私は比較的多く、画集を買う。展覧会で絵を見ても一瞬である。多分画家の伝えたかったことのほとんどが吸収できていない。それで画集を買ってゆっくり眺める。2017年には『香月泰男 凍土の断層』を買った。シベリアでの抑留生活がテーマである。叔父がシベリアで抑留されていた。シベリアを訪れたこともある。ウズベキスタンに勤務した時には、抑留者の墓地も訪れた。シベリアでの抑留は私の意識の中ではそう遠い存在ではない。
戦争を描いたものには様々な名画がある。香月泰男氏の絵画「シベリア・シリーズ」全57点は日本絵画の傑作であろう。
香月泰男氏は1943年招集され、1947年帰国までの時期を描いている。召集され満州に送られ、敗戦を迎えてソ連軍の捕虜になり、帰国するまでの間を描いているが、戦闘の場面はない。本人自身、銃を持ち戦っていない。しかし戦争に巻き込まれ、翻弄されている。シベリアでは疲労と栄養失調で多くの
孫崎享のつぶやき
随想 54 絵画、香月泰男「シベリア・シリーズ」
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コメント
コメントを書く香月康男氏に対する孫崎さんの問いは最後の行に集約されているのでしょうか。
「香月康男にとって戦争とは何であったか」「兵にとって戦争とは郷愁との戦いである」「日常を奪える正義に何があるか」「彼は集合体、それは右も左も、の欺瞞性に気付いている。」
理性的に判断する「イデオロギー・思想信条」を重視する人であるより、日常生活に密着した「心情風景」を「陽と陰」を使い分けて日本人の心を描いた画家のような気がしてならない。
「厨房の画家」といわれた時代は詩情豊かな美しい絵画であったが、黒と黄土色を基調とした作風になっている「シベリアシリーズ」を一挙に発表した。完成作に関連素描があり、イメージから忠実に絵画化した経緯が分かる。
シベリアシリーズは死ぬ前には年に一枚しか描いていない。
シベリアは日本にか帰還してからは忘れようとしていたが、生活の中で、シベリアに直結することが起きると、心に忍び込み、かかざるを得ない心境になられたのではないか。
戦争は一時期の心の傷であり、戦争と直結してみたくない。日本人の心がくみ取れる画家で親近感が深い。
> 展覧会で絵を見ても一瞬である。
首都圏で何度か名画展に出掛けるも、いつも大阪万博状態だ。ご指摘の通り じっくり鑑賞できた試しがない。
観光客だらけの世界遺産に出掛けても辟易するだけ━それと同じだ。日本人の殆どは「そんなもの」と思うのだろうが、10年前に行ったスイスのチューリッヒ、ベルン、バーゼルの美術館では混雑など皆無で、好きなだけ名画を見ていることができた。
彼の国と比べだすと何から何まで そんな調子だ。原発もまた然り...物事が一般大衆にとって「あるべき状態」になるよう社会が動く。スイスは多くの面でそれが実現できる国に見える。
> むなしいと思いながらあるくことは悪いことであった...責任を他に転がしてはならぬ。しょせん人間は弱いものだと思い込んではならぬ。
本来、教育基本法にでも謳うべき文言でないか。
先日の日刊ゲンダイに五輪反対の演出家・宮本亞門氏が「私が一番心配なのは国民の心が折れること」なる寄稿をしていた。曰く-
“私が一番心配しているのは、このまま何も論じ合わず、説得することもなく開催したら、国民が「どうせ、何を言っても変わらないんじゃないか」「どうせ日本はいつもこう」「いちいち選挙に行っても無駄」と無気力になったり、心が折れることです。”
香月泰男氏に言わせれば、まさに「そんな風に考える根性がダメなんだよ!」であろう。
香月泰男氏から「非戦」が他の全ての価値を超越することを我々は学ばねばなりません。
五味川純平氏は「人間の条件」で梶の苦悩を詳細に描き、「非戦」を訴えてます。
人間性を全面的に否定する戦争を視野に入れている自民党が、明治生まれの諸先輩の警告を無視して、独裁体制を布いているのです。
日本人は大いに反省せねばなりません。今のままだと間違いなくとんでもないことが起こります。
シベリア抑留から生き残った画家—香月泰男 https://www.nippon.com/ja/features/c03303/#.YNlPZihXHqY.twitter