-
小飼弾の論弾 #286 「ゲスト:SF作家 藤井太洋さん・戦争と人類のその先を描く『マン・カインド』、AI開発は規制すべき?アメリカ第二次内戦は起こる?」
「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!今回は、2024年10月8日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2024年10月22日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2024/10/08配信のハイライト
- SF作家藤井太洋先生を迎えて
- AIが書いた長編小説のレビューはだれがやる?
- ドーンとくる本が最近ない、という欠乏感
- 「設計のセンス」と「AIがアシストしてくれないソフトウェアを使ってくれる人」
- 『マン・カインド』と『シビル・ウォー』から考えるアメリカ
- 「2045年に大人のポストヒューマンがいるということ」
SF作家藤井太洋先生を迎えて
山路:今日はSF作家の藤井太洋先生をお迎えしております。
小飼:まさかまさかの。
藤井:よろしくお願いします。
小飼:あ、そうだ、星雲賞受賞おめでとうございます。
山路:おめでとうございます。
藤井:2年前に(笑)。
小飼:いや、2年前も、だよね、すごいよな。
山路:同じ作品で、改稿したやつでもう1回受賞っていうのはあるんですか?
藤井:星雲賞のレギュレーションではダメですね。
山路:ダメなんですか(笑)?
藤井:フォーマットが思いっきり変わって長編が短編になるとかだったら、部門変えて、
山路:直木賞とかあえていってみる?(笑)
藤井:自分で行くものではないですからね(笑)。あれは日本文学振興会の人が候補作に入れてくれないといけない。
山路:2017年から2021年の間、SFマガジンに連載した作品を大幅に改稿した、この作品『マン・カインド』ということになるわけですよね。9月発売ですよね。ちょうど出たばっかで。
小飼:そうそう。
山路:すでにいろんなところで話題になってまして、一昨日でしたっけ? 小島秀夫さん、『メタルギアソリッド』で知られるゲーム制作者の小島秀夫さんが絶賛のコメントを、しかも英語でも、
藤井:びっくりしました。
山路:ゲーム化されるんじゃないですか、この流れだと(笑)。
藤井:されてほしいですね。
山路:『メタルギアソリッド』のノリで。
小飼:『メタルギアソリッド』というよりも、僕はゲームでないので、どっちかというと『DEATH STRANDING』だっけ?
山路:ああ、『DEATH STRANDING』。
小飼:あっちのノリじゃないですか(笑)。
「宅配ゲーム」(コメント)
山路:小島秀夫さんも、絶賛されているという『マン・カインド』でございます。今回は『マン・カインド』をメインに、取り上げられているトピックや、創作にまつわるお話をいろいろお聞きしていこうと思うんですが。まず『マン・カインド』というのがどういう話かというところなんですけれども、これって今から20年後の舞台ですよね、ちょうど2045年。
藤井:はい、そうです。
山路:で、アメリカで第2次内戦が起こって、そこから13年後という非常にリアリティのある設定になっております。で、この20年経って、このSF的アイテムの数が盛り込まれている、SFガジェットというかアイテムすごいじゃないですか、もうなんていうか。外骨格に多脚ローダー、拡張現実、デザイナーベイビー、さらにここのところでたぶん、この小説にしか出てこない概念だと思いますが、公正戦ですよね。
小飼:いや、でも逆に、今挙げたフレーズというのは、もはや現代人はSFとは捉えてないんじゃないかと。
山路:なるほど。
小飼:たとえば、この辺のガジェットというのはもう攻殻機動隊にいっぱい出てくるんですけど、たぶん今の人たちって攻殻機動隊ってSFじゃないと思うんですよね。
藤井:エクソスケルトン、外骨格にしても、今介護施設とかで補助のために下半身にローダーをつけたりとかする人いますし、あと私まだSFで1回も書いてないんですけど、空調服。今もう現実ですよね。あれを書いたSF作家ってあんまりいないんですよね。毒ガスに包まれた世界みたいなレベルじゃないと出てこないものが、今現実に、それこそ服を着て歩いてるみたいな。
小飼:逆に空調服というのは、それとは真逆に人体で冷やしてるっていうところが、むしろローテクなところが、ニューアイデアなんですよね。
藤井:すごいですよね。
小飼:今時の都内の宅配というのはチャリだったり、荷車だったりで、人力じゃないですか。人力強ええ、んですよね(笑)。だからその辺の、何でもかんでも技術でやらないというのか、人間の筋肉もミックスリアリティに含まれているという点では、この作品とかまさにそうなので。
山路:子供の頃、自転車で荷物を運んでるとは思いませんでしたもんね。
藤井:21世紀になってね。
山路:意外にそれがリアルな現実だったというところが。
藤井:そう、大八車とか。
山路:21世紀ももう四半世紀過ぎようとしているあたりでそれですからね。
小飼:いや、大事なんですよ。
藤井:そう。結局ね、肌身に、自分の手で動かすとか、そういうリアリティけっこう強くてですね。
山路:私、電動アシスト自転車とか出てきたとき、そんなの意味ないやろって思ったんですよね。初め聞いたときは。でも、それがこれほどに普及するっていうのは驚きですし。
「帆船復活してるのも驚き」(コメント)
小飼:復活しきってはないんだけれども、商船とかで搬送アシストっていう形のやつはありますね。だから、コンピューター制御の柱を立ててっていう。
山路:で、この『マン・カインド』なんですけど、どこまでストーリーのあらすじとして最初のほう言っちゃっていいのかな? 先生から直接言ってもらったほうが安心かな(笑)?
小飼:プロローグの部分っていうのは早川オンラインで公開してるので、その範囲であればネタバレ可能という。
藤井:僕はぜんぜん大丈夫です。
山路:そうですか。じゃあ、この作品世界での特徴、公正戦。公正な、フェアな公正ですよね。それに戦争の戦で公正戦。
小飼:公正証書の公正。
山路:ある公正戦の中で、戦争犯罪、捕虜の虐殺っていう事件を当事者の片方が起こすんですけれども、それを配信しようとしたジャーナリスト、しかしその記事が配信されないっていうところから始まって、なぜそれ記事が配信されなかったのか。その戦争犯罪を起こした当事者自身が、その戦争犯罪であるっていうことをわかりながら捕虜を虐殺してる、それは一体なぜなのかっていうところの謎解きから始まるという感じでいいですかね。
小飼:そうなんですよ。だから、公正戦って何ぞやっていう感じでしょうね。だから初めそこだけ見てると、アンパイヤ付きのドンパチ、要は人数が限られてて、一定の目的を達すると勝敗がつくと。要は普通は相手のリーダーを無力化するとか、そういう感じなんですけれども。だから、公正というのは、極論してしまえば何でもありの世界ではなくて、その一定のルールに則って戦う範囲であれば戦ったよしで、反則をしてしまうと、反則負けを取られるという。
山路:この世界での戦争っていうのは、公正戦だけではないわけなんですよね。
藤井:そうですね。
山路:これって、公正戦と、普通の、まあ言ってみたら従来型の戦争? なんていうか、ルールなしでやる戦争と、公正戦、その戦争の当事者がどっちを選ぶっていうのはどうやって決めるんですか?
藤井:それは攻める側が基本的に選ぶ形になっています。前提としては。もともと公正戦というのは、両方の申し合いによって成立するケース、今、『マン・カインド』の時代、2045年には両方の申し合いで成立しているんですけど、成立する段階においては、基本的には攻めていく側、つまり抵抗する側だったりとか、独立を宣言する側だったりする人たちに対して攻めていく側が「いや、私たちは公正にやるからね」みたいな。「ちゃんと勝利条件を提示するよ。今から送る一部隊を潰したら、君たちの勝ちでいいからね」っていうふうに勝手に提示するわけです。そういう形での、かなり歪んだあれです。
小飼:やくざの地上げだ(笑)、
藤井:正面から潰していけば、勝敗は完全に決まっちゃうんですよ。なんですけど、それは持てる国も、非対称戦争の時代ですからね。なんですけど、そこに「いや、私たちは正しくやるからね」っていう言い訳をつけるために、少数の部隊で「はい、これ倒せば勝ちです。やってみてください。どうぞ」みたいな、そういう勝利条件に引きずり込んでいくためですね。
山路:これは結局、持てる国が世界からの批判を避けるための建前ということでもあるわけなんですよね。
藤井:ただ、そこで相手がもしも(ルールを)破ったら、容赦のない物量戦争で引き潰しますよ、みたいな、そういうことですね。それを武力と経済力を背景にした、瞬間的な正しさの演出みたいな感じ、ではあります。
小飼:それで一つ思い出したのが、ナチスが占領しているところの、東欧のどこか、ウクライナだったっけな。サッカーやって、それでナチス側のチームを打ち負かしちゃうんだけど、全員射殺されちゃうわけです(笑)。
山路:笑い事じゃないな。
小飼:でも、度を超えた悲劇というのは、喜劇と区別がつかないという。
山路:しかし、それを言うんだったら、ジャンケンで決めてもいいんじゃないか、みたいな気はしてくるところなんですけどね。
藤井:実際、オバマ大統領がやっていたドローンによる要人暗殺なんかも、引き金を人間の手に置くという原則を基本的には守っていたわけなんですね。それでアメリカ人のオペレーターが、けっこうPTSDになったりとかしてたんですけど。それでも、ここに責任がありますよ、私たちは責任を取るつもりですよ、というそういう。
小飼:そうか。そこもヒントだったんですね。
藤井:そう。そういう、自分たちに責任がありますっていう、アカウンタビリティがありますよっていう、そこを、演出ですね、演出というよりも、宣言ですね。そういうところから生まれている概念。そういうところからヒントを得て作った概念ですね。
小飼:ヒントといえば、ついさっき入ったニュースでノーベル物理学賞、ヒントンの先生が受賞した。
山路:そこからくるの(笑)、
藤井:あれが物理学賞なんだって。
小飼:でしょ? でしょ?
