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正しくない意見が間違った意見として理解されるとは限らない
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正しくない意見が間違った意見として理解されるとは限らない

2014-05-18 21:00
    ごきげんよう。有料メルマガ評論家の渡辺文重です。久しぶりに有料メルマガについて何か書こうかと思います。

    ◆今回の記事に登場する有料メルマガ

    海燕『ゆるオタひきこもり生活研究室』/ほぼ毎日/324円
    http://ch.nicovideo.jp/blog/cayenne3030/nico

    岩崎夏海『ハックルベリーに会いに行く』/毎週月曜日・火曜日・水曜日・木曜日・金曜日/864円
    http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga

    少年 佐藤秀峰/週3~5回/540円
    http://ch.nicovideo.jp/shuhosato/blomaga

    ◆3Dプリンタ拳銃制造事件と福島の真実

    5月9日(金)、「3Dプリンタ拳銃制造事件に思う個人と社会のゲーム。」(http://ch.nicovideo.jp/cayenne3030/blomaga/ar526783)という記事が配信されました。この記事は有料なのですが、私が気になった部分は無料公開されている箇所なので引用します。
    今回、この容疑者が「3Dプリンタを使えばだれでも銃を作れるよ」というメッセージを発信したのだとすれば、社会はそれに対抗して「でも、作ると捕まえるよ」というメッセージを放ったとも云えるわけですね。
    海燕氏の解釈は正しいと思いますし、実際、銃砲刀剣類所持等取締法違反容疑にしては、TVや新聞などで大きく報じられた理由の1つではないかと思っています。しかし、こうした報道や海燕氏の意見に賛同すると同時に、何ともうまく表現できない違和感を覚えたことも事実です。その違和感の正体は、別の問題で明らかとなります。その問題とは、漫画「美味しんぼ」の東京電力福島第1原発事故による健康影響の描写です。

    この問題については、「『美味しんぼ』の鼻血の件」(http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar528443)という記事に記されている、岩崎夏海氏の見解を支持したいと思っています。
    「放射能」の危険性というのは、これはあるともないとも、今のところ確たる証明はできていない。そのできていないものに対して、「美味しんぼ」の作者が個人の見解を述べることは、自由であるべきだと思う。抗議する人は「風評被害」だと言っているが、そう言うなら、それは本当に「風評」である――つまり、福島の放射能は健康に害を及ばさないということを、多くの人が納得できる形で、彼ら自身が証明するべきだ。そうすれば、風評被害などは起きるはずもないのだが、それができないから、こういう問題が起きているのだ。
    取りあえず、公開されている箇所からの引用を紹介しましたが、実際には、最後の段落(有料部分)に書かれていることに共感しているとだけ記しておきましょう

    「3Dプリンター拳銃製造事件」の容疑者による主張と、『美味しんぼ』(雁屋哲氏)による「福島の真実」という主張。そして、それに反論する人たちに反応を比べることは興味深いと思っています。例えば、前者は容疑者が逮捕されたことで留飲を下げられたが、後者は警察に逮捕されることはないため、作者や出版元を「リンチ」しようとする人が現れたのではないかとか、「非力な女性」と「風評被害で苦しむ福島」では、どちらの方が「マイノリティー憑依(ひょうい)」をしやすいかとか。さまざまな仮説を立てられるのですが、今回はテーマを「正しくない意見が間違った意見として理解されるとは限らない」に絞りたいと思います。

    ◆「正しくない意見」は「間違った意見」である

    最初に言葉の定義をしておきますが、「正しくない意見」と「間違った意見」は同じ意味であり、この言葉を使い分けることに意味はありません。

    さて、海燕氏は3Dプリンター拳銃製造事件について、「3Dプリンタを使えばだれでも銃を作れるよ」という意見と「でも、作ると捕まえるよ」という意見がセットになって広まった主張しています。また、岩崎夏海氏は「福島の放射能は健康に害を及ばさないということを、多くの人が納得できる形で」表明できれば、「風評被害などは起きるはずもない」と主張しています。こうした主張は本当でしょうか。

