ハックルベリーに会いに行く
マンガのはじまり:その16(1,673字)
『ノンキナトウサン』は、大正末期の関東大震災などに端を発する「不況」という世相にぴったりハマって、大ヒットとなった。それ以前の大正前半は、第一次世界大戦がもたらした輸出の拡大によって、維新以来の好況に沸いていた。そのいわば「大正バブル」の中でさまざまな文化が花開いた。
それは後に「大正元禄」と呼ばれるようになるのだが、その文化シーンをリードしていたのは当時の若者たち――モボ(モダンボーイ)とモガ(モダンガール)であった。彼らはアメリカ「狂騒の20年代」の影響を色濃く受けながら、あらゆるものを洒脱に、如才なく受け止めようとした。洗練された「ジョーク」で昇華しようとしたのだ。
だから、大正末期に訪れた不況においても、あたふたすることをよしとしなかった。軽く受け流し、虚勢を張った。『ノンキナトウサン』作者の麻生豊も、それを読んだ読者たちも、モボやモガであった。だから、『ノンキナトウサン』は不況を
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