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記事 9件
  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.16

    2017-09-05 22:17  
    1
    このままではモテるどころか、評価が下がっていく一方だ。
    歩きながら必死に改善策を練る。
    次のアトラクションは、ワールド内にある河を船で回るツアー『エキサイティングクルーズ』
    ツアー中はたくさんのアトラクションを背景に写真を撮ることができ、ゆったり楽しめるので、家族客にも人気が高い。
    結局何もアイディアが出ないまま、20人くらいのお客さんと一緒に俺たちは船に乗り込んだ。
    「それでは出航しまーす!」
    クルーのお兄さんの声とともに、船が動き出した。
    「あちらに見えますのがーー」
    お兄さんのガイドに合わせて乗客みんなが視線を送り、写真を撮ったりしている。
    「ねぇねぇ、私たちも撮ってよ」
    のぼりが俺と武志にスマホを押しつけてきた。
    「俺撮るよ。武志も入れば?」
    「いや、俺はいいよ。自分で景色撮りたいし。お前こそいいのか?」
    「あんまり撮られんの好きじゃないから」
    「ちょっとー、早くしないとマウンテン

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  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.14

    2017-07-27 21:15  
    腹痛は治まり身体はスッキリしたが、心と頭にはモヤモヤが溜まっていく。
     
    「おっ 来た来た」武志が気づいて手を上げた。
     
    ベンチに女子2人を座らせて、自分は立っている。
    詰めれば座れそうだけど、女子を気遣ってるんだな。
    ま、俺もそうするけど(密着したら緊張で変な汗出そうだから…)
     
    「お待たせ〜」
    「ねぇ、ちょっと休憩しよ」のぼりが提案する。
     
    「そこでアイス売ってるよ」
    藤島が指差した先には、おばちゃんとおばあちゃんの間くらいの歳の女性が、小さなフードワゴンで販売員をしていた。
     
    ワールド内には同じようにポップコーンやクレープなどのワゴンがちらほら出ている。
     
    「じゃ、じゃあ、俺たちが買ってくるよ」
    「おー、ありがとー」のぼりが答える。
     
    これまでの失態を巻き返すためにも、小さな気遣いを重ねていくしかない。
     
    「2人は何味にすんの?」
    武志が訊くとすかさずのぼりが、
    「プリ

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  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.13

    2017-07-15 11:40  
    早速、キッズタウンマニアに乗ろうと、移動する一同。
     
    しかし、のぼりの余計なブッコミのせいで、俺の当初のもくろみは大幅に崩れてしまった。
    動揺をかくせず、その後の受け答えもしどろもどろに。
     
    ファストチケットを使い、並ばずにスイスイと進み、いよいよ俺たちが乗る番になった。
     
    「あ、これって2人ずつ乗るやつなんだな、ペアどうするべ?」
     
    なにぃ!?
    ここで藤島と2人にされるのはヤバすぎるぅぅぅ〜〜〜
    間を持たせるのもママならないと判断した俺は、必死で弁解する。
     
    「あ、あ、あのさ、キッズタウンマニアは、おなご達2人が乗りたいって言ってたじゃん?なら、のぼりたちで一緒に先に乗りなよ。殿方には殿方の楽しみがあるからさ。な?武志?」
     
    「お、おう。」
     
    あまりの俺の動揺ぶりに、さすがの武志も困惑ぎみだ。
     
    「あはははー。やっぱり健斗って変ー(笑)。
    今どき、おなごとか、殿方ってw」

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  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.12

    2017-07-05 20:11  
    「変?」藤島が首をかしげる。
    「そうそう、なんかいっつも動画観て、一人でぶつぶつ言いながら納得してるの」
     
    ほとんど喋ったことのないフラットな状態の藤島に、変なイメージを植え付けるな!
     
    「へぇ〜 どんな動画見てるの?」
    食い付いてきた!ここでしっかり受け応えすればまだ軌道修正できる!
     
    「あ、えと、それは…」
    まずい。女子にモテるための秘訣を日夜チェックしている、なんて言えない…。
     
     
    「人間性を磨くための勉強をしてるんだよな?」
     
    俺の肩に手を回し、アイコンタクトをしながらフォローを入れてきたのは、武志だった。
     
    「そ、そう!人間性!人間性だよ!!」咄嗟に話を合わせる。
    武志ぃぃぃ!お前はいつからそんなにイケメンな振る舞いができるようになったんだぁ?!
    これならのぼりと付き合えるのも納得だぜ!
    さすが俺の親友!心の友!!
     
