そんなふうに、珍しく楽しんで受けた授業はあっという間に過ぎ、終了した頃には一〇時前になっていた。
 それでエミ子は、あらためてお腹がすいていることに気づかされた。
(これでは、とても家まで持ちそうにない!)
 そう思ったエミ子は、近くで何か買い食いしていこうと考えながら塾を出た。
 ところが、そこで驚かされることになる。なんと、塾の玄関のところに智代が待っていたのだ。
「おつかれさん」
 智代は、驚くエミ子を尻目に無表情でそう言うと、先に立って家とは反対の方向へ歩き始めた。

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 それで、エミ子も後からついていくと、二人はやがてラーメン屋の前までやってきた。
 二人は、そこでラーメンを食べた。
 食べている間も、智代はほとんど口をきかなかった。それで、エミ子もずっと黙っていたのだが、それはいつものことだった。
 智代もエミ子も、口数が少ない方だった。だから、何か話題がない限りは、ずっと黙っていることが多か