒業をしたら将来はどう考えていたんですか?
五明 空手にはプロがなくて、やるんだったら実業団なんですけど、空手を応援してくれる企業は少なかったんですよね。でも、ボクがちょうど大学を卒業する際に東京オリンピックで空手が種目になったんです。そこでアルソックが空手を応援してくれることになって、就職させてもらいました。それで卒業後も空手を続けられることになりましたね。
――アルソックは柔道やレスリングの選手たちもサポートしてますね。
五明 ボクがアルソックにいた頃、レスリングの太田忍選手もいましたね。直接絡んだことはないですけど。
――もしアルソックがなかったら……。
五明 どこかに就職して働きながら空いた時間に練習をするみたいな感じですね。そこはサラリーマンの格闘家と似ています。
――それってアルソックのほうから五明選手に声がかかったんですか?
五明 一番大きいのはオリンピック種目になったことなんですけど。ボクの先輩がアルソックで働いてて、一応空手部自体はあったんですよ。ただ、柔道やレスリングのようにアスリート支援はしてなくて、アルソックで働いている人たちの空手部。その先輩がボクに声をかけてくれました。
五明 いや、ボクの場合は練習が仕事です。だから、めちゃめちゃいい環境でやらせてもらいましたね。
――アルソックの空手部はアルソックの社内に練習場があるのか、それともどこか道場を借りてたんですか?
五明 支社によっては警備するにあたって実技指導するホールがあるので、そこで練習してましたね。
――五明選手以外にアスリート支援を受けた空手家はいらっしゃったんですか?
――じゃあ五明選手の代限りってことだったんですね。
五明 やっぱり企業としてはオリンピックの種目だからってことが大きいですね。
――アルソックの採用がなかったら、大学卒業後はどうなっていたんですかね?
五明 ボクとしては「格闘技をやっていた」と言いたいですね(笑)。
――アルソックの頃はプロ格闘家に興味はあったんですか?
五明 その頃はオリンピックで金メダルを穫ることだけに集中してたので、東京オリンピックが終わるまでは空手で頑張ろうと思ってました。
――アルソックからサポートされるということは、空手の実績があったってことですよね?
五明 やっぱり世界大会にも出場してたし、天皇杯や全日本手権大会で優勝していたので。オリンピックも最終選考まで残ってたんですけど……東京オリンピックは2年前から各大会のポイントで出場枠を争っていくんですけど。ボクは前半のほうは全然、力が出せなくて後半のほうで優勝して追い上げたんですけど、結局届かずで。
――競技によって選考方式は違いますよね。昔は一発勝負が多かったですけど、最近は不公平感をなくすためにポイント制が主流ですね。
五明 空手はオリンピック初ってことで、柔道のオリンピック採用基準を参考にしたらしくて。
――最初の話では五明選手の流派は当ててもOKですけど、オリンピックルールの戸惑いはなかったんですか?
五明 ボクは早く順応できたほうかなって。逆に野村(駿太)なんかは当てちゃうんですね。当てちゃダメなルールでも当てちゃう(笑)。
――なかなか修正しきれない。
五明 向いてない人は向いてないのかなと思いますね。野村はRIZINの試合を見てもMMAにすごく向いてますよね。
――五明選手はいつ頃からMMAに興味を持ち始めたんですか?
五明 2020年の大晦日ですかね。テレビでやってたら見るぐらいで、直接会場までは行ったことなかったですけど、これは面白いなと。
――空手は立ち技じゃないですか。キック転向は考えなかったんですか?
五明 転向するときに師匠や周りのみんなから、すっごい言われたんですよ。でも、MMAのほうがかっこよかったです(笑)。
――適正とかじゃなくてかっこいいから?(笑)。
五明 そうですね。適正とかじゃなくて、朝倉未来選手、朝倉海選手、堀口恭司選手がかっこいいなって。
――MMAが華やかな世界になっていたというか。その頃K-1が流行ってたら、そっちに行ってたかもしれない。
五明 そうかもしれないです。K-1は地上波でやってなかったんですけど、RIZINはテレビで見れたので。
――ああ、地上波の影響が大きいんですね。
五明 その影響がたぶん一番でかかったです。
――でも周りは反対しますよね。
五明 なんなら「空手を続けろ」と。空手やればいいじゃんって声が多かったです。
――アルソックをやめて、どこかで働きながら空手を続ける道筋はあったんですか?
五明 やろうと思えば全然ありましたね。どこかの企業で働きながら、練習している時間も仕事として扱ってくれたりとか。
――実業団ということですね。それは安定の道ではありますね。
五明 安定は安定ですけど、やっぱり格闘技で成し遂げたいっていう気持ちがあったんで。
――お父さんはどんな反応だったんですか?
五明 お父さんも空手を続けたほうがいいんじゃないかと。でも、いまは試合になれば会場まで来てくれるし、応援してくれてます。
五明 そうです。堀口選手とは流派が一緒だし、堀口選手のお兄ちゃんが同じ大学の空手部の先輩なんです。そこは昔から知っていたこともあって、やっぱり憧れましたね。
――入ったジムはトライフォース赤坂(現ジャパントップチーム)ですね。
五明 そこは最初から決めてました。堀口選手はアメリカのジムだったので、テレビで見た未来さん、海さんがいるトライフォース赤坂に入ろうと。最初は一般会員として入って柔術から始めて。当時から未来さんや海さんに憧れて入ってくる人たちが多かったですね。入ってもすぐいなくなっちゃう人もいたけど、続けた人はアマチュアに出始めて、ボクも試合に出るようになりました。
――立ち技の人がMMAに転向するとき、寝技がキツくて心を折られてやめちゃうケースがあるとか。
五明 いや、ボクは楽しかったです。それに柔術をやらないことには、MMAで何もできないなと。だんだんとできないことができるようになったし、柔術は嫌いじゃないんですけど、あんまり試合に出ないんですよ。好きなほうなんですけど、なかなか試合に出ない(苦笑)。
――じつはちゃんとやってるし、練習でもできるんだけど、試合になるとなかなか……
――たしかに。ストライカーはMMA転向後、極められてMMAの洗礼を浴びることがあたりまえの風景ですけど、五明選手はないですね。
五明 DEEPのタイトルマッチで神田(コウヤ)選手にコントロールされたんですけど、一本まではいかなかったので。そこまで自信を持って自分から取りに行けないですけど、しっかりやってきた自信はありますね。
――MMAを実際にやってみて、イメージと違ったところってありました?