日曜の午後にカーネーションの花束が届いた。「おかあさん いつもありがとう。」というカードが添えられている。配達員から荷物を受け取った妻は少しの間、玄関で立ち尽くしたまま首を傾げていた。それぞれの実家に贈ったものが手違いで自宅に届いてしまったのかと思ったようだ。差出人である自分の名前と住所を間違えて宛先の欄に書いてしまったと思ったらしい。しかし、差出人の欄にはどちらの実家の住所も母親の名前もない。
「誰だろう?」
 確かに妻に宛てられたものだったが、差出人の欄には名前がなかった。