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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2020/4/3(No.70)
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【No.70】夢物語の「廃炉作業」に1兆3700億円を出すつもりの東電
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<実現可能性が不明なデブリ取り出しに1兆3700億円>

東京電力は3月30日に事業予測の修正を発表した。修正の中心は燃料デブリの取り出しコストの上乗せについてで、2020年度の決算に燃料デブリ取り出しのための準備費用3500億円を特別損失として計上。加えて、3月27日に発表した「廃炉中長期実行プラン2020」に基づいて試算した燃料デブリ取り出しにかかる準備作業や設備の設置などについて、1兆3700億円のコストがかかるという見通しを示した。

2019年度の連結業績予想について
https://www.tepco.co.jp/about/ir/library/disclosure/pdf/200330-4.pdf

費用は「廃炉中長期実行プラン2020」で示された2021年3月期から2032年3月期までの12年間の計画に基づいたものなので、3号機のデブリ取り出しが本格的に始まる“前”までの作業しか含まれていない。1号機は着手していないほか、2号機についてはデブリの性状分析をするかしないかの段階なので、実際に取り出しをすれば、費用は大幅に増えることになる。

とはいえ、技術的な根拠はないので、実際に3号機の取り出しができるのかどうかは定かではない。また、今回の試算の中に取り出したデブリの保管施設費用は含まれているが、資料を見ただけではどのていどの量を保管できるのかは不明だ。

政府は福島第一原発の廃炉費用を8兆円と試算しているが、業績予想の発表会見で東電は総額の見通しを示さなかったという。

3月30日付日経新聞は、これらの費用は最終的に、東電ホールディングスの株式を保有している原子力損害賠償廃炉等支援機構(NDF)が株式の売却益で賄うことになっているものの、必要な売却益4兆円を賄うためには東電HDの時価総額が7.5兆円になる必要がある一方で、現状の時価総額は6400億円しかないことを伝えている。

個人的に問題だと感じるのは、試算された設備の費用や技術開発費が、なんの実現可能性の調査も示されない燃料デブリ取り出し作業に費やされるのは、公益性が重視される電力会社としてあまりに無責任なのではないかということだ。

しかもその間、やる必要があるのかないのかわからない作業に駆り出される作業員にとっては、ちゃんと計画すればする必要のなかった被ばくをすることにもなる。東電はいつも、安全確保を最優先すると言っているけども、夢想の「廃炉」作業は人命軽視につながるのではないか。こんなバカな話があっていいとは、とても思わない。