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noteで新しく有料の定期購読型マガジンを始めました。タイトルは『文脈ノート』です。その名の通り「文脈」についての記事を発信していきます。
ところで、「文脈」とは何か?
それは「コンテンツを成り立たせている背景」のことです。そのコンテンツが作られた理由や来歴のことです。そういうものの総称を、ここでは文脈と呼びます。
今、文脈がとても重要になっています。
先日『ファースト・マン』という映画を見たのですが、これなどは顧客に文脈を読み解いてもらうことを前提にして成立していました。予備知識なしに見ても、何かを感じることはできますが、面白さの神髄を味わうことはできません。その前提となる文脈を認識してから見た方が――つまりネタバレをしてから見た方が、絶対に面白いのです。
『ファースト・マン』は、NASAの宇宙飛行士、ニール・アームストロングを描いた伝記映画です。ただし、今の若い日本人には、ニール・アームストロングといってもピンとこない人が多いでしょう。それでも、ある世代以上はほとんどの人が知っているし、彼が何をしたかも知っています。
アームストロングは、人類で初めて月に降り立った人物です。彼を知っている人は、彼が月へ行き、そして帰ってきたことを知っています。特に、彼の出身国であるアメリカでは、それは常識として定着しているため、若い人でも当たり前のように知っているでしょう。
『ファースト・マン』は、そんな人物を描いた映画です。つまり、彼の母国アメリカでは、作られた瞬間にすでにネタバレしている映画なのです。ラストで彼が月に降り立つということは、見るからみんな分かっているわけです。
そういう状態で、映画は作られました。そして、そういう状態で人々は映画を見ました。すると、アームストロングの母国アメリカでは、この映画が大きくヒットしたのです。
ところが、日本ではただいま公開中ですが、あまりヒットしていません。なぜでしょうか?
それは、アメリカとは逆に、日本ではアームストロングのことを知らない人が多いからです。「彼が月に降り立った」という、映画のラストを知らない人が多いからです。
これはしかし、これまでの常識を覆すものです。映画というのは、これまでの常識では「ネタバレ」が厳禁でした。彼が月に降り立てるか否か、結末が分からないからこそ楽しめる――それが一般的な映画の見方でした。
しかし、今やそれは逆になっているのです。結末を知っているアメリカ人の方が映画を楽しめ、結末を知らない日本人の方が映画を見ない。
つまり、もはや映画は「結末を楽しむもの」ではなくなっているのです。もちろんそういう映画もまだありますが、メインストリームではなくなってきています。
なぜそうした状況が生まれたかといえば、それはコンテンツの楽しみ方が変わってきたからでしょう。今、多くの人はコンテンツを受動的に味わうのではなく、主体的に楽しむようになってきています。入ってくる情報をただ受け入れるだけではなく、自分から情報を積極的に取りに行くようになっているのです。
それは、インターネットができ、スマホができたからでしょう。昔は、情報を得るのはとても手間がかかりました。ですから、もしアームストロングの映画を作ったとしたら、彼の来歴や背景――つまり「文脈」を、映画の中で説明する必要があったでしょう。
しかし今は、そういうものはスマホで簡単に調べられます。だから、映画ではいちいち説明したりしません。
映画の冒頭、アームストロングは一人乗りの飛行機に乗っており、やがて着陸します。実は、それは彼の人生にとって重大なできごとの一つでした。飛行中にトラブルが起こり、危うく死にかけたのです。それを、彼の機転で命からがら乗り越え、無事に着陸できました。
ところが、そうした状況は映画の中で一切説明されません。ただ彼の操縦する姿や計器、管制官とのやり取りといった、その場で起こっていることだけが淡々と映されているだけです。
ですから、アームストロングの詳しい経歴を知らない人には、その映像が何を意味しているのか、さっぱり分かりません。そういうシーンが、冒頭5分以上にわたって展開されるのです。
そういう映画が、大ヒットを記録したのです。このことは、これからのコンテンツにおいて、文脈の説明がますます必要なくなることを意味します。それは、顧客が自分で調べる時代になったのです。
そして、それは楽しいことでもあります。文脈を主体的に調べること自体も楽しいですが、そうしてから味わうコンテンツは、ただ受動的に見るだけのコンテンツよりも格段に楽しめます。
それでも、文脈を調べるためには、調べる方法やより深く調べられるコツといったものを知っておく必要があるでしょう。上記のマガジン「文脈ノート」では、そうしたことについての記事を配信していきます。月額500円ですが、もしお読みいただけたら、みなさんのコンテンを味わう時間がより楽しいものとなることを保証いたします。
また、文脈を読み解くだけではなく、構築する際にも必要となる情報や知識もお伝えしていきます。そのため、コンテンツを楽しむだけではなく、作る側のクリエイターにとっても、大いに役に立つものとなるはずです。
みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
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