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筧裕介氏:人口減少社会をいかに豊かに「デザイン」していくか
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筧裕介氏:人口減少社会をいかに豊かに「デザイン」していくか

2024-08-21 20:00
    マル激!メールマガジン 2024年8月21日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1219回)
    人口減少社会をいかに豊かに「デザイン」していくか
    ゲスト:筧裕介氏(NPO法人issue+design代表、慶應義塾大学大学院特任教授)
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     岸田首相が唐突に総裁選不出馬を表明したことで、日本にも9月末には新しい政権が誕生することとなった。メディアはまるで競馬の予想でもするかのように次の総理探しに忙しいが、誰がなっても日本が大きく変わりそうもないことを国民は既に見透かしているのか、報道量の割には総裁選への関心は必ずしも高くないように見える。
     裏金に統一教会との癒着と深刻な政治スキャンダルが続き、日本は今、未曽有の政治不信のただ中にある。その一方で、「失われた30年」と呼ばれるほど、日本は過去30年にわたりほとんど経済成長ができず、あらゆる経済指標で先進国の最下位グループに沈んでいる。しかも、人口減少に拍車がかかるのをよそ目に、産業の効率化や生産性をあげるための産業構造改革もほとんど手つかずで、このままでは日本がますます貧乏になっていくことは避けられない。
     にもかかわらず、新しい総理候補の中で、ストレートにこうした問題に対応してくれそうな政治家が見当たらないとなれば、競馬予想程度の関心しか集まらないのは当然と言えば当然かもしれない。そもそも総理の首をすげ替えれば支持率が戻ると考えているとすれば、もはや自民党政治は終わっているとしか思えない。
     そもそもの問題は、現在の厳しい政治、経済、社会状況の下で市民一人ひとりが豊かさや幸福を守っていくためには、日本はどうすればいいのかという具体的なデザインが示されていないことだ。豊かな未来像がイメージできなければ、期待の持ちようがない。
     ソーシャルデザインが専門でNPO法人issue+designの代表を務める筧裕介氏は、自身が各地で行ってきた町おこし・村おこしプロジェクトの経験から、国レベルで何かを変えようとすると大変だが、より小さなユニットであれば変革は十分に可能だと語る。実際、筧氏のNPOはこれまで高知県佐川町や岐阜県御嵩町、和歌山県新宮市など、主に過疎化が進む20の中山間地で村おこしのプロジェクトを実施してきた。
     筧氏の下に持ち込まれる住民や首長からの依頼は多岐に渡るが、例えば人口減少を食い止めたいという相談があれば、若者がその町や村に居続けたいと思えるような仕事や人間関係や文化を再発見したり再構築するなどを、住民からのボトムアップ方式で実現してきたという。また、雇用と同時にかつては豊かだった人間関係をいかに再構築するかも、町や村の再興にとっては重要になると筧氏は語る。
     元々広告代理店の博報堂でデザインの仕事をしていた筧氏は、ソーシャルデザインやコミュニティデザインを考える上で「デザイン」が需要なキーワードとなると言う。元々「デザイン」は日本語では「意匠」と訳されており、外形的なものを指していたが、今は一般的には「設計」という意味で使われている。
     しかし筧氏はもう少し狭い意味でデザインを定義しており、それは「人の共感を生んで人の心を変える美しさと楽しさを伴う行為」のことだという。どんなに自分たちに影響があることでも、つまらなければ人は興味を持つことができない。逆に、人の共感を呼ぶことができれば、行動も変わっていくという。
     日本を変えていくためには、日本の将来のデザインが多くの日本人の間で共有される必要があり、そのためにはまず人々の共感を生みやすい身近なところのデザインから取り組む必要がある。人口の少ない町に力のある首長が登場し、若者が入って行動すれば、その町や村が劇的に変わることを何度も目の当たりにしてきたと言う筧氏は、遠回りなようでも、自ら政治に関わりたいと思える人を増やすことから始めるしかないと語る。
     なぜ日本には将来のデザインが見えないのか。日本の未来像をデザインできる政治家はいるのか。人口減少局面にある日本の未来をどうデザインしていけば、多くの日本人が豊かさや幸福さを失わない社会を作っていけるのかなどについて、デザイナーの筧裕介氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・底が知れている総裁選、変わる可能性を秘めた地方自治体
    ・地域復興の動機は人の繋がりの中から生まれる
    ・デザインとは美しさと楽しさで人の心を変えること
    ・身近な社会をいかに豊かにデザインしていくか
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    ■ 底が知れている総裁選、変わる可能性を秘めた地方自治体
    神保: 今週はお盆の週で比較的ゆっくりなのかと思いきや、8月14日に日本の総理大臣が突然思いついたように退陣表明をしました。正確には、NHKが退陣の意向を抜いてしまったので慌てて会見をしなければならなくなったということなので、実際にこのタイミングで発表したかったのかどうかは分かりません。
    端的に言えば、日本の総理大臣が9月末で変わるということです。アメリカの大統領選挙が11月にあるので、日本の総理大臣はそれよりも早く変わることが決まりました。アメリカはカマラ・ハリスが大統領になるかトランプが大統領になるかで政策的に大きな変化があります。

    宮台: 天下分け目の決戦になるということですよね。ただ日本の総裁は、どう変わろうが天下分け目の決戦にはなり得ないので、お祭りにもなり得ません。

    神保: 何の分け目なのかも分かりませんよね。

    宮台: テレビの露出頻度もアメリカ大統領選挙についての情報が圧倒的に多いという状況です。

    神保: 政治部の人たちは、誰が誰と会ったとか、誰が誰と密談しているといった政局しか取り上げません。結局、誰が総理大臣になっても政策も路線も何も変わらないのなら、国民は興味を持ちませんよね。 
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