ハーバート・ノーマンは一九〇九年生まれ。カナダの外交官。『ハーバート・ノーマン全集』(岩波書店、一九七七年)収録の論評「日本における近代国家の正立」からの引用。

・幕府の転覆は、薩摩・長州・土佐肥前の下級武士および浪人と少数の公卿を指導者とし、京・大阪の豪商の財力を後楯とする反徳川諸勢力の団結によって達成された。

・維新は、単に狭義の政治的意味における、幕府から中央集権的宮廷への政権の移行を意味するばかりでなく、政治の重心の上士から下士への移行を意味する。

・下級武士はその鋭い剣の力や断乎とした決意だけでは幕府を転覆しえなかった。武士の政治的・軍事的活躍ほどに劇的ではないが、幕府の転覆と新階級の安定を達成するうえにそれよりも深甚な影響を及ぼしたのは、大町人―日本の富の70パーセントが集中したといわれる大阪商人の経済的支援であった(中略)。さらに重要なことには、破産した幕府の