第97号 2014.8.19発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』」、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…日本のゴジラの概念を完全に理解し、オリジナル作品に十分なオマージュを捧げた上で作り上げられた今回のハリウッド版『ゴジラ』。しかし日本には、この『ゴジラ』を酷評する者がいる。曰く「本来のゴジラは南方で死んだ兵士を悼んでいた」「安倍政権が行った集団的自衛権の行使容認をアメリカ側が歓迎し、祝福する映画」「あんなのは本当のゴジラじゃない」等々…。果たして、今回のハリウッド版『GODZILLA』はなぜ「快挙」と言えるのか?そしてゴジラの最大の価値観とは何か!?
※「ザ・神様!」…ブスを差別したがために、未来永劫の天皇までそのお命を短く儚いものとしてしまった、天孫ニニギノミコト。そうまでしてコノハナノサクヤビメと夫婦になったものの、ニニギの受難はまだ続く…!!新婚の二人に訪れた、さらなるとんでもない事件とは!?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!女子高生の制服のスカートはナゼにあれほど短いのか?現在の日本、『戦争論』の意図通りになった?ロビン・ウィリアムズの映画では何が好き?萌え絵を使った抱き枕がある!?ゾンビ映画で好きな作品は?石ノ森章太郎に憧れた先生にとって傑作、もしくは憧れるきっかけとなった作品は何?セクシー感あふれる大人になるには?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第97回「ゴジラの日本的価値観とは?」
2. しゃべらせてクリ!・第57回「ベタでも海ではスイカ割りぶぁい!の巻〈前編〉」
3. もくれんの「ザ・神様!」・第39回「えっ、一回だけなのに!? ~激情妻・コノハナノサクヤビメ」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記
第97回「ゴジラの日本的価値観とは?」 現在公開中のハリウッド版『ゴジラ』は、快挙である!
ハリウッドでゴジラ映画が製作されたのは2回目だが、前作1998年のローランド・エメリッヒ監督作品はゴジラとは名ばかりの「巨大イグアナ」の群れが暴れ回り、倒されるという映画で、大不評に終わった。
この時は、やはり日本ならではのゴジラの概念は、アメリカ人には理解できないのかと思ったものである。
ところが今回のギャレス・エドワーズ監督は、日本のゴジラの概念を完全に理解し、オリジナルの作品に十分なオマージュを捧げた上で新たな作品を作り上げ、これが全米で受け入れられて大ヒットしたのだ。
これは、日本人の「ゴジラ」に込めた文化概念がアメリカ人の感性を侵略したことに他ならず、日本のアメリカへの文化侵略がまた一つ達成された瞬間を我々は目撃したことになる。
ところが、日本にはこのハリウッド版『ゴジラ』を酷評する者がいる。例えば東京新聞8月13日付のコラム「大波小波」は、「実際に見て驚いた。悪い冗談としか思えない」とまで書いている。このコラムはこう言う。
本来の日本の『ゴジラ』は、南方で死んだ兵士を悼み、核兵器の脅威を訴えるメッセージを持っていた。日本の映画人よ、一刻も早く本道に戻り、3・11以降の日本人の魂を鎮めてくれる『ゴジラ』を撮りあげてほしい。
本来のゴジラは南方で死んだ兵士を悼んでいた???
ゴジラ映画はわしも小学生の頃から見てきたが、そんなふうに思ったことは一度もない。
今回のライジングは我がスタッフである「怪獣オタク」の時浦の知識を得て、執筆している。
ゴジラが南方で死んだ兵士を悼んでいるというのは、実は評論家の川本三郎が言い始めた意見だそうだ。
川本は『ゴジラはなぜ「暗い」のか』と題したエッセイでこう書いた。
戦争で死んでいった者たちがいままだ海の底で日本天皇制の呪縛のなかにいる……。ゴジラはついに皇居だけは破壊できない。これをゴジラの思想的不徹底と批判する者は、天皇制の「暗い」呪縛力を知らぬ者でしかないだろう。
わしにはイデオロギーの色眼鏡を通した無理すぎる深読みとしか思えないが、この説は民俗学者の赤坂憲雄が『ゴジラは、なぜ皇居を踏めないか?』という論考でさらに発展させ、怪獣マニアの一部に強い影響を与えた。
実際、2001年の金子修介監督作品『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』ではゴジラを「戦争で亡くなった人々の怨念の集合体」として描いている。ただしそれはこの一作のみの設定で、これは決して「本来のゴジラ」ではなく、むしろ例外的なものである。
第一作『ゴジラ』の製作者たちの話を見ても、ゴジラを戦没者の魂を悼む存在とする意図など全く出てこない。
だが一方で、反核のメッセージは明確に語っている。何しろ映画の企画が始まったのが第五福竜丸事件の直後だったこともあるし、監督の本多猪四郎は個人の体験からこのようなことをよく語っていた。
原爆……僕が帰ってくる時にね、丁度、いよいよ負けて軍隊引き揚げて帰ってくる時に、広島を通ったんですよね。その時にね、70年間は絶対に此処には草1本生えないということを言われたでしょ。そういうものがやっぱり、気持ちの中にあるんですよね。原爆という物に関する憎しみみたいなものって言うか、こういう物作って、こんな物を次から次にやってたら、えらいことじゃないかという、そういう気持ちが、演出家としてね、あの『ゴジラ』を動かすのに……一つの迷いも出て来なかったわけですよ。
海底で眠っていたジュラ紀の生物・ゴジラが水爆実験によって目を覚ます。完成した映画ではどこの国の水爆実験かは明確にされていないが、香山滋の原作ではゴジラは明確にビキニ環礁からやってきたことになっている。
だが、アメリカの核兵器への怒り、憎しみを表すのなら、なぜゴジラはアメリカを襲わず、よりによって唯一の被爆国である日本を襲うのだろうか?