藤井:でも、そうだねって感じですよね。
小飼:ちなみにもう一人は、ホップフィールドとの共同受賞です。でも、本当にワントピックで、まるっと受賞なので。しかも、ニューラルネットなんですか? っていう。
山路:20世紀にすでに出てきたニューラルネットワークの原理っていうことに関して賞が与えられたっていうことなんですね。
小飼:だから、今もうそれ、もう満開だもんね。咲きまくってるもんね。
山路:これは弾さん的には、あるいは藤井先生的には、このノーベル賞の受賞っていうのは意外でした? お二人から見て。
藤井:私は物理学賞で取るとは思ってなかったです。
山路:フィールズ賞みたいなもんだったりとか?
藤井:いや、数学系とか。ノーベル賞の中でコンピューター科学に適した賞っていうのは特にないんです、部門はないんですけど、それでも、数学かな? 数学じゃないや、何が適してるのかなっていうと、確かに他にないんじゃないんだけど。
小飼:強いて言うと、むしろphysiology、生理学賞?
藤井:そうですね。生理学賞ですね。
山路:言ってみたら、人間の知性みたいなものを工学的に再現したみたいな文脈で。
小飼:そうそうそう。だから、まさに神経がヒントだったわけじゃないですか。いや、でもノーベル賞に値する業績だっていうのは間違いないところで、じゃあどのノーベル賞? っていう時に。数学があれば、これが一番楽だと思うんですけれども(笑)。でもけっこう、物理学の人も評価してるので、結果としてこれはこれでアリなんじゃないかと。こう言っちゃなんだけれども、オバマも平和賞取ったのだし。ひでえ言い方(笑)。
山路:暗殺とかもしてる(笑)、
藤井:だいぶ程度が違うと思いますけど(笑)。でも実際、物理学でエントロピーを扱う、実際エントロピーの話だと考えるとすごいことですからね。
小飼:エントロピーっていうのはもう情報にも熱力学にも出てくる概念で、しかもブラックホールを通して繋がってるっていうことがわかったというね。そういうのを考えると物理に、いつ物理になるか。
山路:情報を扱う分野はとりあえず物理学賞に放り込んでおけば、まあなんとかなるやっていうことが、前例ができた。
小飼:前例ができた。前例ができた。いや、だから、すごい、なんてタイムリーなんだというね。なんてタイムリーなんだという。
山路:じゃあちょっとAIの話で続けるんだと、『マン・カインド』のほうって、AIは今みたいな形でのLLMが大活躍みたいな感じではないですよね。ジャービスみたいな名前をつけて、Hey、Siriみたいな感じで使って。まあユーザーインターフェースとしてAIはちょっと登場しますけれども。
藤井:でも主人公の迫田が、記事を書くのにはAIをバリバリ使ってますから。もう彼は書かない記者なので。
山路:映像を全部流し込んで、それを起こさせるみたいな。
小飼:だからそこはよく当てましたよねっていう。LLMみたいな力技だったらっていう予測までしてらっしゃったとかどうかはわからないけれども。いや、でも本当にLLMって力技だもん。とにかくニューロンいっぱい用意して、それでぶっ叩く技なので。
山路:相変わらずAIが熱くなっているというか。最近だと孫さんが発表、特別講演でもう10年以内には超知性が来るぞみたいなことをぶち上げてたりしますけれど(笑)。その文脈でいうと、藤井先生としてのタイムスパンというか、どんな感じで見てます? 今のAIの進歩のロードマップ。
藤井:AIって言われているインアウト、I/Oの中で何が行われているかは正直わからないんですけど、あれにどんな肉体をくっつけてあげると超知性と私たちは感じるのかなみたいな。そこには興味がありますね。本当はワンラインの、テキストチャットのワンライナーだとあれ以上のことはできないわけですね。それにたとえば電力制御とかのI/Oとかを繋いでしまうと、電力制御はなんだか知らないけどやってしまうものになるわけですよ。なのでどういう肉体をあれに与えてあげるかっていうのがすごく、どういう手を上げるか。だからAGIに私たちは何を期待するんでしょう、ということですね。
小飼:あと、そもそも我々以外に、違った、地球外知性体っているのかっていう質問をまだ生きている時のホーキング博士に言ったら、知性体どこにいるんですかみたいな答えが帰ってきたことがあったけど(笑)、それはとにかくとして、仮にそういった超知性ができたとして、我々にそれが認識できるのかという。『はたらく細胞』というマンガがありますけれども、あれ僕、じつは苦手で。なんで苦手かっていうと、擬人化されているから。人の理屈が働かないんですよね。個々の人には人権があるわけじゃないですか。少なくとも文明人の社会ではそういうことになっていますよね。ないんですよ。細胞というのはいくらでも使い捨てにできるわけですよね。
山路:そういう立場に我々も知らない間になっている可能性もあるという、超知性ができたときは。
小飼:そうそうそう。だから超知性の細胞なのかも。
山路:もしかしたら変な感じの事故死が最近増えたなとか、そういうことで初めて認識するとか、そういうことになるのかもしれない。
小飼:そうそう、なんかプリウスミサイルが減っているぞとか。
AIが書いた長編小説のレビューはだれがやる?
「AIの創作物が人間の創作物を超えるのはいつになると思いますか?」(質問)
藤井:超える、少なくともスピードだけでいうともう超えてますよね。速さだけでいうとね。間違いなく(笑)。
山路:超えるとはそもそも何ぞや、という。
藤井:そうそう。で、売れるかどうかでいうと、売る人がいればその時にAIの創作物のほうが売れちゃうんじゃないでしょうかね、と思います。
山路:面白い小説というのは書けると思いますか? LLMの延長上に。
藤井:書けるとは思います。ただ小説って特に長編小説なんですけど、文章の量としてはけっこう不自然に長いんですよね。LLMとかで破綻なく出せる文章の長さってそんなに長くないじゃないですか。それってインプットしているテキストの長さ、4500文字から1万文字、日本語で言うと、ぐらいのテキストを大量に読んでいるから、それぐらいでまとまって出てくるんですけど。でも人間に、普通の人に何かまとまった文章を書かせてもそれ以上の長さのものってなかなか出てこないんですよ。長編小説ってこの(『マン・カインド』の単行本を見せる)厚みを作るために、3000円とか2000円とかで売るためにこの厚みを作るわけですね。すごい工夫するんですよ。キャラクターを増やしたりとか、裏切りを作って物語をフリップさせたりとか、あと伏線を置いておいて回収するとかみたいな。けっこう工夫してページを増やす。
山路:そんなこと言っちゃっていいですか(笑)?
