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 驚くエミ子に、ぼくは話を続けた。
「昨日、アマノウズメの話をしただろ?」
「うん」
「アマノウズメは、何をした人?」
「それは……天岩戸の前で踊った人」
「そう。で、そこで天照大神はどうしたんだっけ?」
「興味を引かれて、岩戸から出てきた」
「では、なぜ天照大神は岩戸から出てきたの?」
「それは、みんなが楽しそうにしていて、興味を引かれたから」
「もちろん、それも大きいんだけど、実は、そこにはもう一つ、理由があったんだ」
「もう一つの理由?」
「うん。そこでアマノウズメは、天照大神の『コン』を溶かしたといわれている」
「コン?」
「『コン』というのは、『根』――つまり植物の根っこのことでもあるし、『恨』――つまり『うらみ』のことでもある。そういう、心に巣くった病のことだね。アマノウズメは、天照大神のそれを解消したんだ」
「天照大神は、何かに恨みを持っていたわけ?」
「そう。彼女は、