還暦フェアの業務が続く中、ペン大の授業も安定運行し、新音楽制作工房のコーポレートサイト作りも進めてゆく。20人もいるとサイトデザインの能力がある者もいて、2人ピックアップして僕と3人体制でやっている。2人とも音楽家としてAリーグで(実は全員Aリーグなのだが笑)、少なくとも地球上のアートカレッジの先端科(というのがあるのですどこにも)のどこよりも先端的なクリエイトをしている。
もう少し厳密にいうと、アカデミズムの中にある「先端」よりも、我々の先端性は遥かに市場価値の中にいる。何せ、これがアップされる頃には「岸辺露伴は動かない」のOST発売の初報が飛び交うのである。TVドラマ、映画を観た人全員に買って頂きたい。お布施とかそういう話ではない。互いの生命力を更新するためにだ。あらゆる先端的実験は、人類の凝固した生命力を解き放つためにあるべきだろう。
現在のところ、公開情報が「内容は未定」となっているので書けないが、僕が知る限り、現在考えうる限りのあらゆる先端性と、審美的な商業性をしっかり備えている。イルカム(やや煩雑になるので説明は省く。「フランスにある音楽の研究所みたいなところ」と、児戯にも等しい説明でお許し願いたい)が、今何をやっているのか?も我々はマークしていて、その評価は兎も角(僕自身は「全然大したことないね」と思っているが。本気で)、じゃあイルカムの成果物が人気テレビドラマ / 映画のオリジナルサウンドトラックを手がけることはこの先一切ないと断言できる。ここが重要だ。音楽の側から映画を復権させる力を与えるのである。
音楽のが映画より優れている。という意味ではない。古来、実験音楽の最良の現場は映画音楽だった。現在の映画音楽は、音響システムによるスペクタキュラー方面と、ミュージカルアドヴァイザーシステムによるきせい既成曲の使用センス、PC制作のオーケストレーションと無限に近い効果音による、「より早く、より多く、より安く」という市場の最悪面が拡大されており、これは映画というメディアの総合力の低下を意味している。
我々はギルドという古層のシステムを蘇生させることで、「岸辺露伴は動かない」という作品に於いて、こうした現状の真逆に駒を進めることに成功したと言える。そもそも作家に疲弊がない(ギルドなので&監督との信頼関係によって内容を一任されているので)。という点だけでも輝かしい。創作的な労働が悪い疲弊の元に成り立っているのは悪弊であるし、作家を抱え込んだ劇伴専門事務所などによる中間搾取はもっと悪弊であって、我々はこうした現状を、北京ダックを食いながら突破すべく日夜作曲に励んでいるのである。
これは映画というメディアへのリスペクトであり、パワーチャージでもある。そもそも、「新音楽制作工房」自体が、「岸辺露伴は動かない」によって生まれた側面もあり、こうしたことはOSTにライナーノートがあるとしたら詳述する。
コメント
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今回は全然ダメだ笑
ずっと公式サイト出来ないかなと思っていたので、サイトの立ち上げとても楽しみです。
話が変わるのですが、何回か前のラジオデイズで菊地さんが「洲崎パラダイスがすごい」と仰っていたことを思い出し、昨日アマプラで視聴しました。映画自体は言うまでもなく、音楽すごくよかったです。
日活の古い作品はBSで「狂った果実」「ビルマの竪琴」を見た位で菊地さんに教えてもらわなければ見てなかったと思います。(調べたら3作とも56年でした。)この場を借りて御礼を。
>>11
アレは真鍋理一郎という音楽家で、今度出す映画音楽本で研究対象にしますが、「洲崎」特にですが、他の作品も、僕の音楽と似てるんですよ。いわゆるリファレンス関係なしの100%偶然で、こんなに似ている作曲家知りません。というか、2019年に出版された川島雄三の研究本で、あの音楽が、アメリカンクラーベに似ていて、日本人だったら菊地成孔に、、、という記述があって、ひっくり返りました笑。