藤井:増やしてるわけじゃないんですけど、この長さのボリュームのテキストを楽しむっていう、このエンターテイメントの。要は建物を大きくする、ジェットコースターをでかくする。あるいは、
山路:読者の時間を拘束して、入り込ませる、体験をさせるっていうことですね。
藤井:そう。でも思いっきり楽しんで1週間なり2週間なり、今、速い人も2、3時間以上は絶対かかるので、そういう楽しみを得る。
小飼:長いのがトレンドですね。今、特に。
藤井:今、もっと長いですもんね。私の日本の小説なんてこんなもんですけど、アメリカの小説とかだいたいこんな厚みになってきてますから。
小飼:いや、ほんとに。900ページくらいがデフォルトですかね。
藤井:増えてます。増えてます。あれってやっぱりその長さにするためのテクニックがすごいいるんですよ。やっぱり。あれは明らかに人間の自然な思考から出てこないので、一発では。何回も繰り返して作るとか、設計を考える、キャラクターの造形を考えるとか、そういうことを積み重ねていかなきゃいけないんですよね。AIも当然できるんでしょうけど。
山路:最近だとOpenAIから「o1」が出てきたじゃないですか。そこのところで推論とかができるようになったみたいなことは言われてるんですけど。
小飼:いや、できてるように見えないなー。
山路:小説とかのテクニックみたいなものっていうのを抽出して、そういうものを学ばせることが可能なのか、
藤井:でも、LLMってそういうふうにものを書いてないですからね。基本的は確率でしょう
山路:だから、それがLLMの延長なのか、あるいは別の仕組みが必要なのかわからないですけど、そういうふうな小説家のテクニックみたいなものまで明文化じゃないけども、学習することが、
小飼:いや、そもそもテクニックというものが幻想だったという。
藤井:うん、だと思いますよ。私は、たとえば小説書くときにプロットを描いたりとか、絵を描いたりとか、こうしてキャラクターを作るとか原則をけっこうこういうふうにして作るんだって言ってますけど、おそらくそういうふうに作ってないですし、頭の中では。これをプログラムで書けって言われると、絶対に穴がボロボロあるわけですよね。AIを使うと、Pythonとかで書くと間違いなく穴だらけになるんですけど、今のo1-previewとかにやらせると、それっぽい形のことはたぶんできると思うんですよね。なんですけど、なんだかんだ言って、小説ってレビューするのはむちゃくちゃ大変で、たとえばo1に30万文字の小説を書かせるようなプロセスは作れると思うんですけど、誰がレビューするんですか? それみたいな。
山路:矛盾ないストーリーになっているか、いちおう、整合性は確認させることはできるかもしれないけど。
藤井:手で書いた小説って、書いてる人は少なくとも面白いと思って全部のパートを書いてるんですよ。なんですけど、o1が出してきた30万文字のテキストの全パートがちゃんと読めるくらい面白いかっていうのをレビューする人は誰なんだ? みたいな。
山路:新人賞の第1次選考どころじゃないっていう(笑)。
藤井:どころじゃないね。新人賞の応募だったら、ダメなものは「ごめんなさい」って言って横に避けとけばいいんですけど。
小飼:あと、どれが売れるかっていうのは、これが工業製品だと、いい悪いっていうのはビシッと決められるわけです。性能というのは、押し量ることもできるわけです。おかげで、たとえば、ベンチマークの時にチートコードを中に入れるとかっていうのも出てくるわけですけども、文芸作品の面白いっていうのは、これまた別で、読者も千差万別なようでいて、よく売れる、よく読まれるっていうのも、これまた変わってくるわけですよね。なろう系がこれだけ出てきたっていうのも、チープに仕入れられるっていうのも大きいんですけれども、読むのも楽、あんまり脳が疲れないっていうのもかなり大きいと思いますよ(笑)。
藤井:でも、あれだけのテキストのボリュームのテキストを読んで楽しむっていう体験は間違いなくエンターテイメントで。仮にですよ、『転スラ』クラスのボリューム27巻とかやつをo1-previewとかにやらせたとして、本当誰がレビューするんだろうなって。大変だと思いますよね、こればかりは。生成AIで絵を作った時っていうのは、レビューはかなり短い時間で、小説に比べるとね、けっこう短く済むんですよ。もちろん絵を描く人にとってしてみると、ここのタッチがちょっと油絵から出力したはずなのに、ここに絵の具が透明にかかっちゃってるよ、おかしいじゃんみたいなのとかわかりますし。
小飼:あと指が6本ある。
藤井:それはすぐにわかるから(笑)。
小飼:だいぶ減ってきてる。
藤井:だいぶその辺は減ってきてる。音楽作るやつとかも、ゲームミュージックとか最近AIで作ってるケースあるじゃないですか。でも聞いてると、おかしいところがけっこうあったりするんです。たとえば、ドラムセットが曲が始まった時と終わる時で変わってるんですよ。4タムのドラムだったはずなのに、なんかタムが6つに増えてるぞとか、さっきまでは、このブレークに使ってるタムなかったろうとか、チューニング変わってるじゃん、バスドラム4つとか5つとか持ってるのとか。変わるんですよ。それはドラマーの人にとっては我慢のならない違いなんですよね。ドラマー10人とかやってきて録音するのか、それ。っていうか、俺に叩かせろみたいな。だけど、それをゲームに使う人にとってみると、けっこうどうでもいい差だったりとかするわけですよね(笑)。
山路:99パーセントのやつを求めようとすると大変だけど、80点くらいなら、いっぱい作れるみたいな感じの。
藤井:いや、それがね。だから我慢できる出力の形態とできない形態があって。作家側、作ってる側からすると我慢できないものがかなり増えるんですね。当事者だったら。小説ってけっこう、我慢できないレベルが、かなり我慢ができないと思うんですよ。
山路:確かに、1文字間違ってても、イラスト1ピクセル絵で間違ってても誰も気にしないとは思うけど、
小飼:あっとね、オブジェクション(異議)言わないと。
山路:えっ? 今のどこにオブジェクション?
小飼:あのさ、なろう系とかはさ、本当に誤字、脱字だらけですよ。
山路:あ、そっか、そっか(笑)。
小飼:で、誤変換、過変換だらけだけれども、読まれるわけじゃん。で、いちおうこれが売れるのであれば、商品化される時に、そういうところっていうのはある程度直されるじゃん。アニメ化された場合とかっていうのは、さらにプロットとかっていうのもおかしいところっていうのが直されたりするわけじゃん。だから、じつはけっこうドラフト段階、あれこれおかしいぞっていうのがいっぱい混じってる段階で、だから演奏ミスがいっぱいある段階でも、意外と人って聞いてくれるんじゃないかという。
藤井:それありますよね。
山路:なるほど。商業出版の編集者がいろいろ書き直し、いろいろやりとりしてるような段階が、もうウェブ投稿の。
小飼:だから僕みたいなうるさい奴のことというのは、聞いちゃダメなんだよね。本当思う、だからなんでここは等幅フォントじゃないんだとかね(※編注:『マン・カインド』の本文中、コマンドの記述については等幅フォントにすべきと主張している)。
藤井:ごめんなさい(笑)。
小飼:そういうこと言うのは(笑)、
山路:本当に読者の言うこと聞いちゃダメですよね。
小飼:あんま聞いちゃダメなんですよ。
藤井:気づいて直す、プログラムコードの中に「¥」が入ってるとかね、ここバックスラッシュだろっていう。
小飼:その通りですね。
山路:逆にいろいろ背景を想像させてしまいますよね。バックスラッシュでなくて「¥」が入ってるっていうのは(笑)。
小飼:でも文芸作品の場合っていうのは、そういうのは必ずしも瑕疵ではないんですよね。だから本当にアバタもエクボというやつ。もうアバターもエクボというやつで(笑)。結局のところ、AIが明らかに人間よりも強いって言えるものというのは、強いルールを設定してあるんですよね。囲碁にしても将棋にしても。これがもっとお金が儲かる部分だとすると、だからプロテインフォールデイング、タンパク質の畳み込みとか、そういったところっていうのはもうガッチシ、どっちがいいのかっていうのが判定できるじゃないですか。
山路:そうか。小説なんかって何が面白いのかっていう判定基準みたいな、そういうルールとかがまだ誰も知らないというか。
藤井:あと、難しいのが小説だったり絵画だったりとか、このパブリッシュするものに関しては、誰か説明できないと、アカウンタビリティが必要なんですよね。出版した人は。説明できなきゃいけないんですよ。そういう意味では、説明できるんだったら全部AIで出したっていいんじゃないの? っていうふうに私なんかは思うんですけど。もちろん。
小飼:これでいいのだ、ができれば。
藤井:そのAIが適切に作られているという前提が必要ですけどね。とはいえ、
山路:最近、OpenAIがo1を発表した時に言ったのが、途中のchain of thoughtsは明らかにしないですよって。とりあえずo1に関しては、もうそれでいきますよってことを宣言した。途中で不適切な考えがあったとしても、それを明文化すると問題になってみんな使えなくなるんだったら、頭の中で考えているようなものは非表示にすることによって、より高い推論とかを実現するようにしますよみたいなことをOpenAIは言っていたりするんですよね。それが今後どうなるかっていうのはわからないですけれども。
藤井:でも、AIに関して言うと、透明性を求めているカリフォルニアだったりとかEUだったりとかの規制との当局とのやり取りの過程で、研究者たち、開発者たちも考えるところがたぶん増えてくると思いますね。
-
小飼弾の論弾 #285 「数学や科学の問題も解ける「OpenAI o1」、世界を震撼させるレバノンの遠隔爆弾テロ、光で冷える半導体」
「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!今回は、2024年9月24日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2024年10月8日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2024/09/24配信のハイライト
- 立憲代表選とアメリカ大統領候補討論の「グダグダ」と「怖いところ」
- キリル文字廃止とその影響
- 「マスク対ブラジル」と「製造業は金貸し化する」
- 視聴者質問「コンシューマーゲーム機の今後」
- Vision Pro感想と「OpenAI o1と思考過程のコンプライアンス」
- 「AIと原発」と「光って冷却」
立憲代表選とアメリカ大統領候補討論の「グダグダ」と「怖いところ」
山路:先週というか、9月21日の土曜日に、筑波のほうで『子供の科学完全読本』のイベントをさせていただきました。この番組の視聴者の方も何人か来ていただいて、本当にありがとうございました。
