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中村聡宏氏:不祥事続きの今こそ考えたいスポーツ本来の存在意義
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中村聡宏氏:不祥事続きの今こそ考えたいスポーツ本来の存在意義

2018-06-13 23:00

    マル激!メールマガジン 2018年6月13日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第896回(2018年6月9日)
    不祥事続きの今こそ考えたいスポーツ本来の存在意義
    ゲスト:中村聡宏氏(千葉商科大学専任講師)
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     スポーツ界の不祥事が止まらない。
     日大アメリカン・フットボール部の選手による悪質な反則タックルは、大きな社会問題にまで発展した。思えば、柔道、相撲、カヌー、バドミントン、レスリング、水泳等々、スポーツ界では大きな問題を起こしていない競技を見つけるのが難しいと言っても過言ではないほど、不祥事が続いている。内容もセクハラからパワハラ、ドーピングや賭博など、深刻、かつ構造的なものが多い。
     なぜスポーツでこれほどまで不祥事が続くのか。スポーツマンシップ論やスポーツマネージメントが専門の千葉商科大学中村聡宏専任講師は、勝つことだけが重視され結果のみで判断される勝利至上主義が蔓延し、スポーツの本質的な価値が見失われていると指摘する。中村氏は、スポーツマンシップ指導者育成会を立ち上げた故広瀬一郎氏とスポーツマンシップの重要性を訴え続けてきた。その中村氏は、スポーツの大原則は自主的に取り組むことであり、義務、命令で行うものではないことを強調する。
     日大のアメリカンフットボール部で反則タックルをした選手は謝罪の記者会見で、大学で部活を続けるなかで「アメフトが好きでなくなった」という発言をしている。スポーツを楽しむ心を奪ってしまった指導者側の責任はとても大きいと中村氏は言う。
     スポーツは「運動を通して競争を楽しむ真剣な遊び」だと中村氏はいう。その際、ルール、相手、審判を尊重することが求められる。勝つことを追求するのは当然ではあるが、そのプロセスが重要だ。監督、コーチの命令に従う、言われた通りにこなす、あるいは忖度する、ことのみが求められている現状はないか。それでは、自主的な判断、リーダーシップはうまれない。スポーツ界の課題は、今の日本社会がかかえる問題と相似形にも見える。
     そもそもスポーツは、紳士を育成する場として、イギリスの「パブリックスクール」と呼ばれる名門私立高校で確立したものだ。そこではスポーツは勇気、自制心、決断力など、道徳や人格の形成に役立つものとして考えられてきた。翻って、日本では、明治時代に国民教育に必要なものとして導入された「知育」「徳育」と並ぶ、「体育」の領域をスポーツが担ってきた。日本のスポーツ文化には、富国強兵の一貫として優秀な兵隊を育成しようとしていた時代の考え方が、まだ色濃く残っているのではないだろうか。
     スポーツの真の価値はスポーツの精神、つまりスポーツマンシップにある、と中村氏は語る。レスリングの伊調馨選手は中村氏のインタビューに対して「負けたときのほうが、勝ったときに比べて学ぶことが多い」「だからこそ、女子レスリング全体のレベルが上がっている」と語ったという。優れたアスリートの言動は多くの人々の感動を呼ぶ。「新しいスポーツマンシップの教科書」(広瀬一郎著)には、スポーツマンシップとは、「自ら考え」「他者を尊重し」「勇気を持って」「誠実に行動する」精神のことだと書かれている。これはスポーツだけに限ったことではないのではないか。
     現在の日本のスポーツ界がつきつけられている様々な課題から、ビジネスとしてのスポーツのあり方まで、スポーツマネジメントスクールなどにもかかわってきた中村聡宏氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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    今週の論点
    ・勝利至上主義で見失われる、スポーツ本来の意義
    ・「スポーツマンシップ」はいかにして生まれたか
    ・スポーツとビジネスのパラドックス
    ・「スポーツマン」とは「グッドフェロー」である
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    ■勝利至上主義で見失われる、スポーツ本来の意義

    迫田: 今回は神保さんが海外で取材中ということで、迫田がお伝えします。テーマはスポーツです。アメリカンフットボールの定期戦で日大の選手が反則のタックルをして、相手チームの選手を負傷させた問題から1ヶ月が経過しましたが、相変わらずさまざまな形で報道されています。宮台さんはどうご覧になっていますか。

    宮台: まだ事実関係が十分に明らかになっていないところがあります。ただ、日本で起こる様々な不祥事の背後にあるのは――よく忖度と言われますが、それだけではなく、自分自身の組織内でのポジションを保つために忖度をしないでは済まないような、つまりプレッシャーのもとでの忖度があるんです。モリカケ問題の役人さんたちも、おそらくそうで間違いない。オウム真理教についても、尊師が必ずしも命令していなくても、かなり過激なことをやってしまう、という構造が語られましたが、もしかすると同じようなことがあったかもしれません。そのようなプレッシャーをかけていることを自覚していなかった指導者の責任は、極めて重いだろうと思います。ディスイズジャパン、と言えるような、カルチュラルなファクターが必ずあります。

    迫田: 今日はこのようなテーマで、ゲストに、スポーツマンシップの重要性をずっと主張してこられた、千葉商科大学専任講師の中村聡宏さんをお招きしました。中村さんは、日大アメフト部の危険タックル問題をどう見ておられましたか?

     
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