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めるまがbonet[ 第16号 ]

2013-05-08 19:00

    ◆╋◆╋◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋◆
    ╋◆╋◆
    ◆╋◆      めるまがbonet -2nd season-
    ╋◆
    ◆           第16号              13.05.08
    ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━‥‥・╋◆

    ………………………………………………………………………………
    なんとなんと、今回はぼんちゃんの4コママンガがのってますよ! 
    ぼんちゃんもすっかり有名になりました。そろそろ世界デビューに
    そなえて、外国のことばをおべんきょうしなきゃですねー。まずは
    自己紹介から。えーと、「梵天使」って英語でなんていうんですか?
    ………………………………………………………………………………

    ┌─────────────────────────────
    ├○ 今【1】ノッツインタビュー        [第3回]
    │  回             
    ├○ の【2】ぼんちゃん4コマ         [第1回]
    │  目

    ├○ 次【3】編集後記(ぼんちゃんのお部屋)
    └─────────────────────────────

    ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
     【1】ノッツインタビュー
        ギターを持ったマンガ家の唄       [第3回]         

    ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

    片や初の単行本『クルミくん NO FUTURE』(小学館)を
    2月に上梓し、『ソラミちゃんの唄』(芳文社)の発売も間近に控
    えた新進気鋭のマンガ家。片や『ヘルメンマロンティック』(HA
    TCH)でギターを手に甘い歌声を響かせるシンガーソングライタ
    ー。はたまたミドリカワ書房「大丈夫」のPVを手がける映像作家
    でもあり、supercellのトリビュートアルバムに参加する
    ボカロPでもある――。『めるまがbonet』では、そんなさま
    ざまなジャンルを股にかけて活躍するマルチクリエイター・ノッツ
    へのインタビューを敢行した。全3回にわたって、その多才さを育
    んだ半生から、作品に隠された秘密まで、未だ知られざるノッツの
    創作の核へと迫る。


    ■初音ミクと初音さん

    ――その後の1つ目のブレイクスルーに、ボーカロイド・初音ミク
    が登場するマンガ『四つ打ちリズムと初音さん』(注21)があり
    ますよね。これはどういった経緯で?

    実はミクに関してははじめはあまりピンときてなかったんですよ。
    ただ発売されて1年くらい経ったあたりですかね、superce
    ll(注22)さんの『メルト』や、ギターの音がフィーチャーさ
    れた楽曲などが増えてきた頃から、アンダーグラウンドな活動(注
    23)なんかも色々と知ってあんまり偏見がなくなってきたんです。
    ただそこで自分もミクで楽曲を作ろうとはならずに、初音ミクが現
    実にいたらこんなことが起こると思うよという想像の話をマンガに
    してみようと。ひねくれ者なんで(笑)。

    ――この作品がボカロファンへ与えた衝撃は大きかったですよね。

    当時は初音ミクを使って暗いマンガを描く人があまりいなかったで
    すからね。それと録音機材の描写が細かく正確だったってところも
    大きかったのかもしれません。音楽をメインでやってる人目線のリ
    アルな描写が、作品の説得力になって響いたのかなと。
    それにしても、あの反響の大きさには僕が一番びっくりしました。
    作風が作風なだけに、初音ミクのアンチと思われるのもまずいじゃ
    ないですか。だから急いで初音ミクのソフトを買ってきて(笑)、
    『四つ打ち』の作者なんだなと分かるイラストをつけた自分の曲を
    ニコニコ動画にアップしたんです。何かあっても「あ、ちゃんと
    (初音ミクを)買ってあげたんだ」って思ってもらえるように(笑)。
    ちょっと負い目を感じたところがあったんでしょうね。中には「こ
    ういうの無理だー」みたいな純粋な拒否反応もあったりしたので。
    多くの人に読んでもらったお礼を兼ねて、自分も初音ミクを買わな
    ければいけないなと。誰が作ろうが初音ミクの新曲が増えることに
    は変わりないのだから、自分がアップすることもたぶんシーンにとっ
    ては歓迎するべきであろうと。
    ……なんですけど、そうしてニコニコ動画をはじめたら、今度はこっ
    ちの楽しさに目覚めてしまって(笑)。例によって、コメントとい
    う形で反応がもらえることが面白かったんです。

    ――でもボカロPとしてはそれほど活発には活動されてませんよね。

    そこが難しいところで、初音ミクを使えば反応もわかりやすいだろ
    うということは予想できたんですけど、このスタイルをメインの音
    楽活動にする気にはなれなかったんですよ。今までずっと1人で、
    ボーカルも自分がやるってスタイルがメインだったので。

    ――自分が歌うということにこだわりをお持ちなんですね。

    そうですね。とはいえ、自分の声がめちゃくちゃ好きだってわけで
    もなくて、自分が歌わなきゃダメなんだという意識よりも、せっか
    く自分でも歌えるのにボカロの力を借り続ける、ってことに抵抗や
    申し訳なさがあったんですよ。ボーカロイドシーンの「ボカロ曲と
    して多くの人が聴く土壌が整いすぎている」場からも距離を置きた
    くて。そもそも初音ミクに歌わせるのって、自分で歌うより遥かに
    めんどくさいじゃないですか(笑)。特に僕の場合、メインの作曲
    環境がMacなので、初音ミクを使うときはWindowsのマシ
    ンを立ち上げなきゃいけないという事情もあって。今ではMacで
    も工夫すれば初音ミクが起動できるみたいですけど、それもめんど
    うで。なので結局は自分自身のオリジナル曲の制作に戻りました。
    たまにお願いされたり、思いついたら初音ミクの曲も作るくらいの
    距離感で、基本的には自分で歌ってましたね。

    ■CDデビューへの道

    ――そこからCDデビューへはどのようにつながっていったのでしょ
    うか?