小飼:ありがとうございました。
山路:おかげさまで、イベントで本も売れたとのことで書店や出版社からいろいろいい報告をいただきましたので、ありがとうございます。あと大阪のジュンク堂の大阪本店で、総合の9位まで『子供の科学完全読本』が行ったということなので、大阪の人、どうもありがとうございます。これから弾さんも、しばらく大阪にはもう少しちょっと手心を加えた形でコメントをすることになるんじゃないかなと思うんですけど(笑)。Amazonでも1回、総合80位だったから90位くらいまで行ってましたよね。
小飼:いや、こういう判型の大きな本っていうのは、それだけでちょっと売れにくくなるのかなっていうふうに、ぼやっと思ってたんですけど。いや、児童向けのジャンルの本っていうのは、あんまり判型関係ない。むしろある程度大きくないとダメだみたいなことを担当編集者の柳さんが言ってて。柳さんの勝利でしたね、そこは。確かにさらに上の順位には絵本がいて。確かに絵本というのはものすごいベストセリングのジャンルですし。だからもちろん判型も大きいし。そういう意味で見ればそうだなと。でも、どちらかというと、そうそう、原材料は子供向けの本ではあるけども、じゃあ全体的な内容が子供向けかというふうに見ると。
「子供の科学とても面白かったです」(コメント)
山路:どうもありがとうございます。本当に。こういうフィードバックって、読者の方が思う以上に著者に刺さるというか、嬉しいものなんですよね。いやいや、本当にそういうことを言っていただけると、作ってよかったと改めて思いましたね、どうもありがとうございました。
小飼:ありがとうございます。
山路:では、そういう気持ちのいい話をしたところで、さっそくあんまり気持ちの良くない話からいっときましょうか。
小飼:そういう苦い話題から逃げないように(笑)、当番組の。
山路:立憲民主党の代表選が行われて、野田元首相が代表に選ばれたという。
小飼:いやもう本当に、もうバッカじゃねえのというのか。僕ぐらいのおっさんには、かつての社会党、現社民党の凋落具合というのを彷彿とさせるというのか。
山路:歴史は繰り返すというか、歴史というか、同じメンツが同じことを繰り返しているという感じがしますよね。
小飼:いや、でも、ここまでもろ同じメンツだとは思わなかったよね。だから、よりによって、民主党を下野させた主犯じゃん。
山路:野田元首相。
小飼:立憲民主党を作る時というのか、民主党が二つに割れた時に、立憲民主党のほうを作った時というのは、野田を入れるかどうかというので揉めたじゃないですか。
山路:ああ、なんかありましたね。
小飼:だから結局重鎮だからというので、入れたところがもう間違い。だからこれはもう社会党が社民党になったのと同じような零落の仕方をする。だから、さらにばらけた上で、さらに粉々になる運命しか見えないよね。
山路:野田さんて、野田、公人だから野田と言うべきか、
小飼:別に「さん」つけてもいいんだけども。
山路:野田元首相って消費税を5パーセントから10パーセントに上げた、
小飼:そうです。張本人の一人と言うべきではありますよね。だから、まさにそれで民主党に引導を与えたわけですね。
山路:いやあ、本当に立憲民主党は選挙で勝つつもりがあるのだろうかと心配になるところではありますけれども。
小飼:だから今のところはオウンゴールしかないよね。積極的に立憲民主党を支持している人というのは、積極的に自民党どころか、維新を支持している人よりも少ないだろうね。維新があんなにグダグダになっているので、こう言っちゃなんだけど、ちゃんと千載一遇のチャンスというのをここでつんのめっているんだから、笑いが止まらないよね。だから、自民党から刺客が出ているとか、わからないけど。
山路:野田元首相が代表に選ばれて、自民党議員はガッツポーズをしたという噂も聞きましたけれど(笑)。
小飼:そうだろうね。
山路:一方、自民党のほうも、
小飼:いや、なんだけど、その前にやっていた泉だっけ?
山路:そうですね。泉代表。
小飼:も維新と組むとか、その時点でお前ら滅びていいよ。
山路:本当に与党になれれば何でもいいのかって、
小飼:だから、この様子だと、本当にそこまで俺に共産党に一票を入れさせたいのかという感じだよね。
山路:入れるところのないときの共産党ってやつですよね。
小飼:その通りです。
山路:一方、自民党のほうの総裁選、いろいろ。メディアは小泉氏が議員支持で先行みたいな記事が出てたりしますけれども。今週ですよね、たしか自民党の総裁選。
小飼:そうなの?
山路:だったと思いましたけれども。いやー、なんかね、あんまり希望の持てる感じになるような気は、どうなんだろう、そんなに期待感は私の中では高まってないですけど、弾さんいかがでしょうかと。
小飼:いかがでしょうか。そういえば、公明党も代表代わったよ。
山路:それがなんだと(笑)、
小飼:だからなんだと。
山路:あれほど波風の立たない代表交代はないですよね。
小飼:いや、なんだけども、そもそも連立与党の一角を成してるっていうのが、そうよ、カルトよ。だから、自民党は統一教会で、公明党は創価学会が要はバックなわけやん、票田なわけやん。
山路:宗教団体、本当にどの国でも強いっすねっていう、改めて。
小飼:やっぱり狂信者強いんだよね。
山路:ヒヤヒヤしながら聞いてますけれども(笑)。国際的な文脈のところで、今一番でかい話題になっている話というのに先、行っておきましょうかね。びっくりしたのが、レバノンの遠隔爆弾テロがあったんですけれども、これ驚きませんでしたか?
小飼:まさか、よりはやはり。
山路:やはり?
小飼:ではあるね。まあ率直に言って無差別テロなんですけども。そこの部分というのがやはり、まあこう言っちゃなんだけども、もはやイスラエルがテロリスト国家であるというのは、イスラエル自身ですら否定してないですよね。だからそこは驚かないんだけれども、驚いたというのは、こういった電子的なハイテクな無差別テロというのを、ここでやるかと。
山路:そのタイミングが、ということ?
小飼:タイミングがというのか、そういう能力をじつは持ってますというのと、それをこの場で使うというのと、それほどのターゲットだったのかという。
山路:ヒズボラが?
小飼:いや、でもそもそもレバノンとは戦争してないわけですよね、今は。
山路:国同士の話ではないですよね。
小飼:というのか、もういつもやりたい放題してますけども、イスラエルはレバノンでは。実際そういう能力を持ってるっていうのと、それを実際に使ってしまうというのは別で、そういった意味では今のネタニヤフ政権というのは、出し惜しみしてないという言い方はできますよね。
山路:戦力の逐次投入の真逆をいってる。そういう意味では思い切りがいいやり方なんかもしれないですけども。それにしても、遠隔爆弾の手法について言うと、すごいくないですか。ハンガリーにトンネル会社みたいなのを作って、そこでポケベルに爆弾を仕込んで、あるいは日本製のトランシーバーなんかに関しても、コピー品なのかどうかちょっとよくわからないんですけれども、そういうのをどこかルートの途中で。
小飼:要は毒を仕込んでいたわけですよね。
山路:数千台単位じゃないですか、どれも。
小飼:数千台単位です。
山路:こんなことを、しかもイスラエルがやったろって非難されて、別にそれに関して公式に否定もしてないわけじゃないですか。
小飼:否定もしてない。
山路:っていうことは、普通はやったと思われてもしょうがないですよね、国としてやったと。そういうふうになった時に、イスラエルの企業が関わるようなサプライチェーンとかって、ものすごく疑われることになりませんか。
小飼:もちろん、それは。
山路:それって彼らは覚悟の上なんでしょうか、ちゃんと。
小飼:ね。
山路:先進国の中での商取引とか、モノを売るとか、経済活動の中でハブられるっていうリスクを全く考えてないのかなっていうところ、それもびっくりなんですけど。
小飼:なんでそこに踏み切れてるかって言ったら、
山路:アメリカ?
小飼:その通りです。だからもうはっきり言ってしまうと、アメリカにとってのイスラエルというのは、日本にとっての統一教会みたいなもんです。
山路:(笑)怖い。
小飼:はい。統一教会よりもさらにガッチリ食い込んでるわけですよね。
山路:それこそ一国の軍事だったりとか、諜報戦を動かしてるわけですからね。
小飼:そういうことです。
山路:いやー、なんていうのか、それは安保理でもう何にも進まなくなるわっていう感じが。
小飼:だから安保理が機能しない、明らかな理由の一つというのか、そもそも安保理の仕組み自体がもうなんて言えばいいのかな、機能しない組織の代表例みたいなもので。
山路:まあ、当面のところ落ち着く様子が見えないですけれどもね。ちょっとレバノの話が出て、アメリカの話が出たついでに、アメリカ大統領選のことも触れときましょうか。前回『論弾』をやった同じ日に、確か討論会があったんですよね。そこでいろいろトランプが、わりと出来がひどかったという。
- 【米大統領選2024】討論会でのファクトチェック、公平性は - BBCニュース
- Pope Francis urges Catholics to pick ‘lesser evil’ between Trump and Harris
小飼:だから、ハリスが勝ったというよりも、トランプが自滅したというより、自滅するように持ってきましたね。
山路:移民がペットの犬猫をさらって食ってるっていう話はおかしかったですよね(笑)。
小飼:Save the dogs, save the catsってやつね。
山路:マジかっていう、ハリスの顔もなかなか「何言ってんだ、この人は」みたいな顔が、なかなか役者やなと思いましたけれども。これっていうのが単純にSNSで笑いになっているだけじゃなくて、外交的にもネタの対象になっているという。ドイツの外務省が、トランプのそういう討論会での発言に関して、いろいろ間違ったところがあるぞと、ドイツは再生可能エネルギーちゃんとやってうまくいってぞということで反論したんですけど、その手紙の追伸のところに、我々も犬や猫は食べませんというのを、そんな別につける必要もないのに、とりあえずPSでついているという(笑)、公式文書ですからね。すごい世界ですよね。
小飼:いや、でもさ、普通あそこまでグダグダだと、もうそこで勝負あったとなるんだけど、そうでもないというところが。
山路:怖いですよ。それが一番怖い。
小飼:そこが一番怖いところです。
山路:頭のおかしい候補者って、言っちゃあなんですけど、いくらでもいるじゃないですか。
小飼:アタオカは、民主制というのはそういう、アタオカ候補者を防ぎようがないんですよ。
山路:候補に名乗り出ること自体は、もうはっきり言って自由にすべきというのがある意味民主制ではありますもんね。それにしても、アタオカをフィルタリングする機能がアメリカは弱くなっていませんか?
