鍵泥棒のメソッド (角川文庫)

 映画『鍵泥棒のメソッド』を観てきた。堺雅人、香川照之、広末涼子、といま人気の脂がのった役者三人を主役に据えたコメディである。結論から書くと、なかなかおもしろかったのだが、個人的には何かもうひとつ煮え切らないものも残った。たしかにユニークだし、ユーモラスなんだけれど、何か、こう……。いや、いい映画なんですけどね。

 この映画の題材は「記憶喪失」だ。物語は裏社会で冷酷非情な殺し屋として知られる男コンドウ(香川照之)が風呂場で滑って記憶を失うところから始まる。そこに居合わせた貧乏役者桜井(堺雅人)はかれの衣服と金と車を盗み、かれに成り代わる。