僕はオカルトでも原理的な仏教徒でもないですが、自分を川島雄三の生まれ変わりだと思っています(僕が生まれる2日〜3日前に亡くなったので)。なので、川島雄三作品の音楽を研究しまくっているのですが(ちゃんと、研究家という立場で)、先回って、というか、僕が研究に着手する前から、日本人による川島研究書に自分の名前があったとき、「ああ、オカルトの人って、こういう偶発にヤラれるんだなあ笑」と思いました。
川島雄三は、3人の音楽家をうまく使い回していて、黛敏郎(ドミューンで紹介した「接吻泥棒」の、「クールの誕生パクリ」が完璧)、「洲崎」の真鍋理一郎(「洲崎」よりすごいのが「貸し間あり」の音楽です)、晩年の4作を担当した池野成(いけの せい。これもずっと「いけの なる」だと思っていて、危ないところでした笑)、の3人ですが、全員との仕事の仕方がもう、未来の人間としかおもえないぐらいすごいです。
こういう話ばっかりで一冊出します笑(多分、来年)。日本映画は、20世紀が終わって、急速に「たくさん見れる」ようになりました。それは、太平洋戦争時代にアメリカ映画が統制で見れなかったのが、戦後に一気に解禁された状況と似ているとさえ言えて、第一には批評をもう一度最初からビルドアップしないといけない。特に、20世紀の映画批評には、基本的に含まれなかった「音楽と映画の関係」については、僕の仕事だと思っています。
岸辺露伴のサウンドトラック予約しました! 9月がとても楽しみです。 東宝映画の音楽の本もとても待ち遠しいです。 本の話についていけるように 川島雄三監督の東宝時代の DVD を少しずつ買っています。 今のところ箱根山と接吻泥棒を買って見ました。次は青べか物語と貸間ありを買います。本の発売日までには川島監督作品で見られる物は全部見ておきたいです。
本当に昔の日本映画が沢山見れるようになりましたね。 Amazonプライムに日活映画がたくさん無料であるので、川島監督の日活時代であるものはをほぼ見ましたし、渡辺武信の「日活アクションの華麗な世界」を古本で買って参照しながら小林旭の渡り鳥シリーズを全部見ました。 宍戸錠の鈴木清順監督作品(野獣の青春、探偵 23)も面白かったですが、僕が面白かったのは裕次郎の文芸映画でした。 田坂具隆監督の陽のあたる坂道は3時間半もあるので、最初は見るのを躊躇したのですが見出したら面白くて3時間半があっという間でした。この映画の川地民夫は作曲家志望の役なのですがサックスで作曲するんですよね。本当に映画を先入観でつまらないと決めつけて見ないと損するなと思いました。
岸辺露伴は、怖いけれど笑えるところもあって好きです。いつか菊地さんと新音楽制作工房の皆さんで川島ばりの喜劇映画のサウンドトラックをやってもらいたいなんて夢見ています。
>>13
いやあ無茶苦茶趣味良いですよ!鈴木清順なんて、田坂具隆に比べたら昭和のおもちゃ屋ですよ笑。
「銀座の恋の物語」なんかすごいですよ。ジェリー藤尾がフリージャズ〜現代音楽の作曲家で、あの昭和歌謡のメロディは、無調のセリー音楽みたいな音群の中にあるんですよ笑、そのメロをトイピアノで弾いて、戦時トラウマで分裂病になった浅岡ルリ子が寛解するんだから!
こんばんは。
あの、質問なんですけど、『大恐慌へのラジオデイズ』への質問メールは、どこ宛に送れば宜しいですか?
毎週楽しく拝聴しております。
サプリメント笑。
>>12
菊地さんにとって川島雄三がそんな存在だったとは。。
続けて『幕末太陽傳』を見たのですが、音楽があんまり耳に入ってこなくて、終盤からエンディングにかけての描写に作家性を強く感じて、そちらに持っていかれてしまいました。
時代も離れていてリファレンス関係なしで似るって驚きですね…!戦後の日本の作曲家は学生時代に片山杜秀先生の本を片手に調べたりしていたのですが、CDが全然手に入らずそれっきりになっていました。これを機にもう一度トライしてみようと思います。書籍楽しみにしております。
>>15
でしゃばり小僧で恐縮ですが、メールの宛先はこちらでよろしいかと。
info@kikuchinaruyoshi.net
横からのコメント失礼致しました。
>>15
一段下の抹茶さんのコメントにアドレスあります笑い。(抹茶さん有難うございます)
>>16
そんな、でしゃばり小僧なんて笑
抹茶さん、お気遣いありがとうございます!
>>17
菊地さんもご丁寧にお知らせくださり、ありがとうございました!