小飼:いや、だからもともとフィルターしてたかどうか。で、じつはアタオカの定義というのも、時代とともに変わってくるわけですよね。だから奴隷制というのも、別にアタオカではなかった時代というのはあったわけですよね。だけども、少なくとも科学的な話題というのは、わりとアタオカかどうかというのが、はっきりわかるところですよね。だから、そもそもポストトゥルースという言葉が出た時点で、もうこれは真っ黒なわけです。100パーセント黒いわけですよ、アタオカ指標としてはね。
山路:ポストトゥルースね。
小飼:ポストトゥルースというのは、はい。
山路:いやー。で、その大統領選に関してローマ教皇がコメントしてるという。これ、けっこう面白いコメントでしたよね。どっちも悪い奴らなんだけども、よりlesser evilのほうを選びましょうやと。「棄権はしないようにね、アメリカ国民」みたいなことを言って。
小飼:それはなぜ、なぜそれがギリギリの線かというふうに言ったら、やはり妊娠中絶というのは肯定はできんわけですよね。
山路:カソリックですもんね。
小飼:そうです。でもそれ以外のものというのは、やっぱりアタオカなわけですよね。
山路:いやー、良心があるものなら誰もがこれについて考えるべしみたいな、lesser evilを選びましょうというのは、なかなか踏み込んだ発言ではありません、つまり、自分自身は投票権もないわけじゃないですか、アメリカ人ではなくて。それでアメリカ人に対して、投票に関して多少なりともそういうことを言うというのは、なかなか最近のローマ教皇は政治的な発言をするなと思いましたけども。
小飼:というのか、実のところかなり政治的な団体ではある。
山路:あー、バチカンというのがそもそもっていうことね。昔から確かに、何が遺憾であるとか、そういうみたいなことで圧力をかけていたりはしてましたしね。
小飼:昔から。僕にとっては統一教会も、正統教会、英語で言うとCatholicも、どちらもカルトなんですけどね。
山路:(笑)弾さんにとってカルトの定義とは? 科学的合理性に基づいてないみたいな感じ?
小飼:いや、だから物証を否定する皆さん。
山路:エビデンスベースではないという。
小飼:はい。
山路:お気持ちで。
小飼:エビデンスベースではないというよりも、要するに証拠を認めない連中。もっと具体例が欲しければ、ドーキンスの本を読んでください、『God Delusion』という本があるので。
キリル文字廃止とその影響
山路:じゃあ、ちょっと国際ニュースの文脈でこれも取り上げていこうかなと思ったのが、旧ソ連諸国でキリル文字の廃止の動きというニュース。ホンマかいなと思ったんですよ。これ、報道しているのが『モスクワタイムズ』という報道機関で、もともとはロシア在住のオランダ人の方が創刊した雑誌らしいんですけど。最近、ロシア政府に目をつけられて、危険な報道機関みたいなふうに、ちょっと冷や飯を食ってるみたいな立場にあるらしいんですけど。カザフスタンとかキルギスタンとか、そういうふうなところがどんどんキリル文字を廃止して、トルコで使われているアルファベット、
小飼:トルコって文字を切り替えた先駆けですからね。もともとアラビア文字を使っていたのを近代化というよりも、アタチュルクの革命による一環としてラテン文字に切り替えたわけですね。でも、ラテン文字だけだと、発音の表現とかできなかったので、どういうふうにアクセントをつけるとかっていうのも一緒にやって、じつはそれがトゥルク系のトルコ語以外の、
山路:共通文字みたいな。
小飼:そうそう、言葉でも使われるようになって。なんですけど、その一方で旧ソ連の共和国、現在は独立国だったというところは、旧ソ連だっただけあって、キリル文字を使っていたわけですよね。だからその意味では一種の文化革命ですよね。
山路:これが旧ソ連のほうがキリル文字を手放して、トルコのほうのアルファベットに切り替えようとしているというのは、やっぱりトルコの影響力が文化的にも強くなってきているということは、それが言える?
小飼:だからそれはロシアの影響力が弱くなってきているというふうに言えるわけですよね。
山路:なるほど。ロシアって自分たちが思っているよりも、はるかに旧ソ連の国から嫌われていませんか?
小飼:それはそうよ。ウクライナとはもろ戦争をしていますけれども、戦争にはなっていなくても。でもやっぱりそれで決定的に大きくなったの、なんと言えばいいのかな、見放すきっかけになったというのはアゼルバイジャンとアルメニアの戦争でしょうね。これで、もうはっきり、ロシアはアルメニア側についていたわけですよね。なんですけど、もうほとんど手も足も出なかったという。
山路:実力としてぜんぜんダメダメだったという。
小飼:ぜんぜんダメダメだったと。ぜんぜんちゃんと助けてくれなかったと。
山路:来年だったか、ロシア、軍事費もGDPの3分の1になるんじゃないかというふうなことまで言われていますよね。
小飼:そこまで継ぎ込んでも、こう言うのもなんだけど、あの程度しか勝てないと。なんだけれども、それでもやめないというのは独裁政権のまさに弊害だよね。いや、旧ソ連というのも党独裁ではあったけども、個人独裁ではなかったわけですよ。
山路:そうか、いちおう、なんか権力争いというブレーキが効いたところはあったんだけど。
小飼:その通りです。だから、それで形だけの選挙はやってるけれども、独裁度というのは上がってるわけですよね。だから、もう被害額で見れば、明らかにアフガニスタン侵攻を上回ってるわけですよね。アフガニスタン侵攻の時には、ソ連軍の人的被害、戦死者というのは2万人程度だと言われています。
山路:今回、60万人とかでした?
小飼:60万人はさすがに行ってないけど、10万人超えるというのは確かでしょうね。戦傷者だと、それくらいいくかもしれないな。
山路:いやあ、怖い話ですよね。
小飼:文字を変えるというのは、他の国の歴史でも見られるところで、日本に近いところだと、
山路:韓国?
小飼:そうです。韓国、朝鮮とこの場合はあえて言いますけども、が、ハングルに切り替えて。
山路:韓国ができる前ですもんね、ハングルが作られたの。
小飼:その通りです。なんですけど、ハングルができた当初というのは、あくまでも正しい文字というのは漢字であって、二級市民だったんですよね、血筋は。
山路:今はもう、公文書もハングルで。
小飼:というのか、若い世代というのは、漢字がわからないんじゃないかな。
「言語は変えないまま文字を変えると人間の思考に影響するんだろうか」(コメント)
小飼:あり得るな、それは。どういうふうになるのかというほどの知見は持ってないんですけれども。
山路:言語って音声と文字と両輪である意味、機能しているところがあるじゃないですか。
小飼:あくまでも音声のほうが先というのか、主なんですけども、仮に音声がダメでも、生まれつきの聾唖者しかいないコミュニティでは手話が発明されるというのがわかってますからね。
山路:あと、文字と音声ということでいうと、日本語ってめちゃめちゃ同音異義語が多いですけど、ある意味、文字で読んで知っている識字率の高さによって、それが補われているようなところもあるのかなとは思いますし。
小飼:そうなんですよね。かな漢字混じりのおかげで、正気が保てているというところはすごいありますよね。
山路:ただ、本当に言語って文字も音声も固定されているものじゃないから、たとえば、仮にキリル文字を使っていた旧ソ連諸国がトルコのアルファベットに変えたところで、最初のうちは不都合とか、それでうまく表現できないみたいなこととかもおそらく出てくると思うんだけど。それって世代を重ねれば、ある程度、修正されていくというか。だから、たぶんそれで不都合は、数十年単位で見たら、なくなっていくんじゃないかなと、個人的には思いますけれどもね。
小飼:あと、もう一つあった。イスラエルがヘブライ文字を復活させています。ヘブライ語そのものも復活させています。
山路:現代ヘブライ語。すごいですよね。読み方がわからない言語を、現代に蘇らせて、それをみんなで使うようにしようって。いきなりエスペラント語をみんなに覚えさせるみたいなノリじゃないですか、言ってしまえば。
小飼:まだエスペラント語のほうというのは、スペイン語とかイタリア語とかポルトガル語とか、あの辺が原流として強いので。もし知っているとある程度、エスペラントでいいかなと。
山路:大変だろうな。切り替えた当時のイスラエル人、大変だったろうなという気がしますけどね(笑)。
「漢字なくなったら日本人の思考は変わるだろうな」(コメント)
小飼:いやでも、戦後直後、そうなりかけたんだよね。
山路:ローマ字運動みたいな。
小飼:というのか、漢字廃止というのか。川端康成もそうしろとか言ってなかったっけ?