     
    武志のナイスフォローに興奮していると、藤島

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  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.11

    2017-06-25 20:18  
    1
    天気は、おりしも快晴。
    三連休の1日目って事もあり、朝から人が蟻のようにごった返していた。
     
    元来、人ごみが苦手な俺は、あまりの人の多さに辟易しながらも、待ち合わせでの失態を取りもどすべく、動画を繰り返し観て、ばっちり頭の中にインプットした知識のデータベースを、検索し、次なる一手を考えていた。
     
    次なる作戦は・・・
    「第三者からの言葉をもらうこと」
     
    心理学的に言うと、”ウィンザー効果”というらしく、人は直接言われるよりも、第三者から間接的に言われたほうが
    信憑性・信頼性が増すらしい。
     
    つまり、藤島から観たら、「友達の彼氏」で、”第三者”である武志から、俺の良い面を吹きこんでもらう作戦だ。
     
    昨日観た動画で得たホヤホヤのこの知識を使おうと、朝の電車で作戦会議をしたかったけど、同盟を組んでいる仲間である武志が、まさか俺を悪く言うはずがないだろう。
     
    しかし、武志から良い話を引き

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  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.10

    2017-06-15 12:21  
    1
    いよいよというかあっという間にというか、デート当日がやって来た。

    女子組がデートのつもりでいるのかはわからないけど、
    少なくとも俺にとってはまさに運命―ディスティニー―を決める1日になるかもしれない。

    まさか初めて行くディスティニーワールドが、こんなにドキドキするなんて……
    遊園地とかテーマパークなんて全然興味なかったし、
    ディスティニーワールドは学校の卒業旅行の行き先にもちょくちょくなってたから、
    行くとしたらそのときくらいだろうな、程度にしか思っていなかった。

    武志に誘われてからのここ数日で、ワールドの予習もいっぱいした。
    「その熱意を1割でも数学に向けてたら……」という指摘は、今の俺には通用しない。
    俺はもう人生の勉強、モテるための勉強にすべてを捧げると決めたんだ!

    さわやかな青空の下を歩き、武志と待ち合わせの約束をした駅に着いた瞬間――

    「ええぇぇぇええっ!!?」

    そこ

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  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.9

    2017-06-05 19:05  
    1
    「なぁ、今週末、ディスティニーワールド行かね??」
    武志から唐突に誘われたのは、昼休みの時だった。
    ディスティニーワールドは、僕たちが通う学校から30分くらいの距離にあるテーマパークだ。
    試験も無事に終わり、浮かれ気分な武志が、のぼりが女友達と行く事を聞きつけ、便乗しようとしているとのこと。
    …って事は、、ダブルデート!?
    まさか、自分がダブルデートなんて、、。
    気が動転しそうなのを抑えつつ、武志に答える。
    「ディスティニーワールドなんて、ちょっとガキっぽくね?
    お前、そうゆうのに興味あったっけ?」
    ドキドキしてるのがバレないよう、平静を装いつつも、頭のなかでは色々な妄想が浮かんでくる。
    「そっかぁ、健斗はそうゆうのあまり好きじゃないし、興味ないなら、仕方な…」
    武志の言葉を途中で遮り、力強く言い放つ。
    「チョット待てよ、お前には、オレっていう保護者が必要だろ?
    のぼりとも、元々はオレの方

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  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.6

    2017-05-09 19:00  
    1
    結局女子とまともに話すタイミングもないまま、放課後が来てしまった。
    「ふぅーっ!終わった終わったぁ!
      健斗〜、一緒に帰ろうぜ〜」
    近づいてくる武志を、俺は手で制止した。
    「ん?」
    「悪い、俺ちょっと予定あるから」
    そう言って足早に教室を出た。
    何を急いでいるかというと、さっき帰っていく女子の会話が聞こえたのだ。
    そしてその話題とは、そう! U・RA・NA・I!
    このチャンス、逃してなるものか!
    1階へ降りる階段途中でターゲットを見つけた。
    「今日のラッキースポットがシュークリーム屋さんだったから〜朝から気になっちゃって〜」
    スマホの占い画面を見せながら話しているのは河原木だ。1年のとき同じクラスだったけど、話という話はした記憶がない。
    「じゃあブロンドママ行こっか」
    会話相手は長峰か。今年初めて同じクラスになったものの、まだ関わりはない。
    ちなみに"ブロンドママ"とは、そこそこ有名なシ

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  • いさぎよく恋する動画を見てもエエじゃないか! vol.4

    2017-04-15 19:15  
    3
    朝は戦争だ――。
    46インチの液晶を通して映る、
    黒スーツのおじさんたちが駅へ駆け込む姿を見ながらそんなことを思った。
    中継に映るおじさんたちとは対照的に、
    涼しい顔した清楚なお天気お姉さんが予報を告げている。
    親父はこのお姉さんが好きなようで、
    出勤前には欠かさず見ていく。
    俺も将来は親父みたいにゆっくり自転車通勤がいいなぁ。
    結局夕べは動画見てるうちに寝ちゃったから、
    細かいところは覚えきれてない。
    コップの牛乳を飲み干し、
    支度を終えて気持ちを切り替える。
    さて、トイレでスッキリしたら動画のアドバイスを実践しに学校へ行きますかね~
    ガゴッ
    …ん?
    開かない。トイレのドアノブはそんなに硬いはずは……
    「健斗ぉ~ 今朝は長期戦になりそうだぁ~」
    中から笑い声が聞こえてきた。
    「「「お、親父ぃ~~っ!!」」」
    ――朝は戦争だ。

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