欧州中央銀行のドラギ総裁が5月の理事会の際に予告した通り、6月5日のECB理事会で新たな金融緩和策を発表しました。
 内容は、事前予想の政策金利利下げを決めたうえ、中銀への預入金利をマイナス金利、融資拡大のための長期オペの導入など予想以上に様々な緩和策の実施を 発表しました。資産担保証券(ABS)購入型の量的緩和は準備を加速することも付け加えられました。今後も量的緩和を含めて、さらなる緩和政策を実施する ことも示されました。

 利下げのみが発表された直後は、ユーロ・ドル相場はほぼ反応薄だったものの、更なる政策発表があるとアナウンスされると1.35割れ寸前という 100BPの下落。その後は、内容が量的緩和ではなかった失望から1.36後半へと急反発。発表前よりもユーロは買われる結果になったのはご存じのとおり です。
 しかし、米ドル金利がじりじり上昇しだしたことに加えて、欧州中銀関係者からの聞こえるユーロ高けん制発言、「我々の行動はまだ終わっていない」などの 発言から量的緩和導入の可能性の高まり、ユーロの上値は重くなっています。米ドルも日本円も量的緩和導入直後は、通貨安に大きく反応したことは記憶に新し いところです。
 5月8日のECB理事会時1.40直前だったユーロ相場をけん制するようにドラギ総裁は6月の緩和に言及しました。今後は、1.40を上値にユーロ・ドルは低下の可能性を高めていくと思っています。

 米ドル金利の低さが話題になっていましたが、ここへきて米国国債の利回りが上昇してきています。10年物では2.44%を最低利回りに、直近では 2.65%まで上昇。徐々に債券につくとされるリスクプレミアム分が戻ってきました。直近では、10年債の50日移動平均2.61を上抜き、100日移動 平均の2.67目前にあり、200日は2.71水準ですので、この水準を抜いてくるようだと、米金利も当面の底をコツンとしたと言えるでしょう。

 ドル・円相場のこう着が未だ続いています。米ドル金利の低さによる金利差縮小も挙げられてきましたが、米ドル金利が上がっても静かな展開が続いていま す。貿易収支拡大が続くなどのファンダメンタル面に加え、実需面では、日本の大手企業による海外投資が続いています。某飲料会社の米ウィスキー会社買収、 某生保の米保険会社買収、某通信会社の米社買収など大型案件が伝えられます。また、年金基金による海外証券投資も増加すると伝えられますが、ドル円相場は 103円の手前水準を抜けない状態です。
 変動率の低さが続いた後は、大きくどちらかに振れるという経験則、それも円高方向へ振れることがこれまでは多かったと言われますので注意が必要ではありますので、ボックスを抜けるまでは慎重に対応しておいた方が良さそうです。

 主要通貨の対米ドル相場で、先月末から上昇したトップはオセアニア通貨です。そのうち、キウイといわれるニュージーランド・ドルは明日行われる金融政策 委員会で現在の3%から3.25%への利上げが発表される可能性が高く、対円でも87円の半ばという高い位置にいます。日米欧の超低金利が続く中、金利ら しい金利水準のオセアニア通貨へのニーズは続くことと思われます。

 サッカーのワールドカップが今週開催され、世界の関心は市場からサッカーへとも言う向きもあります(個人的には、今週末の全米ゴルフ選手権に関心がありますが)。サムライ・ジャパンにも頑張ってほしいものですが、サッカー熱とともに、市場も盛り上がってほしいものです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

*6月11日15時執筆
 本号の情報は6月10日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。

式町 みどり拝

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)