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第176号 2016.5.3発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…熊本地震の発生から半月。震災パニックにかられ「不謹慎狩り」にうつつを抜かしていた連中も、今ごろはすっかり熱が冷めて、自分がさらした醜態も「なかったこと」のようにしてしまいGWを楽しんでいる。しかし、本気で震災について考えていれば、今こそ考えておかねばならないことがある。善意のつもりが「第二の津波」となることがある支援物資。非常時に備えて普段から採っておくべき対策とは?
※「ザ・神様!」…モクレンヒメが住むアパートの近所に生息する厄介な生物は、重度のアル中で生活保護受給者の“となりのアヅマさん”だけではなかった!突如出現した“大天使ミエテル”!!アヅマさんに加え、大天使ミエテル、さらに警官と大家さんも巻き込んだ大騒動が勃発!!どうなる!?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!ハリセンボンの近藤春菜の顔に似ていると思う人は誰が思い浮かぶ?「ユーチューバー」になりたい子供が急増している件をどう思う?文章を書く上で気をつけていることは?女優・有村架純に演じさせたいキャラは?女性専用車輌は本当に必要?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第170回「第二の津波に対処するシステムの構築を」
2. しゃべらせてクリ!・第136回「雲より高い鯉のぼりで一騎打ちぶぁ~い!の巻〈後編〉」
3. もくれんの「ザ・神様!」・第80回「ミエテルの偽証と濡れ衣~となりのおじさん孤独死事件4」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記




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第170回「第二の津波に対処するシステムの構築を」

 熊本地震の発生から半月が過ぎた。
 震災パニックにかられて、全く無意味であるばかりではなく、社会の迷惑とでも言うべき「不謹慎狩り」にうつつを抜かしていた連中も、今ごろはすっかり熱が冷めて、自分がうろたえて醜態をさらしていたことなどすっかり「なかったこと」のようにしてしまい、ついでに被災地のことも忘れてゴールデンウィークを楽しんでいる最中といったところだろう。
 だが、本気で震災について考えていれば、今こそ言っておかねばならないことがある。

 4月20日、熊本地震の現地対策本部長として派遣された松本文明・内閣府副大臣が、わずか6日間で本部長職をクビになるという失態を演じた。
 松本は被災地入りした翌日、政府とのテレビ会議の場で「食べるものがないので戦えない。バナナでもおにぎりでも、差し入れを近くの先生からお願いできないか」と河野太郎防災担当相に懇願。
 被災地の窮状を後回しにして、我先に「腹が減ったから戦えない」と大臣に泣き言を言う有様に、さすがにこれでは使い物にならないと判断され、事実上の更迭となったのだ。
 解任された日の夜、東京に呼び戻された松本は、記者団相手に弁明だか何だか、よく分からない発言を繰り返した。
「現地での食事はみなコンビニで弁当を買っているというので、自分の分を1万円渡したが、本震で1軒も開かなくなった。だからテレビ会議で大臣にコンビニを開けさせてくださいと頼んだ」
「私の部下がカップラーメンを持ってきたが、お湯が出ないので食べられないとも(大臣には)言った」
「開いている店を見つけ、どら焼きを1万円出して買ってみんなで食べた」
 ……被災地はどこも大変な状態で、おにぎり一つ食べられない人がたくさんいる最中であり、それをどうにかするために「現地対策本部長」として派遣されたはずなのに、その人物が、自分や自分の周りについてだけ「腹が減ってたまらないから、何とかしてくれ」と、大臣に対して繰り返し泣きついたのである。

 これはあまりにもひどすぎる安倍内閣の大失策で、しっかり追及しなければならないということは強調しておくが、松本文明が言ったことは、被災地のリアルな状態を知る見本にはなる。
 発災後の最初の段階では、このように被災地に水や物資が届かないという事態が起こるものだ。
 だがそれは、物資を送っていないからではない。物資があるのに、それを現地に送れないというのが最大の問題なのだ。
 被災直後、どうしても最初に必要な物資は水と食糧だ。これがなかったら誰も動けない。その重要度は、はっきり言って生理用品なんかの比ではないのである。

 こんな時に、被災地から遠く離れた場所から「あれ送れ」「これ送れ」なんて言っても何の意味もない。
 政府は「プッシュ型支援」として、トップダウンで被災地に物資をどんどん送り付けている。だが、それを末端の被災地まで運び込むシステムがないのが一番の問題なのだ。
 政府は災害に備えてあらかじめ、交通網遮断などの事態があっても物資を届けることのできるシステムを作っておかなければならなかった。