    横須賀でやったライブがきっかけですね。まだ一番最初の会社にい
    て腐ってたときに、ネット経由で誘いを受けて、そのイベントにゲ
    スト参加したんですけど、そのときの対バン相手(注24)が、後
    に有名なボカロPになるんですよ。

    ――今ノッツバンドのサポートもされているbaker(注25)
    さんですね。

    はい。そのbakerさんが、僕がボーカロイドの曲を発表したと
    きに「覚えてますか?」ってメールをくれたんです。当時HATC
    Hというレーベルに関わっていて。そこからCDを出しませんかと
    いう流れになりました。
    しかもそのHATCHでは、ボーカロイドにこだわらないインター
    ネットミュージックを発表するというコンセプトで動いているらし
    く、正直ボカロのCDだったら断っていたかもしれないのですが、
    「ノッツさんのCDを出しましょうよ」とお誘いいただけて。これ
    を逃したら一生CDを出す機会なんてないだろうと、『ヘルメンマ
    ロンティック』(注26)というアルバムを制作してリリースしま
    した。2009年のことですね。

    ――売上も好調でしたが、その後2枚目を作ろうという話にはなら
    なかったんですか?

    「次のCDどうしようか?」という話まではいただいていました。
    候補にあがっていたのはニコ動にあげた「サボテンと蜃気楼」(注
    27)という曲で、もともとはボーカロイド用に作った曲だったん
    ですが、周知されてから今度は自分でも歌うという逆転現象を起こ
    していた曲です(笑)。ノッツボーカルバージョンもそれなりに好
    評だったので、じゃあその曲のシングルCDみたいなものを作って
    みましょうかと。
    ただ企画が動き出そうとしたところで、なんとレーベルが解散して
    しまいまして……それで企画は白紙となってしまいました。

    ■大学ノートからマンガ誌へ

    ――CDリリースと同時に、はじめての同人誌『たくろく!』を頒
    布されていますよね。

    リリースの年にHATCHが夏コミに企業ブースを出したんですよ。
    そのときに「ネットに上げてた宅録マンガ、続きを描いてまとめて
    もらえませんか?」という話になって描いたものですね。

    ――読んで驚いたのですが、セリフが横書きで、めくりの順番も普
    通のマンガとは逆方向が想定されてますよね。

    今までマンガを描いていたのが大学ノートだったからです(笑)。
    小学校の頃からクラスのみんなに見せるためだけに描いていたので
    そっちのほうが自然だったんですよね。それにpixivだと縦に
    読むことになるので、違和感がないだろうと思っていました……た
    まに「なんで左読みなの?」とは言われていましたけど(笑)。
    途中の作品からいきなり右読みになっているのは、そこでちょうど
    ペンタブレットを導入して、ComicStudio(注28)を
    使いはじめたからです。当たり前ですけど、コミスタのテンプレー
    トが右読みだったので(笑)。結果的にはコミスタに「マンガとは
    こういうものだぞ」と教えられた感じですね(笑)。

    ――そこから今度はマンガ家としてデビューされるわけですけど、
    『クルミくん』と、『まんがタイムきららMAX』(注30)で連
    載中の『ソラミちゃんの唄』では、どちらが先に声がかかったので
    しょう。

    『ソラミちゃん』ですね。ちょうどレーベルがなくなって、これか
    らはイベントで自主制作CDを売っていこうと考えていた時期でし
    た。その頃「よかったら『まんがタイムきららMAX』で2話分、
    ゲスト掲載しませんか?」とメールをいただいたんです。ちょうど
    そのとき、バンドメンバーと一緒に東京でのワンマンライブを企画
    していたので、その練習で上京したときに担当さんと打ち合わせし
    て、「やってみます!」と。

    ――打ち合わせで決まった方向性というのは?

    『きらら』というと『けいおん!』をはじめ、『キルミーベイベー』
    や『Aチャンネル』などももちろん知っていました。でも僕に声を
    かけるということは、今までとは違う血を入れたいんだろうなと。
    担当さんも萌え4コマというジャンルの枠組みを広げたいと話され
    ていて、ならあまり『きらら』らしくない作品でも大丈夫なんだろ
    うなという辺りから、相談しながら構想を膨らませていきました。

    ――初の商業誌掲載が決まったときはいかがでしたか。

    絵には自信がなかったし、ちゃんとペン入れをして描いた経験もな
    かったので、不安はかなりありましたね。それこそ『クルミくん』
    がコミスタとペンタブを導入して描いたはじめてのマンガで、それ
    以前はシャープペンで2、3本線を重ねて輪郭をぼやかしていまし
    たから。でもペンの原稿だとそれが通用しないじゃないですか。ご
    まかしがきかなくなって、自分の絵の下手さが如実に反映されてし
    まう。そういったマンガ家として当たり前の作業が、自分にとって
    は一番ハードルが高かったですね。

    ――絵に関する指定というのは?