山路:でも、仮にそれをめちゃめちゃ強要されたとしたら、アルファベットだけになったとしたら、新しいアルファベットで同音異義語とか区別できるような仕組みというのがおそらく生み出されるとは思うんですよね。
小飼:だからそれがトルコ語ではよく使われている、アクセント記号だとか、セディーユだったっけ? たとえば、Cの下にピリオドみたいなやつをつけるやつ。
山路:しかも、今だったらスマホ時代なわけだから、絵文字とかが普通に補助的な記号として使われるようになるかもしれないですね(笑)。
小飼:あれはなんと言えばいいのかな? 漢字2.0と言えば、そうだよね、表意文字というのもやはり再発明されてしまうんですよね。
山路:ああ、確かにね。
小飼:表音文字のほうが綴り方は覚えやすいんですけれども、でもたぶん人類がどっちを先に使い始めたかって言ったら、明らかに表意文字というのか、象形文字なので、ちゃんとアルファベットも象形文字が元になっているっていうのはちゃんとわかっているんですよね。ちゃんとフェニキアからこういうふうに変わっていっているという歴史はほぼ確定している。
山路:Aが牛の頭とか、そういうのがありましたよね。言語、面白い話ではありますね。
小飼:極めて政治的な話でもある。
山路:確かに言語を変えることによって人の思考をある意味誘導するとか、そういうのはオーウェルの『1984』でも出てきた話ではありますけどね。あれは言葉でしたけど、文字じゃなくて。
小飼:ニュースピークってやつね。
スタッフ:すいません、宗教改革、革命どっちか忘れちゃったけど、あれもラテン語とか関係ありましたよね?
山路:宗教改革のとき?
スタッフ:ルターでしたっけ?
小飼:いや、の時は文字は変えてないけれども、マスプロデュースできるようになったわけです。ルターの聖書っていうのは、刷られたんですよ、活字で、活版印刷で。
山路:それまでは教会に行って言葉で聞くしかなかったのを、それをみんなが自分で聖書の内容を確かめられるようになった。
小飼:もちろん修道院で写本はしてましたよ。でも要するに、読み書きというのが当時のヨーロッパではプロのお仕事だったんですよね。修道士たちという。だから一般の人にもアクセシブルになったという。あと宗教と言語というのではやっぱりイスラム教のやり方というのも、これも特筆すべきだと思いますよ。おそらくキリスト教の聖典、The Bibleというのは世界で一番多くの言葉に翻訳された書物だと思われるのですけれども、逆にクルアーンというのはアラビア語のみなんですよね。翻訳というのはあり得ないんですよね。翻訳というのは、強いて言えば単なる解説であって、だから言語を固定してしまったと。
山路:しかしすごい勢いで広がったじゃないですか。
小飼:そうなんですよね。
山路:ただそれでアラビア語話者ってめっちゃ増えたかというと、そうでもないような。
小飼:そうでもない。
山路:だって使われている話者の数で言ったら、べつにアラビア語というか、上位ではないですよね、決して。
小飼:まあ2億くらいだね。国連の公用語にはなりましたけれども。
山路:これって結局ちゃんとクルアーンを読んでいる人はそんなに多くないということでもあるんでしょうかと(笑)。
小飼:どうなんでしょうね、そこは。
山路:みんな結局のところ、人づてで聞いているとか、翻訳したのを読んでいるというのは。
小飼:いや、でもこの番組でも何度か言いましたけれども、イスラム教を知っているけれども、信仰はしていないという状態をイスラム教は許さないんです。だから入信していない人たちというのは、知らない人たちと断言していいんですよね。
スタッフ:じゃあここまでの話を聞いている限り、こちらのニュースは後々の歴史に残るようなことになるという。
山路:キリル文字の経過、
小飼:キリル文字を廃止するという。
山路:世代をまたがってそれが進んで、そういうふうに変わったということがあったら、たぶん言語史的にも、世界の歴史的にも、おそらく世界史の教科書には載ることになって、受験生が覚えることが一つ増えますなと(笑)。
小飼:仮にロシアが再占領してキリル文字を復活させたら、それはそれでやっぱりニュースになる。
山路:うんうん。
小飼:でも、セルビア・クロアチア語みたいに両方の表記の形式がある言語というのもありますからね。クロアチア語といった場合にはラテン文字なんですよ。セルビア語といった場合にはキリル文字なんです。
山路:へええ。
小飼:でもどっちもほぼ同じ言語だと。
山路:あの辺のスラブ系の言語、影響を受けてたりとかそういうこともあって、変えやすいというのはあるんでしょうけどもね。語彙は同じで、表記法とかもかなり近いものにしてあるというのはあるかもしれないですけど。
小飼:いちおう、どちらもルーツはギリシャ文字なので。
山路:じゃあもう一つ、ちょっと国際絡みで今度は、
「仲悪いからです」(コメント)
小飼:その通りです。だからちゃんと仲の悪さをスクリプトでも分けているというね、文字でも分けているというね。ブラジル対イーロン・マスク。はい。
「マスク対ブラジル」と「製造業は金貸し化する」
山路:いかがですか、これ。これっていうのは珍しくイーロン・マスクが折れた話。
小飼:ヘタレ。
山路:ヘタレって(笑)、
小飼:いや、もうはっきり言ってヘタレだよ。
-
小飼弾の論弾 #284 「20世紀前半の夢と希望そして戦争を小飼弾が語る『子供の科学 完全読本1924-1945』、Apple新製品のポイントは?」
「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!今回は、2024年9月10日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2024年9月24日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2024/09/10配信のハイライト
- 『子供の科学完全読本 1924-1945』紹介
- 「昭和2年に予想した未来の家」に足りないものは?
- 横書きが変更になった理由は?
- 「戦後最初のベストセラー」と『完全読本』紙版電子版の違い、イベント告知
- Apple新製品発表会の感想
- 「マングース根絶」と「気候変動と農業」
『子供の科学完全読本 1924-1945』紹介
山路:今日は小飼弾著の新刊ということで、『子供の科学完全読本 1924-1945』という書籍を思いっきり宣伝させていただこうかなということなんですが。それでこの書籍を企画されて、なおかつ『子供の科学』雑誌の元編集長だった柳千絵さんをゲストとしてお迎えしております。よろしくお願いいたします。
柳:よろしくお願いいたします、お邪魔しております。突然すいません。
小飼:本物の産みの親ですよ。
山路:そうですよね、この書籍の産みの親ですよね。
小飼:で、育ての親が山路さんで(笑)、
山路:そうなんだ(笑)、親なんだ、私(笑)。
「矢崎さん以前も来られた」(コメント)
山路:あれ、以前って柳さん、
小飼:いや柳さんは初めて、矢崎ではなくて柳です、木偏に「卯」ですね。「柳は木偏に卵」って言っちゃいそう(笑)、
柳:柳の木の柳です、
小飼:そういうことです。
山路:ということで、この後でちょっと書籍の内容とか紹介させていただきたいんですけど、今の『子供の科学』っていうのはまず、今こんな感じになってるんですよね(『子供の科学』2024年10月号を見せながら)。
小飼:これ最新号です。
柳:今日発売になっております、2024年10月号になっております。
山路:派手なめでたい感じの、
柳:本当に今回が100周年のお誕生日なんです。その前の100年前の10月号というのがこちらになります(1924年10月号の『子供の科学』を見せながら)。
スタッフ:100年前の、
小飼:厳密には、レプリカですけどもね、
柳:創刊号はちょっとすいません、ボロボロなんでレプリカを作って、
小飼:ちゃんとレプリカをお作りになって持ってきたという、
柳:大正14年10月号です。
山路:100年続く雑誌ってそうはないですよ。
小飼:日本だとね。なんでそうやって条件を付けるかっていうと、たとえばアメリカだと『ナショジオ』も『サイアム』も、
山路:ああ、『サイエンティフィック・アメリカン』とか、
小飼:もう軽く100年超えてるんです。あと『ポピュラーサイエンス』ももう超えてたはず。
山路:『ポピュラーサイエンス』でそんなに、
小飼:『ポピュラーサイエンス』も『ポピュラーメカニクス』も、
山路:日本版はあっさり潰れましたけどもね。
小飼:まあね。そう、だから日本って科学雑誌受難の国ではあるんですけれどもね。
山路:まあマネタイズ大変なんでしょうな、きっと、
小飼:今まともに出ている一般向け科学雑誌って、下手すると『ニュートン』と『日系サイエンス』だけ?