    ・インターネット上で「豆腐は白い」と書くとどうなるか(イケハヤ書店)
    http://www.ikedahayato.com/20140425/5683042.html

    上記は、インターネット上のコミュニケーションでしばしば発生する食い違いを指摘した記事ですが、これは、インターネットに限った問題ではないと思っています。たまたま、「インターネット上のコミュニケーション」は可視化されやすいため、こうした記事になっているのですが、こうした問題は顔と顔を合わせてのコミュニケーションでも発生します。明らかに「正しくない意見」であると指摘したにもかかわらず、「間違っていない意見」であると反論されることは、誰にでも経験があることかと思います。

    佐藤秀峰氏は「取材の責任は誰にあるのか?」(http://ch.nicovideo.jp/shuhosato/blomaga/ar533481)という記事において、編集者と次のようなやり取りがあったと記しています。少し長めになりますが、引用させていただきます。
    「副作用の描写について、製薬会社からクレームがきて大問題になっています。訴訟になる可能性もあります。そのレベルの話だと考えてください。だけど、副作用についてはごく稀に激しい副作用が出る患者もいるので、我々としては描写が事実に反するとは考えていません」

    トラブルの説明が続き、僕は呆然としながらも「要するに漫画のような副作用が出るのはレアケースで、一般的には考えにくい症状を描いてしまったんですか?」と質問しました。

    編集者からは「レアケースであっても、1件でもそのような事例があれば間違いとは言えない」との答え。

    「いや、ここでは一般論として抗がん剤の副作用を描いているんだから、薬品名を出しておいてレアケースを一般化するのはダメでしょう」と僕。

    「佐藤さんは”一般”と言いますが、そもそも”一般”とは何でしょう?抗がん剤を投与するという状況がすでに一般的な状況ではないわけですから、ここで”一般”を語っても意味はありませんよね?」と編集者。

    「えーと…、それは詭弁ですよ。ここではがん患者と抗がん剤についての一般論を言っているんだから、がん患者が一般じゃないから何でもアリという言い方が通るなら、本当に何でもアリじゃないですか」

    「佐藤さん、漫画っていうのは”何でもアリ”なんですよ。」ともう1人の編集者が口を挟みます。

    「そう言う話じゃなくて。副作用を調べてきましたって言って、薬の写真を渡されて、その通り描きますよね?ネームでも校了でも通って雑誌に掲載されて。今更レアケースですって、どうするんですか? 実名で薬を登場させている以上、実際にその薬を使っている患者さんや、これから使うことを検討している人もいるワケですよ。」

    「だから、問題にはなっていますが、問題じゃないということを製薬会社にはこれから説明していきます」

    「いや、問題ですって…」

    僕が何か言い返すと、その度に2人は顔を見合わせて、「お前、佐藤さんの言うこと分かる?」「さあ…」と謎の芝居を続け、論点はどんどんズレておかしな方向に向かっていきます。
    ……まるでコントか漫才ですね。もちろん、これは佐藤秀峰氏による説明であり、編集者側には別の主張もあるかと思うのですが……。いずれにせよ、論理的に説明すれば論理的に解釈されるという考えは、単なる理想論だということです。

    ◆最後に有料メルマガと絡めて

    私の言いたいことは、この記事のタイトル通り、「正しくない意見が間違った意見として理解されるとは限らない」なのですが、最後に、有料メルマガに絡めての結論を出しますと、「有料」というハードルを設けることは、配信者にとって心地が良いということです。

    ただし、佐藤秀峰氏が「取材の責任は誰にあるのか?」という記事で指摘した通り、約19万部しか発行されていない雑誌に掲載されている漫画に100万件を超えるコメントが寄せられる。これがインターネットの世界ということも覚えておく必要があるでしょう。

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