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第485号 2023.11.7発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…日本保守党ができてから、ずっと疑問に思っていたことがある。これ、参政党となにが違うの?どちらも「日本古来の伝統と文化」「国体護持」という言葉を強く打ち出しており、「神武天皇以来、男系で継承されてきた万世一系の皇統を守る」というフレーズが大好きで、「旧宮家の皇籍復帰」「宮家と旧宮家の養子縁組」を主張。どちらも「自主防衛」を目指し、「自虐史観からの脱却」を主張。さらにどちらも「消費税減税」で、その上「LGBT法に反対」「スパイ防止法の制定推進」だ。ぜんぶ同じ!どこか違う点があるのだろうか?
そして今回は、参政党支持者を中心とした反ワクチン活動を続ける人々のなかで、盛んに話題になっている「パンデミック条約でワクチン接種を強制される」「WHOに国家の主権を奪われる」などの警告についても調べてみた!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…クリエイターに対して「自分のアイデアを盗用した」と言い出す素人が増えていることをどう思う?ネットの陰謀論を信じている人に「真実」を伝えるにはどうすれば良い?人の美しさのピークは何歳くらいだと思う?超多忙なのに、どうして最近の流行にも敏感にアンテナを張っていられるの?原作付きアニメに対して「原作通りもしくは原作者完全監修のアニメ化のみ希望」というファンが多いけど、先生は自身の作品のアニメ化はアニメスタッフによる完全アニオリ展開の自由も認める?政治と宗教は少年漫画のタブーというのは本当?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第514回「マスコミの〈検証〉」
2. しゃべらせてクリ!・第441回「キャンセルに負けるな!アイドルは不滅ぶぁ~い!の巻【後編】」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第308回「参政党と日本保守党、ネットの自称保守を分析してみた」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第514回「マスコミの〈検証〉」

 そろそろジャニーズ問題に関する報道が減少してきたが、わしは、これは日本人の危うさが満載の重要案件だと思っているので、「SPA!」の「日本人論」で連載を続けて、単行本で出すつもりだ。
 BBC報道からわずか4か月で、ジャニーズを誇りにしていた連中が、続々被害者として名乗り出て、半年足らずでジャニー喜多川とジャニーズ事務所をキャンセル(消滅)させてしまうという異常事態を、どのように分析し総括するかは日本にとって極めて重大な問題なのだ。
「人権VS文化」の構図は、歴史に裏付けられた芳醇な文化と、天皇制を持つ日本人が了解しておかねばならない。
 そして報道が下火になってきたタイミングで、各メディアでは「検証ブーム」が始まった。
 これまでジャニー喜多川の「少年愛」の「噂」を知っていながらスルーしていたくせに、このあたりで検証ゴッコをして、反省しているふりだけ見せてお茶を濁そうというわけだ。
 その一例として、「AERA」10月3日号に載った編集長・木村恵子による『本誌はなぜ沈黙してしまったのか AERAとジャニーズ事務所の関係を振り返る』と題するザンゲ記事を見てみよう。
 この記事、本論に入る前に、まず編集長のレベルの低さに呆れた。
 なにしろ、冒頭からこう書くのだ。

「故・ジャニー喜多川氏による性加害問題では、未成年の子どもたちを含む数百人が被害に遭うという未曽有の犯罪が半世紀以上にわたり放置されてきました。」

 ジャニー喜多川の行為を「未曽有の犯罪」と言い切っている。しかも続けてすぐその後に「絶対権力を持つ立場にある性犯罪者」とまで決めつけている。
 既にライジングVol.482で詳述したが、ジャニー喜多川は犯罪者ではない。
 ジャニー喜多川は一件の刑事告訴もされていない。裁判で有罪判決を受けていないどころか、刑事事件として起訴すらされていないのだから、「犯罪」とも「犯罪者」とも言えないのだ。少なくとも、法治主義に則るのであれば。
 本当はマスコミもそのことはわかっているはずで、だからこそジャニー喜多川の行為については必ず「性加害」と記述し、「性犯罪」とは書かなかった。姑息ではあるが、一応は区別して言葉を変えていたのだ。
 普通なら、編集長は部下が「性犯罪」と書いた原稿を出した時に、それを注意して「性加害」に書き換えるのが役目であるはずなのに、それが自ら率先して混同しているのだ。

 AERAは長らくジャニーズ事務所と絶縁状態だった。1997年にジャニー喜多川の独占取材をした際に「書かないという前提で聞いた内容を書いた」ことが発端で関係がこじれ、記者会見も出禁になっていたという。
 しかし、SMAPや嵐などが大人気になるにつれ、ジャニーズタレントを表紙や記事に使いたいと考えるようになり、和解を模索、その結果2013年に取材が解禁となり、2013年4月15日号の櫻井翔を皮切りに、AERAの表紙をジャニーズタレントが飾り始めた。その回数は2022年度にはなんと18回、3号に1号以上はジャニタレの表紙という状態にまでなっていた。

 この件について、前編集長は「ジャニ―ズ事務所のタレントを表紙に起用すると販売が見込めて製作部数が増やせる。部数減を何とかしたい、そして新たな読者層にAERAを知ってもらいたい、という思いから」だったと語っている。
 また、現編集長も全く同様に、「紙の雑誌の売れ行きが厳しくなっていくに従って、依存度が高まっていったのは問違いありません」という。
 この辺りの事情はAERAに限った話ではなく、どこのメディアも全く同じである。どの雑誌でもジャニタレを使えば部数が伸びるから起用していた。同様にテレビ局なら番組の視聴率が上がるから、企業ならCM効果が高いからジャニタレばかり起用していたわけだ。
 他の芸能事務所にそんな人気のあるタレントが大勢いたなら、その事務所のタレントばかり使われていただろう。それだけの話である。

 だから、ジャニーズ事務所がマスコミにはっきり圧力をかけたというような事例が出てくることはない。
 AERAの場合は、数年前までジャニーズを退所したタレントも表紙やインタビュー記事に起用していたが、近年はそれがなくなっていたそうで、それは「事務所から不満を示されたこともあり、問題になるよりは掲載を控えようという意識が働くようになっていきました」という事情だったという。また、社内全体にも「他部署も含めお世話になっているので、なるべくハレーションを起こさないように」という意見があったという。
 結局は「忖度」だったわけだ。

 視聴率や売り上げが確実に上がるから人気タレントを起用するとか、人気タレントを使えなくなるのを恐れて事務所に忖度するとか、そういうのは商業主義ならば普通のことだ。
 それを「反省」するとか言って、今になってジャニタレをボイコットしているマスコミや企業は、それならば今後は「売れるタレントは使わない」という結論に達するのだろうか?
 そんなことは決してありえない。売れるタレントを使えるのならば、使うのは当たり前だし、そのタレントを使うために事務所に忖度することだって、今後も起こるだろう。
 ここで本当に反省したというのなら、「商業主義をやめる」という選択をするしかないのだが、もちろんそんなわけはない。だったら何が悪かったと思っているのか、全くわからないのである。