山路:あと『子供の科学』、
柳:学研さんがキット付きで、
小飼:学研のは別枠というのか、
山路:雑誌じゃないですもんね、今は、
小飼:でさ、あのノリで宝島とか手出さないかな(笑)、
山路:なるほどね、別冊宝島の科学とかね、
柳:面白そう、
小飼:でも、そういうのは置いておいても、まあ何と言えばいいのかな、雑誌全体が弱くなってるんですけど、その中でも何と言えばいいのかな、科学雑誌はあんま強くない国柄なんですよね。
柳:お国柄ですよね、
小飼:その中にあって、ちゃんと100年生き延びたっていうのはすごいことで。
柳:ありがとうございます。
山路:どうして100年生き延びられたかっていうのを番組の後のほうで話しますかね。
小飼:というわけで一番のヒントはちょっと、創刊号の、要するにこれですよ。これが生き延びた秘訣ですよ。
山路:タイトルに注目せよと?
小飼:タイトルに注目せよ、でなくて、これだけ変わってるわけですよね。じゃあタイトルというのか、雑誌名を塞いでみたら、こっちがこっちの子孫だってわかります? あるいはこれの祖先がこれだってわかります?
山路:時代に合わせて変わってきたと。そもそもタイトルの文字も、方向も違いますもんね。
柳:そう、それをすごい弾さんが膨大なバックナンバーを読んでくださった時に、こっち向きからこっち向きになったって、すごい、
小飼:しかもちゃんと理由も見つけて、
柳:書いてありましたね、編集後記に。
小飼:びっくり。
山路:そもそも『子供の科学』、100周年でこういう、弾さんに『完全読本』を書いてみたいな企画をどうしてまた思いついたのかっていう、
小飼:なんで僕だったの?
山路:本当ですよね。
柳:私はもともと弾さんの一ファンで書籍を読ませていただいたり、
「『四季報』より古いじゃん」(コメント)
小飼:『四季報』って意外と短いんだな、すみません、っていうツッコミがきたので、
柳:コメントいただきました。でTwitterとかを追いかけていた時に『子供の科学』をよく子供時代に読んでいたっていうふうにおっしゃっていて、バックナンバー読めるとしたら、いつの時代がいいですかってたぶん、私が編集長時代に編集部のアカウントで弾さんに絡みに行った、うざ絡みをしに行った時に、大戦中のが読みたいってすぐにお返事いただいて、いつか読んでもらおうと思ってまして。100周年で、満を持してというところであります。
山路:ほうほうほう。じゃあ最初から戦前戦中、戦争とかをメインにしたやつを行こうかなとはぼんやり考えていた、そのあたり、
柳:思ってました、
小飼:いや、でも僕でいいの?
柳:いやー、今そんなこと言うんですか、いやだ。
小飼:バリバリの科学者の皆さんからツッコミが来そうで、こんな怪しい中卒のおっさんでいいのかみたいな。
柳:でも愛読者であるって公言している方がまず良かったですし、お二人は『子供の科学』はすごいブルジョワ臭がするってずっとおっしゃってますけれど、私たちが学んできた歴史としては『子供の科学』っていうのは本当に少年技師とか、少年科学者っていう風にちょっと、上から目線なんだけれども、子供を子供扱いしないで本当に君は今ちっちゃいけど、もういっぱしのエンジニアだ、みたいな視線で表現していたので、なんかそういうところが私は弾さんに通じるものがあると思ってました。
小飼:そうなんですよね。
山路:弾さんはどんな感じで子供の科学を読んでたんでしたっけ。
小飼:そこがもう一つの僕でいいのっていうので、僕はじつは一番『子供の科学』を読んでた頃っていうのはお金出して買ってこなかったんですよね、
柳:いいんです!
小飼:図書館で読んでました。『子供の科学』だけではなくて、当然他の科学雑誌というのも置いてあって、まだ当時は日経がついてなかった『(日経)サイエンス』ですとか、もう今はなき『科学朝日』ですとか、当時もうあった『ニュートン』ですとか、でもはっきり言って『子供の科学』が一番硬派でした。何をもって硬派かっていうと、よく飛行機の本物の図面が、模式図とかじゃなくて、本物の図面、青写真が閉じ込みで入ってたり。
柳:こういうやつですよね、たぶんね、
小飼:そうそう、
山路:ガチだったんだ。
小飼:ガチだったんです。
柳:ガチは今でも目指してるところです、編集方針としては。
山路:じゃあ編集方針の話が出たところで、柳さんが編集長だった時、読者の反応だったりとか、あるいは特集記事なんかの反響みたいなこととかで印象にあったこととか、そういうのがありましたら。
柳:そうですね、他の子供向けの雑誌を作っている編集部もそうだと思うんですけど、とってもコミュニケーションを取りたがる読者たちというか、お互いがお兄さんお姉さんといったらそんな年じゃないだろうと言われそうなんですけれど、良き友というか、良きお兄さんであり、お姉さんでありたいという双方向性としてはそういう関係性を目指していて、いろいろトピックスはあるんですけど、たとえば金環日食の時なんかはもう、みんなで見ようって全国の金環日食の最大の時間帯を特集でやって、どこだったら何時から何時、どこだったら何時から何時っていうのを、
小飼:僕はそこの川べりで見ましたね、
柳:ああ、そうですか、
小飼:曇ってたけど、ちゃんと金環の部分というのは見えましたね、いつだったっけ(※編注:2012年5月21日)。当時のiPhoneの性能しょぼいけれども、金環食の写真が、映るかな、これ、
柳:でもいいですね、色はすごいいい感じで出てますね。10年前のiPhoneで撮った、これiPhoneじゃないかな、
小飼:iPhoneでした、よく4Sでこんなの撮れたな、すみません、
柳:午前中でしたよね、こんなに暗くなって、みんなでわーってなって、
山路:それは盛り上がったでしょうね、
柳:盛り上がりましたし、科学の入り口としてはかなりエンターテイメントなショーだったので、
小飼:ちなみにですね、今年だったっけ、皆既食がアメリカ中西部であって、ちょうど次女がその辺に留学してたので、次女もちゃんと撮ったみたいです。
柳:ああいうのは本当に感動しますし、ああいうのから興味を持ってもらうっていうのはすごい、いい体験だと思うので、そういうのは積極的にお勧めするようにはしてますね。
その時はそれを撮った、本当は子供の目に悪いので直で見てはいけないじゃないですか、うちの会社でも眼鏡を作ったりしてたんですけれど、どんなものが見えたか、感想を募集しまして、みんなで見たっていうのはすごく楽しみましたし。
あと311の時も編集部にいましたけれども、もうその時はまだスマホもなかった時ですから、子供たちはもうこれは一体何なんだと、なぜなんだと、これはどうしたらこんなことが起きないようにできるんだとか、そういうハガキがいっぱい来たので、それも並べて写真を撮って、みんなの気持ちはわかるし、同じことを思っているよっていうのは伝えました。そう、これもやりたかったんです。山路:(『子供の科学 完全読本』の地震の記事を見せながら)これって後から柳さんが、
柳:すいません、ゴリ押し(笑)、
山路:この記事は絶対に取り上げてほしいって言って、三陸沖地震発生っていう、
柳:そうですね、これは1933年、昭和8年の5月号に掲載されていた記事です。
山路:(コメントを見ながら)すでに創刊号の電子版をポチっていただいた方が、
「創刊号のこの雑誌の役目が硬派だわ」(コメント)
「少年少女からの投書なんてあるんですか?」(コメント)
小飼:って、そういうのがずーっと途切れなく続いてたところも、すごいところですね。これはもう本当に『子供の科学』の面目躍如というのか、
柳:子供たちの質問コーナーは、100年前から今でも続いていますし、あと発明、こんなの思いついたっていうのも、ずっとやってますし、こういう研究をしますっていうのも、ずっとやってるんです。今回のこの本でそこがそんなに取り上げられてはないんですけど、読者の広場みたいなのはたくさん掲載させていただいたので、ぜひ本書をご覧ください。
小飼:そうなんですよ。
「昭和2年に予想した未来の家」に足りないものは?
山路:コメントでもあった創刊の辞みたいなところが、
柳:編集長は必ず読まされるところですね、
山路:そうなんですか。
柳:もちろんです、「この雑誌の役目」っていうページがありまして、この雑誌の役目っていうのが非常に編集方針をそのまま語っているものになっています。
山路:これってそのまま入れてましたっけ?
