第三章「ダンシング・クイーン」


 その日は、朝から梅雨のしとしととした雨が降っていた。それでも、ぼくらは昼休みに屋上に行くと、傘を差しながら二人で話した。
 あいにくの天気だったけれど、おかげでぼくら以外に人影はなく、秘密の話をするには持ってこいだった。
 屋上の北側の縁に立つと、雨で多少けぶってはいるけれど、遠くに日本海を見通すこともできた。米子西中は小高い丘の上に立っているから、ここからだと米子の旧市街はもちろん、新市街の中心である皆生や、遠くは境港まで、弓ヶ浜半島全体を見渡すことができた。
 半島には、皆生と境港とを結ぶ鉄道や道路の線が、コードの束のように何本も横たわっている。その線の隙間から、無数のビルがおよそ二〇キロに渡って林立している。それらビルの高さは、皆生と境港の両端を頂点とした緩やかな逆放物線を描いていて、半島全体がさながら巨大な吊り橋だ。
 そんな近未来SF的景観を