透明というのは見えないものだとばかり思っていた。だけどどうやら、そうじゃないらしい。 

 一週間ぶりに走り始めた日のことだ。太陽が一番高いところに到達した時間だった。海沿いの134号線。あたたかな陽光と冷たい外気の隙間に身体をもぐりこませるように走り始めた瞬間、僕の目の前に透明がはっきりとした輪郭を伴って出現した。まるで登場人物の目には見えない透明人間が観客にはしっかりと存在しているSF映画みたいに。