これでは加害者を明確にしない広島平和祈念公園の「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」の碑文と同じ「自虐史観」ではないのか?という疑問も湧く。
しかし考えてみれば、ゴジラにとっては、自分を起こした水爆実験をやったのがアメリカ人か日本人かなんてことは、わかるはずがないのだ。
自然界から見れば、環境を破壊しまくる核実験を繰り返す「人間」の存在そのものに怒りが湧くはずで、そこにアメリカ人だの日本人だのという区別はないだろう。
そう、既に多くの人が指摘していることであるが、ゴジラの本質とは、荒ぶる自然の神の象徴なのだ。
自然災害は相手を選ばずに襲い来る、理不尽なものである。そう思えば、核兵器に対する怒りを表しながら、被爆国・日本が破壊されるという理不尽にも説明がつくわけで、一作目の『ゴジラ』はかなり優れた文明批評を含んだ映画だったのである。
日本人にとって自然は畏怖すべきものであるが、欧米人にとって自然は征服すべきものである。エメリッヒ監督版では欧米人の自然観を捨てられなかったためにゴジラが「巨大イグアナ」になり、人間に退治されてしまった。
だが今回、イギリス人のエドワーズ監督は、はっきりこう語っている。
コメント
コメントを書く『ゴジラ』(日米合わせて)にはこれほどまでに我田引水の珍説が多いと改めて知りました。
私が本棚から引っ張り出した「怪獣学・入門!」こそが「ゴジラは、なぜ皇居を踏めないか?」という論考の出典でありました。「確かにそうかもしれんが、深読みやな」という印象が確固たるものになりました。ましてや「兵士を悼む」「天皇制の呪縛」は全く何度見ても読み取れません。
みうらじゅんさんの「久々にゴジラに成り切って大暴れしたくなった。真の怪獣映画とはそんな衝動に駆りたててくれるものなり」という惹句は、簡潔ながらも的を射た批評だと思います。怪獣に関しては愛情と蓄積のあるみうらさんなので尚更です。
石ノ森章太郎先生は上京した年に『ゴジラ』を見てびっくりしたといいます。事実、自身の日本映画ベストテンに挙げておられます。時を経て、よしりん先生は『GODZILLA』に感銘を受けた……。何かの因縁、とするのはこれこそ深読みなのでしょうか。
自分はゴジラがひたすら米国で暴れまくるのを
想像してたせいか『GODZILLA』を観たときは
ムートーばかりクローズアップされててゴジラの
出番が少ないとイマイチな評価をしてましたが、
よしりん先生の解説と批評を読んで、もしこれが
日本の第一作のような作品だったら自然は征服できると
考える欧米人の文化・価値観を踏襲した内容になって
日本の文化・価値観が否定されていただろうと、
自分が狭い視点で観ていたことに気づきました。
そんな視野の狭い自分でも東京新聞やWillの花田編集長ら
マスコミ、評論家の難癖な評価には呆れました。
普段から国際評価を気にしてるんだから日本の文化概念が
込められた映画が欧米でヒットしたことを素直に喜べば
いいのに、散々酷い言葉を並べた挙句にありもしない
メッセージを捏造して批判するとか正気の沙汰とは思えません。
マスコミや評論家の類は自分のイデオロギーに合致した
プロパガンダ作品しか評価しないんでしょうか。
こんなことだとよしりん先生の予言が当たってしまいかねません。
これまでにも「ザ・神様!」にはアマテラスは別としてたくましい
女神が沢山登場しましたが、コノハナサクヤビメはその最たるものでは
ないでしょうか。自分の身の潔白を証明するために、赤ん坊にとっては
迷惑極まりないですが、恐ろしい誓いを立てたり、産屋が燃え盛って
いるのも構わず出産するとか、ニニギノミコトが日本最古のNO!と
言える日本人ならコノハナサクヤビメは日本最古の肝っ玉母さんですね。
コノハナサクヤビメの鬼気迫る出産シーンに壮絶さを感じつつも、
当人は真剣なのに突き抜けているからか、どこか可笑しさを感じて
しまってて仕方なかったです。
相変わらずTwitter界隈では小林よしのりをネトウヨの生みの親だとか喚いてますね。
田母神も安倍も小林よしのりの読者だったとかで「慰安婦」「南京」「戦争論」「アイヌ差別」だとか自分達が中身検証しないで、ただひたすら条件反射のごとくデタラメだとか言い触れ回ってて拡散しているようですね。
こういうのって少なからず100人程度ですが共感されたりするんですよね。
分かりやすいんですが、自分達の運動に影響力が及ばないと直ぐ様誰かのせいにしたがるんですよね。
分かり易い敵を作るには好都合なのでしょう。
