『日米開戦の正体』近藤大介氏(『週刊現代』副編集長)書評。「国会前等安保法制反対の若者達にも向け書いたのでないか」
現代ビジネス+掲載:『日米開戦の正体』 孫崎享著(祥伝社、税込み1,890円)
私はこの510ページもある大著を、日曜日に一日かけて読んだが、読後にふと思った。著者の孫崎氏は、一体どれくらいの時間を費やして書いたのだろうと。この手の本というのは、著者へのインタビューをゴーストライターがまとめたものから、1ページ1ページ、著者が心血を注いで書いたものもある。この大著はまさしく後者で、引用されている資料の数だけでも膨大なものだ。
「ライシャワーは、著書『日本<過去と現在>』で、日本人は「権威に弱い国民」「全体主義の無差別奴隷社会」と位置付けました」
「石原莞爾と陸大で同期だった横山臣平が、『秘録 石原莞爾』で、石原が真珠湾攻撃の直前に『日本の
コメント
コメントを書く読者層をどのようにお考えになったかは確かではないが、歴史的事実をもとに、「日米開戦」を現代に置き換え、時代差を乗り越え、自分の見方考え方を問うているので、読み方によって、深くもなれば、浅くもなる。現代史を直視し、勉強するに最適な本であることは間違いないが、表面的に読み取れても、本質を読み取るのは容易ではない。
近藤大介氏の指摘する「出来るだけ当時の人の考え方を紹介しよう」という孫崎先生の書き方が圧巻だと思います。古くは親鸞の「教行信証」です。仏典の引用で自説を展開していくスタイルです。説得性があります。新しくは、斎藤愼爾の周五郎伝(虚空巡礼)がそうです。第三者の周五郎評で埋め尽くしながら著者の言わんとする周五郎像がくっきりと浮き彫りされるスタイルです。「日米開戦の正体」「教行信証」「周五郎伝」いずれも私にとっては甲乙付けがたい好著です。