マル激!メールマガジン 2017年9月20日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第858回(2017年9月16日)
首都大水害への備えはできているか
ゲスト:土屋信行氏(公益財団法人リバーフロント研究所技術参与)
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東京が世界一災害に弱い都市であることをご存じだろうか。ミュンヘン再保険会社による世界各都市の自然災害危険度指数のランキングで、東京・横浜は他の都市を大きく引き離してダントツの1位にランクされている。
この自然災害危険度指数は、災害に見舞われるリスク(hazard)と脆弱性(vulnerability)と経済価値(exposed value)の3項目を掛け合わせた数値だが、実は東京はリスク、経済価値と並び、脆弱性でも最も高い都市のひとつにあげられている。内閣総理大臣を長とする中央防災会議が2010年に作成した「大規模水害対策に関する専門調査会報告」(副題 首都圏水没)によると、利根川が氾濫した場合、2600人の死者と110万人の孤立者が、荒川が氾濫した場合も2000人の死者と86万人の孤立者を出すことが予想されている。
東京都庁で災害対策に取り組んできた土屋信行氏は東京の防災対策、とりわけ水害対策はまったく不十分だと語る。東京の下町は過度な地下水の汲み上げによる地盤沈下がひどく、標高が海面以下の「ゼロメートル地帯」が広範に広がっている。しかも、東京の都心部には地下鉄や地下街、共同溝など地下に多くの水の通り道を作ってしまったため、東京湾や荒川の堤防が一か所でも決壊すれば、水は瞬く間に東京中に広がっていく。しかも、その地域は人口が密集しているため、すべての住民を避難させることは不可能だ。
地下鉄も水の侵入を防ぐ止水板がすべての駅に設置されていないため、どこか一か所でも堤防が決壊すれば、地下鉄の構内に水が流れ込み、より低い路線から満水となる。荒川の堤防が一か所決壊した場合、17路線、97駅が浸水することを中央防災会議は想定している。赤羽あたりで荒川が一か所でも決壊すれば、最も低い場所にある日比谷駅や銀座駅あたりから、大量の水が吹き出すことになるだろうと土屋氏は言う。
これまでも日本は多くの水害に見舞われてきた。毎年といってもいいほど、洪水による死者が出ている。にもかかわらず、われわれの水害に対する意識は低く、行政の対応も遅れがちだ。土屋氏は、地震は誰に起きてもおかしくない災害だが、水害は海沿いや川沿いの地域だけの問題だと思われていることが、水害対策を後手に回る結果を生んでいる一因だと指摘する。確かに、高台に住む人の多くは、水害とは直接は無縁かもしれない。しかし、水害によって発生する経済的損失が決して地震にも劣らないことは、ミュンヘン再保険会社のリスク計算を見ても明らかだ。
マル激トーク・オン・ディマンド 第855回(2017年8月26日)「異常気象を日常としないために」でお伝えしたように、東京や他の大都市では人為的な原因によるゲリラ豪雨が多発するようになっている。また、地球温暖化による台風の強大化も顕著になってきている。長期的には海面の上昇も避けられない。このまま水害対策を怠れば、時間の問題で東京が水没する大水害に見舞われることが避けられない。そしてそれは東京に限らず、大阪や名古屋など他の大都市にも共通した問題だと土屋氏は言う。
東京は大水害への備えができているのか。東京が抱える水害リスクとは何なのか。このまま水害対策を怠れば、どんな帰結が待ち受けているのか。日本の大都市が抱える水害リスクについて、土屋氏とジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・世界で圧倒的に自然災害リスクが高い大都市は、東京と横浜
・浸水すれば、地下鉄は全滅する?
・洪水の4類型と、先人たちの「作法」
・スーパー堤防の事業仕分けは、「命の仕分け」にほかならない
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■世界で圧倒的に自然災害リスクが高い大都市は、東京と横浜
神保: 今回は「洪水」の話をしたいと思います。少し前に気象がおかしいという話をしましたが(第855回マル激「異常気象を日常としないために」2017年8月26日)、大気の変動など大きな流れもあるものの、同時に人間が起こしている部分もあるということでした。今回はまさに、人間がいろいろとできることがあるのに、どうも手が尽くされていないのではないかと。「異常気象を日常としないために」で取り上げた豪雨などで洪水になったときに、非常にヤバイことになっているようです。
宮台: 気候変動で海水温が上がり、これから台風もますます大規模化していく。潮位も上がるということがあるので、従来、人間が作り出していた潜在的な危険が顕在化した、ということですね。
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