昨日秋葉原でおぼっちゃまくんのTシャツを着た人を見かけました。
おぼっちゃまくんもクールジャパンなんですよ。
どこかのサイトでしたが、貧ぼっちゃまの後ろ半分裸スーツを実際に作ってそれを着て街を渉猟闊歩していた人がいたようですね。
撮られたのではなく、アピールのために自らアップしていたようですね。
そういえば『ラストサムライ』が公開された時に、自称保守がひねくれた見方をして叩いていたのに対して、小林先生は「冷笑的な見方をしないで、こういうのをハリウッドに先に作られて悔しがらなければならない」みたいな事を書いてたような。けっこうあやふやなんですが。スノッブな態度を見せてるだけで、結局アメリカという現実とは向き合えないって事なんでしょうか。
そして『トランスフォーマー』って日本のモノだったんですね。あまり見た事はないんですが、アメコミ出身だとばっかり思ってましたorz なるほどコンテンツをとられてしまうっていうのはこういう事なんですねえ。TPPでは創作物に関する諸権利もアメリカ流にされてしまいそうなんですが、その辺も心配です。
ところで日本版『スパイダーマン』も東映がなかなかいいのを作ってたらしいから、上手くやってれば『スパイダーマン』は日本のモノに・・・なるわけないですね。
道場ブログとウェブサイトで、立て続けに野球ネタが出たので驚きました。
泉美さんの三重高校(西野カナの母校です!)を応援するブログを読んでいて、北海道の駒大苫小牧高校が夏の甲子園で初優勝した時の事を思い出しました。決勝戦はテレビ観戦していましたが、優勝が決まった瞬間、友達に電話やメールをしまくったのを覚えています。
北海道の高校が甲子園で優勝するなんて、どんなに長生きしても見ることはないだろうとあきらめていただけに「これで思い残す事はないかな」と思ったほどです。同時に数年前に他界した祖父母にも見せてあげたかった、とも思いました。まさに「歴史的瞬間」に立ち会った気分でした。
三重高校は残念な結果に終わりましたが、準優勝は立派な成績だと思います。来年はもし北海道の高校が早めに負けてしまったら、三重県の高校を応援したいと思います。泉美さんにも「歴史的瞬間」を味わってほしいです。
あと大阪出身の読者の皆様、大阪桐蔭高校の優勝おめでとうございます。「次は阪神や!」と勢いづいてるかもしれないですが、セ・リーグは我が巨人軍がいただきまゆゆ~!(使ってみたかっただけです)ただAKBのじゃんけん大会で、さや姉が優勝するのは大歓迎です。
みおりんの始球式、僕もユーチューブで見ましたが見事な投球でした。硬球は石ころを投げているのと同じなので、よく打者の後ろまで届いたなと思いました。広島が土砂災害で大変な時期にレモンの被り物をした事で、「不謹慎」と批判される可能性もあったでしょう。それでも自分の役割を完璧に果たした彼女は、とても芯の強い娘だと思いました。
ただ、実況のアナウンサーがカミカミで「エヌエムビー」とちゃんと発音できなかったのは、しっかりしてくれよと思いました。
仕事のキツイ中、体調の悪い中、やっとのことで書店に行けて、
『SAPIO』の9月号買えました~。あぶないあぶない。毎月4日発売になったから、
あと10日もないもんなぁ。ネットで買うの面倒だし。
中身を見ずに購入。
今1ページめを開いてみたら、いきなり残念なおばさんの写真が!
これだったんですね、話題だった巻頭言(笑)。
ちょっとだけ眺めただけで、男系カルト人に耳触りのいいロジックが
散りばめられてますね。勉強になります(笑)。
ゴー宣、1コマ目からベッドシーンという(笑)。さすがよしりん。
しかし、この導入の絵はひさびさで、なんか感動します。
構成もすごく練られてると思いました。この2ページだけで、
頭にガーンと衝撃をくらわされた感じがします。
クオリティは健在。ネットを見られないゴー宣ファンの方の反響があるといいな。
絵の『ゴー宣Special』がまた楽しみになります。
しかし、この導入部は、『大東亜論』に収録されるのでしょうか?
されないとしたら、ファンは保存すべきですね。
さて、本編を読もう。
こ んにちは 後藤です
『靖国神社と武士の魂』の動画で うなずきすぎて
「近代合理主義をつきつめると、命が惜しくなる」で むちうち症になりました。
いかに効率よく得するか→損はしたくない→自己犠牲なんて御免→いわんや命をや
容易に想像できますが、ピンとこない人も多いでしょう。
その対極の言葉
「名こそ惜しけれ」。
恥じない人生を生きたい。
町山さんのゴジラ映画批評、面白かったです。
http://miyearnzzlabo.com/archives/18653