「私は滑舌が悪いのか?」  2014年3月27日

 控訴審判決後に取材を受けた「女性自身」の4月1日号が今日交付された。

 いつもより検閲に随分日数がかかった。
 発売日から9日後やっと目にしたその記事の冒頭は私が記者に答えた言葉が載っていた。

「予想どおりの判決で特段の考えはありません」

 えッ!?

 あの記者、2年も私と付き合って、何十回となく会ってきて、私が2度も死刑判決受けて何も考えていないと思ったわけ?

 私は「特段の感慨はありません」と言ったのだ。

 「かんがい」と「かんがえ」。聞き間違えますか?

 まぁ、百歩譲って私の滑舌かイントネーションが悪いとしよう。
 その後原稿を書く時点で、面会時に「かんがえ」と書いた速記は間違いで「かんがい」って言ってたんだな、と気付くでしょうよ。プロの記者なんだから気付いてよ。あいつぅ……なっとらん。
 しかも、私が控訴審に出廷できたのは、出版社と新聞社の2人の記者のおかげだと感謝していることを伝えたら「取材期間はもうすぐ2年になるが、彼女の口から初めて感謝の言葉を聞いた」って書かれたし。
 いつも文句ばっかり言っているのを根に持っているのだろうか。すみません。

 確かに彼は、とても礼儀正しい記者なのです。どんなに親しくなろうと、こちらが恐縮するほど深々とお辞儀をして挨拶をする人だ。
 ルックスはゲイのバーテンダーにしか見えないが、真面目な男性です。短気でブラックな一面が垣間見えるのも面白い。

 私は彼に300通以上手紙を送ったらしいと記事で知った。

 私のあんな事もそんな事も知ってるはずの彼に「考えていない」と思われている私って……。

 年下の男性と通じ合える気がしない度合いが深まってまいりました。

 私は一応色々考えているんですけど。

 「女性自身」記者の君、察してッ!どこまでうっかり屋さんなんですかッ!

 私はこういう彼と組んで小説を書きました。お楽しみに。


「チーム編成と悲喜こもごも」  2014年3月31日

 支援チームのメンバーが増えました。

 体制を固め、生活のリズムが整うまでにあと1ヵ月はかかると思います。

 最大で週に5通の手紙と5回の面会と早朝の電報しか連絡手段のない環境では、外界とのコミュニケーションに時間がかかるのです。その相手が複数となれば尚更です。

 今までのメンバーは紹介によっての繋がりでしたが、3月に初めてブログ読者へ手紙を出しました。とても素敵な出会いに喜んでいます。

 私は郵送で手紙を下さった人にしか返信していません。Eメールは、私が読む価値のあると管理者が判断したものだけプリントで届きます。多分に恣意的な選択がされていますし、Eメールから受ける印象で判断することはできない為、面識のない人から届いたEメールに返信することはありません。
 内容が批判的なものであれ、正しい指摘をして下さる人には感謝しています。
 私が返信をするのは、有意義な情報を継続的に与えてくれる人、私の気持ちを楽しいところへ連れて行ってくれそうな人です。

 控訴審判決後はチーム内に軋轢が生じ、そのことは私にとって何より辛い出来事でした。
 一審と同じ判決が下されたにも関わらず弁護団を信じる私に、それはおかしいと言うメンバーがいたことがきっかけでした。

 捜査機関の発表を一方的に報道するメディアによって世論が作られ、検察が推論で事実らしきものを再構成したストーリーを裁判所はすんなり認め、冤罪が作られてしまう日本の刑事事件の仕組みを理解してもらえないことが悲しかった。

 桜の便りも訊かれる3月の最終日、髪を切った。
 例のバリカンで。
 件の雑役さん、腕を上げました。

 部屋に戻ると嬉しい手紙がいくつか届いた。今日の昼食にちくわの天ぷらが出てご機嫌だったところに良いニュースが重なった。

 何と講談社で「誘蛾灯」を担当した男性から、伊東屋製の素敵な便箋にブラックインクの万年筆で丁寧なお便りが!
 佐野眞一氏の著書で遺恨がある講談社とは関わりたくなかったのだが、嬉しいニュースだったのでご報告を。

 佐野氏の本を送り付けた編集者は無礼者だったが「誘蛾灯」を担当した「g2」編集長だった方から直々にご連絡頂けるとは光栄です。
 私がブログの初回で指摘した「誘蛾灯」の記述の誤りを訂正したという。そしてその2刷りを送って下さった。ありがとうございます。
 指摘したと言っても私の年齢だけなのだが、ノンフィクションでは1箇所でも数字の誤りがあると、他の記述の信憑性に関わると思ったのでお伝えしたのです。

 私は「誘蛾灯」を読むまで「g2」はノンフィクション誌なのに当事者取材せず、取材記者が上げたデータをジャーナリストに一人称で書かせる「エア取材」の執筆手法を推奨している雑誌だとばかり思っていました。

「誘蛾灯」は文庫化し、長く読み継がれるべき本です。

 この本がノンフィクションとして真実を記してあることは、出版後に上田美由紀さんが著者へ手紙を送っており、それが控訴審の最中、私はどうしたらよいかという相談であったことが何よりの証左でしょう。

 私の判決公判を傍聴した青木さんのお姿を写真で拝見しました。

 髪の毛、短く切り過ぎです。
 もう少し長い方が似合います。

 私が青木さんのルックスを褒めたことの報道で一番面白かったのは、東京新聞のコラムに「そっちかよ(笑)」と書かれたこと。

 そっちでもあっちでもいい。

 私は青木理さんが好きです。

 上田さんより私を取材した方が楽しかったと思うわよ。本当だもの。