    はじめに「絵は下手ですけどいいんですか?」と言ったんですが、
    担当さんから「絵柄は上手くなる様に色々試していただいて大丈夫
    です」と言っていただけたので、そこで自由に頑張ってみました。
    だから『ソラミちゃん』を1話から読んでいくと、最初と今とでは
    本当に絵が違うんですよね(笑)。『きららMAX』で一番絵が上
    達したマンガ家だったらいいなあと思います。
    まだまだ同じようにしか描けないんですよね。基本的に高い等身が
    描けない。だから『クルミくん』も『ソラミちゃん』も基本的には
    デフォルメキャラなんですよ。IKKI公式サイト『イキパラ』
    (注31)で描いている『カタワレノワレワレ』という作品では、
    意識して等身が高めになるよう努力しています。

    ■宅録ガールと宅録ボーイ

    ――『ソラミちゃん』は主人公が宅録をしているなど、ノッツさん
    ご自身の経験が直に投影されていますよね。

    連載をはじめるにあたって様々な案がでたんですけど、自分の得意
    分野でやってみたいという気持ちが強くあったんです。今まで女の
    子が自宅録音するというマンガはなかったと思いますし。

    ――登場する女の子4人のキャラクターはどのように作られたんで
    すか?

    基本的にはちゃんと絵が描き分けられるかどうかですね(笑)。も
    ちろん、それぞれに役割を割り振ってもいます。たとえばネモちゃ
    ん(注32)はソラミちゃんの音楽が好きというキャラクターが必
    要だろうと思って作りました。またそれなら同時に、ソラミちゃん
    (=作り手)とネモちゃん(=聴き手)との距離にジレンマを抱い
    ていないとダメだな、とも。つまり、曲が好きだから本人に会いた
    いんだけど、自分と接することによってその人の作風が変化するこ
    とを恐れてしまう、という考えです。そういう考え方は絶対あると
    思います。

    ――それは長くネットで活動されてきたノッツさんならではの視点
    ですね。

    人との距離って縮めることも大変だけれど、一度縮めてしまったら、
    今度は広げることも難しいと思うんですよ。本当はもっと知りたい
    し近づきたいけどそれが怖くて距離を保っている、という人っていっ
    ぱいいると思います。その人が好きだからといって、何も考えずに
    すぐ会いに行くっていうのは危険だなと。そういった裏設定はいく
    つか考えてあります。
    裏設定といえば、各キャラクターの幸福度も最初から考えて図も作
    りましたね。この子は幸せというにはちょっと遠いかもしれないけ
    ど自分の才能ややりたいことがわかっている、とか。この子は幸福
    ではあるけどやりたいことがわからない、とか。もう少し続いてそ
    ういった葛藤まで描くことができれば、作品に深みが出せるのかな
    と思います。

    ■5年後のノッツ

    ――『クルミくん』単行本化を経て、『ソラミちゃん』の第1巻の
    発売も間もなくと思います。そこでマンガ家はもちろんそれ以外の
    活動まで含めて、5年後にはどうなっていたいと思いますか?

    5年後は……その頃まで東京にしがみついていたいですね(笑)。
    僕が実家から出てきたときの話なのですが、いい年して東京に出た
    いと両親に話したときに「4~5年経ってうだつが上がらなかった
    ら帰ってこい」と言われたんです。5年後というとちょうどこのタ
    イムリミットなので、それまでに仕事を軌道に乗せたいですね。

    ――では最後に、マンガと音楽に関する今の気持ちを教えてくださ
    い。

    音楽をやるには大変な時代ですし、今から劇的な展開があるかどう
    かもわからない。でも音楽を真面目にやっていることは僕の強みだ
    と思うんですよ。マンガ家として、音楽的な描写を詳しくできるこ
    とは付加価値じゃないですか。音楽誌の『サウンド・デザイナー』
    (注33)さんで連載している『たくろくガールズ』なんかがその
    結果ですね。普通のマンガ家ではなかなか描く機会がない音楽誌で
    連載を持つことができた。
    ほかにも新しい音楽機材のレポートマンガとか描けると思います。
    具体的な話はまったく来てませんけど(笑)。そういう形で自分の
    技術をマンガに反映できればうれしいですね。
    今の自分の状況は、夢に描いていたような幸運なものですし、マン
    ガに限らず今は与えていただいたお仕事を夢中でやるしかないなと
    思っています。

    ■『ソラミちゃん』誕生秘話

    ――最後におまけコンテンツとしていくつかこぼれ話を。『きらら』
    のマンガで好きな作品はありますか?
     
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