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【第293号】オンラインゲームとゲームSFのリアリティ
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【第293号】オンラインゲームとゲームSFのリアリティ

2020-10-14 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第293号 2020/10/14
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    『チェンソーマン』に引き続き『ファイアパンチ』を読んだのですが、いやー面白いですね。ヤンサンの特集回も面白かったのですが、マクガイヤーチャンネルでも機会をみてやりたいところです。




    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    〇10月19日(月)19時~「黒沢清とセカイの恐怖」

    10月16日より黒沢清の新作『スパイの妻』が公開されます。

    6月にNHK BS8Kで放送された作品の映画版ですが、どう考えても普通のNHKドラマとは思えません。

    そこで、映画監督 黒沢清について振り返りつつ、『スパイの妻』について解説するようなニコ生を行います。

    ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。



    〇11月15日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2020年11月号」

    詳細未定

    いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



    〇11月30日(月)19時~「推しドキュメンタリー特集(仮)」(日程が変更になりました。ご注意下さい)

    『れいわ一揆』『はりぼて』『なぜ君は総理大臣になれないのか』……ドキュメンタリー映画の力作が相次いで映画館で公開されています。

    『ザ・ノンフィクション』『ドキュメント72時間』『NNNドキュメント』といったテレビのドキュメンタリー番組も長い間人気です。

    そこで(というわけでもありませんが)、ドキュメンタリー番組とはなにかについて総括しつつ、「推しドキュメンタリー作品」について紹介しあうようなニコ生を行います。

    ゲストとしてお友達の編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。



    〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

    当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

    https://macgyer.base.shop/items/19751109


    また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

    https://macgyer.base.shop/items/25929849


    合わせてお楽しみ下さい。




    さて、今回のブロマガですが、前回のニコ生「『デカダンス』とゲームの中で生きるおじさん」で話したオンライン版ゲーム的リアリズムというか、オンラインゲームとゲームSFのリアリティについて書かせて下さい。



    ●オンラインゲームの一般化

    世界初のオンラインゲーム、というか世界初のグラフィック処理を兼ね備えたMMORPGやMMOFPS――プレイヤーが自分の分身となるキャラクター(アバター)を作り、チャットその他で交流できる大規模で多人数が同時参加可能なゲーム――は1991年に発表された『Neverwinter Nights』であるといわれています。これは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をベースとしたPCゲームでしたが、インターネットもまだ発達していなかった1991年においては、テーブルトークで『D&D』を遊ぶ人はいても、パソコン通信などでオンラインゲームを遊ぶ人はまだまだ少数派でした。その後、Windows95が発売され、ISDNやADSLのような(一般電話よりも)高速な回線のサービス、テレホーダイのような定額制サービスが開始されると共に、1997年の『ウルティマオンライン』で一般化したといわれています。ただし、これはあくまでもPCゲーマーの中での話です。

    家庭用ゲーム機でMMORPGが一般化したのは、ドリームキャストの『ファンタシースターオンライン(2000年)』がきっかけです。モデムを標準搭載した初の家庭用ゲーム機でMMORPGが発売されるのは必然だったのでしょうが、そのタイトルが、セガがブランドとして持っていた剣と魔法のファンタジーである『シャイニング』シリーズではなく、SFファンタジーである『ファンタシースター』シリーズであったのが面白いところです。

    以後、無線・有線に関わらずLAN接続を前提としたPS3やXBOX360、Wiiといったいわゆる第七世代ゲーム機器の発売と普及、スクエニの『FFXI(2002年)』『FFXIV(2010年)』『ドラクエX(2012年)』という国民的ゲームシリーズのオンライン版タイトルのヒットが続き、ゼロ年代からテン年代にかけて爆発的にプレイ人口が増えました。『Call of Duty』『Battlefield』のマルチプレイモードといったMMOFPS、『PUBG』『フォートナイト』といったバトルロイヤルゲームのヒット作も生まれました。今の10~30代で、ゲーム機器を所持していながらオンラインゲームをプレイしていない人は少数派でしょう。



    ●ゲーム的リアリズムとは

    東浩紀が2007年に発表した『ゲーム的リアリズムの誕生』は画期的な文芸批評であり、現状認識でした。画期的すぎて、現在では「ゲーム的リアリズム」の内容は、『ゲーム的リアリズムの誕生』を読んでいない人にとっても、「今更そんなこと言うまでもないことだろ」と言われそうなくらいです。


    ・ポストモダンでは、多くの物語が、現実ではなくポップカルチャーの記憶から形成される人工環境に依拠することになる。いまの日本では、まんが・アニメ的リアリズム、そしてゲーム的リアリズムに依拠することになる。


    『All You Need Is Kill』にみられるループ、美少女ゲームにみられるコミュニケーション志向からコンテンツ志向、『ONE』にみられる「永遠」のようなゲーム外でのプレイヤーの行動のメタ的な取り込み、『Ever17』のようなゲームのシステムを利用した錯覚トリック、『ひぐらしのなく頃に』のパラレルワールド的章だてのような、選択肢が無いにも関わらずまるでなにかを選択したプレイヤーが存在するようなストーリーテリング……それらはすべて、ゲーム外でのプレイヤーの行動をメタ的に取り込もうとするゲームと、その影響を受けた小説・アニメである。


    ・判断停止の否定、選択の肯定、「なにかを喪わなければ、なにも得ることができない」という選択と喪失の不可分が物語の特徴となる。


    ・ゲーム的リアリズムが誕生したのは、おそらく(『D&D』を基にしたTRPGの)リプレイを基にした小説とそれを産み出したゲームシステムがほぼ同時に商品として発表された『ロードス島戦記』がきっかけである。これにより読者かつ消費者はメタ的な視点で小説を読むきっかけを得た。


    ……というのが要約になるでしょう。


    私見ですが、「判断停止の否定、選択の肯定」は、宇野常寛の「決断主義」と本質的には同じことです。また、「なにかを喪わなければ、なにも得ることができない」という物語のテーマは、プレイヤーや読者の行動をメタ的に取り込もうと努力し続け、その効果をよりドラマチックに表現した結果になりますが、これは「Kanon問題」とも呼ばれる「誰かが救われると誰かが救われない問題」として最大化されます。つまり、セカイ系と親和性が高い……どころか、ゲーム的リアリズムこそがセカイ系を産み出した(ものの一つ)といって良いでしょう。ゲームをプレイしている瞬間は、プレイヤーこそがゲームの中の物語の命運を握っているのだから当然といえば当然です。このリアリティが小説やアニメに影響した結果、『まどマギ』『君の名は。』が産まれ、『天気の子』がまるで数あるヒロインの中からメインヒロインを選んだシナリオがアニメ化されたかのような話になったわけです。



    ●オンラインゲームによるリアリズムの更新

    『ゲーム的リアリズムの誕生』の発表は2007年です。『FFXI(2002年)』は発表されていましたが、『FFXIV(2010年)』や『ドラクエX(2012年)』は未発表でした。『PUBG』や『フォートナイト』といったバトルロイヤルゲームは影も形もありませんでした。

     
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