72fb1ce34d59e15889f7d5df6d4dc68b237d894c
第344号 2020.2.5発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…「人権尊重」「差別反対」といった価値観は、いついかなる場合も死守しなければならないような、絶対的価値であるとは限らない。それくらいの認識は、大人だったら持っておくべきである。中国湖北省の武漢市で発生した新型コロナウイルスは、ついにWHOが緊急事態宣言を行うまでに至った。この期に及んでも、中国人観光客が新型コロナウイルスを運んでくることを警戒するのは「ヘイト」になるとリベラル左翼は主張するが、とんだお花畑脳である!!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…昨年末に発表された各国の男女格差を比較する「ジェンダー・ギャップ指数」、日本は比較対象の153か国中121位。特に政治分野での順位は144位で、ワースト10入りである。1月31日(金曜)放送の『朝まで生テレビ』では「男女格差」をテーマに、各政党の女性議員、そして国際政治学者・三浦瑠麗、テレビ朝日報道局経済部長・藤川みな代、産経新聞論説委員長・乾正人、米国人タレントの「パックン」ことパトリック・ハーランというメンバーで議論が行われた。女性議員を主とした議論で見えてきたこととは?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!選択的夫婦別姓の必要性って何?「不倫は社会的に抹殺しろ」という空気が強くなっている理由は?「慰安婦」の表紙のよしりん少女像の実寸は?なぜ、強姦と言う言葉を使わないで、レイプという言葉を使うの?『男はつらいよ』のどんな点に魅力を感じている?永久脱毛って必要?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第359回「リベラル左翼の人権真理教は通用しない」
2. しゃべらせてクリ!・第301回「ばぶぶぅ… ぽっくん赤ちゃんのやり直しぶぁい!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第154回「『朝まで生テレビ』に集合した女性議員たち」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




5af61e63bec5ab78dc93d2f134fb65867f10c3a3

第359回「リベラル左翼の人権真理教は通用しない」

「人権尊重」「差別反対」といった価値観は、いついかなる場合も死守しなければならないような、絶対的価値であるとは限らない。
 それくらいの認識は、大人だったら持っておくべきじゃないか?

 わしが毎日書いているブログのうち、政治・社会や芸能・文化などに関するものは、LINEが運営するニュースサイト「BLOGOS」に転載されている。
 BLOGOSは1300人以上の執筆者のブログを紹介し、通信社などのメディアの記事も掲載している。わしのブログも頻繁に紹介され、閲覧数や支持数のランキング1位になることも度々あって、特に世の中に広めたい意見があるときには役に立っている。
 ところが先週、これこそは世の中に広く訴えなければならないと思って書いたブログが掲載されず、完全に無視されるという事態が起きた。
 そのブログは、1月29日の『日本は中国人旅行者を入国禁止にすべきでは?』である。

 中国湖北省の武漢市で発生した新型コロナウイルスは、ついにWHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を行うまでに至った。
 武漢で最初の新型コロナウイルス感染者が発見されたのは、昨年12月8日とされる。
 ところが当初、中国当局は情報を隠蔽。
 12月30日に内部報告の公文書がネットに流出、今年1月1日に中国メディアが流出文書は本物であると報道し、これでようやく事態が明るみに出て、同日ウイルスの発生源と見られる武漢市の海鮮市場が閉鎖された。
 かつてホンダの創業者・本田宗一郎は訪中後に「中華料理は何でも食材にする。4本足なら机以外は」と言ったそうだが、この市場では豚、鶏、ヒツジはもちろん、犬、タケネズミ、キツネ、ヤマアラシ、アナグマ、ラクダ、ヘビ、ワニ、コアラから絶滅危惧種のセンザンコウ(もちろん密漁品)までが生きたまま置かれ、それらの動物の肉や加工品など約150品目が売られており、感染源はここで売られていたコウモリだった可能性が高い。
 だが最初の感染者が発見されてから1か月近くもの間、事態は隠蔽され、ウイルスは無防備に拡散され続けていた。
 そして日本では今年1月6日、武漢からの帰国者に初の感染が確認された。

 ところがその後も中国政府の対応は後手もいいところで、習近平主席が「感染の蔓延を断固阻止」と表明したのが1月20日、武漢市の封鎖を命じたのは23日だった。
 中国は1月24日から30日までが春節の休暇だが、実際にはこの1週間だけではなく、この期間を挟んだ前後40日間にわたって、延べ30億人が旅行やレジャーで国内外に大移動を行う。そのため、中国政府の対応が後手に回っている間に、もう春節の大移動は始まってしまっていた。
 そして武漢市では封鎖が行われる前に、市民1100万人のうち、なんと500万人が市外に脱出していた!
 その500万人のうち7割が湖北省内の地方に行き、6万人以上が北京へ、5万人以上が上海、広州、成都へ、7000人以上が香港、6100人以上がマカオへ移動したという。また、台湾にも桃園、高雄、松山空港経由で7500人以上が入っている。
 さらには、バンコクに2万558人、シンガポール・チャンギに1万680人、そして東京・成田には9080人!
 なんと武漢から9080人もが成田経由で日本各地に入っていた。そして、武漢からの団体観光客を乗せたツアーバスの運転手とガイドが新型コロナウイルスに感染してしまったのである。

 そんなニュースがようやく報道され始めた頃に、わしは大阪に行った。
 ちょうど春節の真っ最中で、ホテルのロビーに入ったとたん中国語が飛び交っていて、マスクをつけた中国人の旅行客ばかりが目立ち、日本人は自分しかいないのではないかと思うほどで、びっくりしてしまった。
 フロントに並んでも、エレベーターに乗っても、レストランに入っても、中国人の団体客に取り巻かれてしまうので、恐怖だった。
 新型コロナウイルスは飛沫感染だから、エレベーターのボタンなどに唾液などの飛沫が付着し、それに触れた手から感染することもありうる。とにかく日本に来ている以上、接触は避けられず、リスクはあるのだ。
 それなのにマスクをつけているのは中国人ばかりで、日本人はつけていなかった。実際にはマスクには予防効果はあまりなく、自分の飛沫を外に広げないためのエチケットの意味合いが大きいそうだが、わしはその光景を見て、日本人の危機意識の不足を感じた。

 中国政府は1月27日以降、海外への団体旅行を禁止した。ただし個人旅行は禁止していない。そして日本は中国からの観光客を受け入れ続けている。