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第81号 2014.4.8発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…強引に憲法の解釈変更によって、集団的自衛権の行使容認へと急ぐ安倍政権。果たして「限定的」な集団的自衛権などあり得るのか?そもそも「個別的自衛権」と何が違うのか?現状のまま集団的自衛権の行使容認となれば、日本はどうなってしまうのか?今、日本国民は、覚悟なきまま恐るべき事態に突き進もうとしている…!!
※隠れた名作を紹介している「よしりん漫画宝庫」!今回は大ヒット作品『おぼっちゃまくん』前夜の2作品を紹介!全盛期のアントニオ猪木をモデルにした、ひたすら熱く暴走しまくるキャラと、バブル時代の世相への反発を元に誕生したシチュエーション・ギャグの登場!
※『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて、一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてくり!」桜前線北上中、学校の花壇も花盛り…微笑みを浮かべながら手入れをする貧ぼっちゃまでしゅが、ただそりだけじゃなさそうでしゅ!何をやっとるとでしゅか~!?

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【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第82回「集団的自衛権に『限定的』はない!」
2. しゃべらせてクリ!・第42回「春爛漫!貧ぼっちゃま花壇の巻〈後編〉」
3. よしりん漫画宝庫・第64回「『炎のカンちゃん』&『お祭り珍太』おぼっちゃまくん前夜の2作品」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記




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第82回「集団的自衛権に『限定的』はない!」

 安倍政権は強引に憲法の解釈変更によって、集団的自衛権の行使容認へと突き進もうとしている。
 これには自民党内にも反対意見があったため、政府は「必要最小限度に限る」という形で妥協を図ってきた。
日本近隣の有事」「機雷掃海」「対米支援」の3事例に限り「日本の安全に深刻な影響を及ぼす事態」に該当するとして、限定的に行使を容認するというのがその妥協案である。

 わしはかつて『ゴーマニズム宣言』で集団的自衛権の行使も容認していたことがある。アフガンでの対テロ戦争の頃だ。
 だがその趣旨は米国と一体化する集団的自衛権ではなく、日本が独自の大義を掲げて米国をサポートするなら、個別的自衛権で給油艦を出す無理を押し通すより、集団的自衛権を行使して自衛隊を派遣する方が理に適うと考えたからである。

 カナダ・ドイツなどのアメリカの同盟国でも、イラク戦争は反対を唱え、参戦しなかった。
 本来、同盟国でも米国の戦争には自動参戦するわけではないのである。
 ドイツのように、集団的自衛権が行使できても、イラク戦争のようなケースでは参戦しないという選択ができるならいい。
 だが、日本は個別的自衛権しか憲法上、許されていないにも関わらず、侵略戦争の末席に名を連ねるほど主体性がないのだ。
 その結果がオランダ軍に守られて給水活動をする自衛隊になったり、これは憲法違反ではないかと思うのだが、空自の輸送機が米兵や物資の輸送を秘かに行うということまでしていたのである。
 それほど日本は従米ポチなのだ。

 そのような事例も踏まえて言うが、日本が集団的自衛権を「限定的」に行使容認するなんてことはあり得ない。詭弁なのだ。
 だが自民党内の反対派議員は、この詭弁にすぐに騙されてしまい、ハト派の重鎮である古賀誠元幹事長も「限定的であれば容認はやむを得ない」と理解を示してしまった。
 古賀氏は必要最小限度の範囲を精査し、適用範囲をできる限り絞ることも求めたが、無理だろう。「必要最小限度」の適用範囲がなし崩し的に拡大されてしまうのは当然のことだ。
 アフガン・イラク戦争のときのように、米大統領が「敵か、友か?」と二者択一を迫れば、恐怖にすくんで地球の裏側まで従うのが日本政府なのだ。

 あとは連立を組む公明党との協議だが、今のところ、公明党は慎重な姿勢を示しているようだ。
 公明党は、その3つの限定条件なら、個別的自衛権の周辺事態法を改正すればできるのではないかと主張している。
 現憲法下でやれることは、そのくらいが限度だろう。

 政府が公明党の説得のために出した「限定容認論」に関しては、石破茂幹事長が5日のテレビ東京で、集団的自衛権行使を容認した際の自衛隊の活動範囲を限定すべきではないとし、地球の裏側まで行くことも完全には排除しないと本音を語ってしまった。
 やっぱりなという話である。


 自国の安全を守ることだけが目的であれば、個別的自衛権の範囲内の話なのだ。
 いや、元海上幕僚長の古庄幸一氏によると(朝日新聞2014・4・1)、その個別的自衛権すら十分な法整備がされておらず、実際に外国から武力攻撃を受けても、自衛権をすぐに行使できる状態にはないと言う。
 中国が尖閣諸島に上陸しても、日本側は警察権の対象になり、海自が動けないと言うのだ。
 これは自衛隊の任務規定に欧米の「舞台行動基準(ROE)」のような細かいルールを明示してないからであり、そのような自力で国を守る法整備もないままに、「政府はなぜ、自国が攻撃されていない際の集団的自衛権に飛び越えてしまうのか」というのが古庄氏の主張だ。
 わしの持論である「自主防衛」の理念にはほど遠いままに、いきなり米国に抱きつこうという集団的自衛権など、認められるわけがない。

 そもそも、「集団的自衛権」とは、