減ると予測される理由はいくつかあるが、そのうちの大きな一つに「人間のやっていた仕事がITに取って代わられる」というのがある。これは、誰にでもイメージがしやすいだろう。なぜなら、もう実際にそうなりつつあるからだ。
「ITに取って代わられる」といってまず真っ先に思いつくのは、Googleカレンダーができて手帳が売れなくなったとか、Googleマップができて地図が売れなくなったなどという事例だが、それ以外にも、例えば産業の構造が変化し、その結果仕事が減ってしまったというものもある。代表的なのは、デジカメができたおかげで消滅したフィルム産業だが、「本屋さん」もその一つだ。本屋さんは、二つの意味でITに取って代わられる危機にさらされている。
一つは、もちろん電子書籍。
電子書籍の環境が整備されれば、人はどこにいたって瞬時に本を買うことができる。本屋さんに行く手間も、重い本を持って帰る労力も省ける。価格だって安くなる。これらのメリットはあまりにも大きく、本屋さんが対抗するのはかなり難しいだろう。
もう一つがAmazonの存在だ。既存の本屋さんは、すでにAmazonに勝つことが難しくなっている。特に、地方の本屋さんが太刀打ちできない。
本屋さんは、主に次の二つの点でAmazonに後れを取っている。
一つは、品揃え。
本屋さんは、人通りの良い、立地の良いところにお店を構える必要がある。そのためテナント費が高くつき、店舗をあまり大きくできないので、取り揃えておける本の数には限界が出てきてしまう。
ところがAmazonは、通販であるために店舗を構える必要がない。その代わり、賃料の安い町外れに大きな倉庫を構えることができるので、比較にならないくらい多くの本を取り揃えておくことができる。この差は大きい。
二つは、手間。
本屋さんに行くには手間がかかる。特に地方の本屋さんは、車で30分以上かかるというのもざらである。だから、手間だけではなくガソリン代もかかるのだ。
一方Amazonは、家や外出先でもサイトのボタンをぽちっと押すだけである。手間やお金はかからない。もちろん、届くまでには1日か2日タイムラグがあるけど、現代においては「すぐにでも読まなければならない本」というのは滅多にないから、それがデメリットになることはほとんどない。なので、やっぱりAmazonが強いのである。
このように、本屋さんを取り巻く環境は厳しさを増すばかりである。そのため、これからなくなる職業の上位に挙げられたりしているのだけれど、ここでは逆に、そんな本屋さんが生き残るにはどうすればいいか?――というのを考えてみたい。
なぜそれを考えるかというと、これから仕事がますます減っていけば、就労できなくなる人も当然増えて、それは大きな社会問題になるだろうからだ。もちろん、食い扶持を稼げなくなるというのも問題だけれど、それ以上に大きいのは、仕事に就かない人が「人としての尊厳を保てなくなる」ということである。
人は、仕事を通じて他者や社会に貢献することにより、初めて人としての尊厳を保てるようになっている。たとえ社会保障など他者からの施しで食べていくことができたとしても、心は腐っていくばかりだ。ニートをしていてもちっとも楽しくないのは、どこまでも劣等感がつきまとうからである。
だから、これからも仕事は必要とされるのである。そして、これから仕事がますます減っていくのだとしたら、その分、新しい仕事を作っていくことが大切になるだろう。これからは、仕事を創出する能力――ジョブメイク力がだいじになってくるのだ。
そこでここでは、その思考実験として、本屋さんの生き残る道を考えてみたい。
まず初めに取り組まなければならないのは、本屋さんが持っている魅力のうち、電子書籍やAmazonでは代替できないものは何か?――ということを考え、それを提供していくことだ。
そこで以下に、電子書籍やAmazonでは代替できないものを、3つ考えてみた。
コメント
コメントを書く私は「人」が一番重要だと思いました。
私はネットショップ→実店舗を開いたのですが、ネットで得られる統計と実店舗で得られる統計は全く異なっていました。実際、人と接して得る情報はすごく貴重な財産で毎日何かしらの発見が多いです。
Amazonのような確立されたビジネスは数十年は安泰なのかもしれませんが、インターネットだけではいつか限界がくると思います。
「本屋さんへ行きたい」「本が買いたい」ではなく、「◯◯さんのお店で本を見たい」という意識を持たせる工夫がこれから重要になると思います。
昔ながらのお店は、大型店舗にとらわれず、今いるお客さんとのコミュニケーションを大切にしつつ、何か違った新しいことをはじめてもらいたいって思います。
僕の住む近くに、小汚いがお客が沢山入っていて繁盛してそうなラーメン屋があるんですけど、そのラーメン屋はどうやら漫画本が大量に置いてあって、それを目当てに来ているようでした。(僕も実際にマンガを目当てにその店によく行きます。)
こんな感じで、実店舗の本屋さんも、ラーメン屋なりカフェなりと組み合わせるなど、色々とやりようはあるかと思います。
>>1
「人」はぼくも重要だと思います。ところで、「人」って不思議なことに「場」に居着くんですよね。良い「場」には「人」がたくさん集まってきて、そこで交流が盛んになる。一方悪い「場」にはあまり「人」が寄ってこず、結果として閑散とした状態になる。風水というのはそういうことの理由を解き明かす知見だし、実際、同じ商店街でも流行る店と流行らない店とで差が出ます。この「場」と「人」は鶏の卵のようにお互いが複雑に絡まり合っていると思います。
>>2
その通りですね。実際、六本木ヒルズにあるTSUTAYAはスターバックスと組み合わさっていて、なかなか面白いです。でも、ぼくとしてはあの店は色々と不満があって「もっとやり方があるんじゃないか」と、行くといつももやもやとさせられます。池袋のジュンク堂の喫茶スペースで一度トークイベントをさせてもらったことがありましたが、その時はなかなか雰囲気が良かったですね。
>>3
ありがとうございます。
場所が人を作るのか、人が場所を作るのか興味深いです。
気に入った作品に自分のブランドを焼き付けたり、作品を取り巻く環境を焼き付けられに来れるような、「空間」「人」「体験」をさまざまなレイヤーで記録できる本屋や書店員が求められているのでしょうか。
>>6
そうですね。そう考えるとかなり高いスキルが必要とされるのは間違いないようです。でも、そういうところに踏み込んでいかないと、生き残るのは難しいのかもしれませんね。そう考えると、マネジメント力や教育力が、より重要になってくるのかと思います。