在外公館でご一緒した方(故人)の句集『紫陽花Ⅱ』から幾つかの句を選択しました。

・雨毎に青さ増し行く紫陽花は 庭端に籠もれる清き手毬

・夏休み朝顔日誌忘るとも   健気に開く今朝の花あり

・杳き日は母の好みし桔梗模様 今夏掛けに浅葱地清し

・花吹雪はらりひらひら一面に 若く逝きたる君の無念

・はにかみをくるむごとくに花満ちて 秘めし思いの伝わらん

・人しれず野に咲くすみれ誰が為か  静けき色の小さき花よ

・冬椿緑の垣に紅の      灯りともしてさんざめくらん

・どくだみのおどろおどろしき名に反し 花は真白き小さき十字架

・イギリスの庭に咲くバラ誇らしげ 庭のヒロイン小鳥を招く

・時刻む音ふいに止み思い出は ゼリーのごとく固まり始む

・待ち詫びし便りなきまま秋雨に かえでの紅葉闌けゆく真昼