柳:本書には抜き出して、ここのリードに入れたんですけど、
山路:ああ、そうかそうか、そうだ、リードで入れたんだった、これですね。
スタッフ:じゃあ映します。
柳:創刊号の1ページ目に書かれた「この雑誌の役目」に書いてあることを今、抜き書きでここに書かせていただいておりますが、「天地の間にはびっくりするような不思議なことや面白いことで満ちている、これを知っているのは学者だけで、その人たちは忙しいから皆さんにお知らせする暇がありません。したがって多くの方はそれを知らずにおります。特に少年少女諸君の喜びそうなことを、学者の方に伺って載せていくのもこの雑誌の役目の一つです」と言っているんですけれど。あとはここで抜き書きできなかったんですけれども、「科学という規則を明らかにして、それを応用することによって無理のないように生き、楽しく暮らすことができ、これを応用して世が文明に赴くのだ」というのを、最初はけっこう高らかに宣言しているんです、創刊の編集長だった原田三夫という人が書いた言葉になります。
山路:今リンク出しましたけど、『子供の科学』初めて物語というマンガ(笑)、
柳:ありがとうございます、
山路:原田三夫という初代編集長といえばいいのかな、
柳:編集主幹で創刊をした人ですね。
山路:この人がまぁ熱い人だったというのは紙面からも伝わってくるんですけど、マンガでは好漢、なんていうか熱血漢として描かれているんですけれども、この『子供の科学』、昔のやつでいろいろ読んでいると、単にいい人でもないですよね(笑)、
柳:そうですねー、
山路:かなりめんどくさい系の人ですよね(笑)。
柳:自伝を読むとちょっといろいろ考えさせられますが、でも本当に東京帝大出たインテリで、しかも商売っ気もあるので、どうしたら本が売れるかということも考えられる文筆家、科学ジャーナリストでした。
山路:それにしてもこの、上から発言多いですよね、この原田三夫さん(笑)。たとえばちょっと『子供の科学』の発売が遅れた時あったんでしたっけ、その時に1ページぐらいにわたって、それは俺たちのせいじゃねえ、
柳:印刷所のせいだって書いてありましたね、
山路:それ書くの? みたいな(笑)、大人じゃないなこの人はっていう。あとこの本の『完全読本』のほうでも紹介させていただいたんですけれども、戦時中、紙の交換、後で戦時中の話出しますけども、その時に新しい雑誌を買うには古い雑誌を出して、みたいな話が出てくるんですけど、その時、『子供の科学』っていうのはそんなところに安々と出すようなもんじゃねえんだみたいな、他の雑誌出せとか書いてあるんですよね(笑)。
小飼:そうそうそう、
柳:けっこう文体も、ラジオの作り方とかも「わけなくできます、試してごらんなさい」みたいな、なんかちょっと先生的なお立場で書いてることが多いですよね。それはちょっと今の編集部ではあんまり考えられないですけれども(笑)。
山路:かなり、やっぱり全般的にインテリ臭すごいですよね、昔の『子供の科学」は、
柳:まぁそうだったと思いますよ。
山路:そういう感じでかなり熱い人ではあるんですけど、その自伝とかもちょっとちらりと、柳さんに聞いたところでは原田三夫という男、かなり飛ばしてたというか、
柳:破天荒ですし、女性も好きだったみたいですし、
山路:科学と女性が大好き、
柳:あと宇宙が大好きで、宇宙開発っていうことの未来予想もたくさん書いている人でした。今回の本でも紹介してますけれども、
小飼:今回の本のどこまでネタバレしちゃっていいのか、わかんないんですけれども、じつは当時の『子供の科学』の予想で一番量的に外してたのが、宇宙開発、
柳:そうかもしれないですね。ベースの知識はあっているのに、いつ人類が月へ行くだろうかというのは、
小飼:原理はあっているんです、液体燃料ロケットを多段式にすれば月にも行けるんだよっていうのは書いてはあるんだけれども、じゃあいつ頃かといった時に、ちょっと、
柳:皆さん、予想してみてください。
小飼:当時の人がまだスプートニクの前ですね、
柳:たとえば昭和7年頃のスーパーインテリたちが予想した、人類が月に到達するのはいつ頃だと、子供たちに説いていたでしょうか? 私が言ってもいいですか、
小飼:いつ頃だと思ったのか、
柳:子供たちに教えていたと思いますか?
小飼:1932年の予想、2000年、21世紀中頃、
山路:おー、いいところをいっていますね、
小飼:コメントで、これがこんな感じで、
柳:ああー、
小飼:答えはですね、2050年と。
山路:2050年の初秋と、
柳:予想されていた記事がありました、
小飼:およそ80年もずれているんですよね(笑)。ちなみに80年というと、ライト兄弟の初飛行が1903年なので、チャレンジャー号の1年前ぐらいですね、
山路:現実がいかに進んだかという、
小飼:現実がいかに進んだかという。ドラえもん22世紀だったかな、22だったか23世紀だったか、どっちだっけな、
柳:ネタバレになっちゃうからね、こちらがいちおう正解の記事になります、当時の予想は2050年となっていました。
山路:わざわざ秋って書いてあるのは、たぶん中秋の名月とかにかけたのかな、
柳:あーそうかもしれないですね、
山路:うさぎと月みたいな感じのところを、月見てどうのっていう形で初秋って書いてあるのかなと思いました。
小飼:ちなみにドラえもんの誕生日ですけれども、当初は2012年9月3日だったのが、100年遅れにされました、ちょうどそれから。
山路:そうなんだ、
柳:じゃあもういてもおかしくなかったんだな、
小飼:でも、その前にタイムマシンどうするんだ、
柳:タイムマシンがないんだ、まだ。
小飼:ドラえもん自体はたぶん可能だと思うんだよね、4次元ポケットとか、要はポケットの中身なんだよね、問題は、
柳:そうですね、ロボットとしてはありますね。月というのは『子供の科学』の創刊号の科学の入り口という意味で月が描かれたという風に言い伝えられておりますので、月っていうのを子供たちにどう紹介するかっていうのは当時からずっと、天文現象をよく紹介しているのと同じで、大きなテーマの一つですね。
山路:今、月世界旅行の計画という記事を映していますけど、これは原田三夫さんが直接書いているんですよね。
柳:そうですね、
山路:熱い思いを。語っていること自体は今でもそんなに間違ってないというか、
小飼:いや、でもけっこうすごいのが「ゴダードの試練」って書いてあるでしょ、原理は揃っているんですけど、揃ってたんですけども、ゴダードの時代で、じゃあ実際のゴダードのロケットの写真とかっていうのは、これには載ってないけど、
ちょっとググってみてください、どれだけしょぼいか(笑)。いや、こんなものを発展させたら、本当に地球脱出できるのかという。山路:でもそういう汎用テクノロジーになったすごい発明って、最初めちゃめちゃしょぼいっていうのはありますよね。
小飼:ある、それはある。けっこう面白いことに、ロケットノズルを制御する技術っていうのがなかったんで、タンクが下についてるんですよね、ゴダードのロケットというのは。その意味でも「えーこれが」感はあります。
山路:なるほどね。
小飼:これがV2になりますと、もう一挙に、もうあれは立派な弾道ロケットなので、あとは多段式にすれば、一挙にスプートニクのレベルまでもう行ってしまうという、それまで20年くらいしか離れて、ごめん、20年も離れてないわ、ゴダードのロケットって、
山路:本当に、そうですよね、この大正の時点でもうあったんだっけ、ゴダードのやつは、どうかな、どうだったかな、かなり早い時期にこのゴダードのロケットっていうのは出てきますけど、
小飼:それでも1926年なので、
柳:そうですね、
小飼:20年とかが、10ちょっとだよ、
柳:昭和2年の記事で10年前にこの研究をやっているゴダード先生ですって紹介してますね、
小飼:改めてちょっとナチスの技術力の高さという、
山路:「ナチスの科学力は世界一ィィィィーーーー!」と言いたくなる(笑)、
小飼:いやいやいやもう本当に(笑)、『ジョジョ』のセリフが出てくるけれども。でも、これを発展させればいけるんだっていうのが分かってるというのがやっぱすごいなと、
柳:リテラシーですよね、
小飼:これは本当にまだ、戦争が始まる前のことでしたからね。
山路:他にも宇宙開発以外にも未来のエネルギーのことだったりとか、未来の都市だったりとか、すごく未来予測について語っているものが多いんですけど、
小飼:今よりも未来に対して語っている場面が多いです。
柳:興味を持っている、
小飼:今のやつはむしろ、すでに今そこにあるサイエンス&テクノロジーを紹介している部分というのがかなり大きくて、未来予想という意味では昔の『子供の科学』のほうが夢があっていいという、
柳:解決したいものがすごく身近にたくさんあったのかなとは、思います。こんな不便を科学が何とかしてくれたらいいのにねって、未来のエネルギーも、
山路:(1927年(昭和2年)3月号の記事を見せながら)1927年、昭和2年ですね、
柳:各時代の編集部がこれを引っ張り出してきては、私もそうだし、今の編集長も引っ張り出してしょっちゅうやっている電気の家、これすごいんですよ。昭和2年に予想した未来の家なんですね。
山路:これはもうかなり当てている、
柳:電気を家庭に応用すればどれだけ便利か、これを見ればわかります、掃除も洗濯も電気だって言って、みんながこれでいいなとかびっくりとかなってくれてたんだったら、これ以上の驚きを今の編集部はなかなか提案できないのが残念ですけど(笑)、
小飼:なんだけども、何がなかったのかっていうのを、何を見落としてたのかっていうのに、
柳:それは面白いかもしれないですね、
小飼:やっぱり注目せざるを得ませんでした、
柳:私はすごく電気のことはだいぶ近しい未来として何度も書いてましたね、
小飼:現代人だったらこれなしに済まないだろうというのが、一つありまして。それは一体何でしょうか、というね。
山路:けっこうなもの、ここには映ってますよね、
小飼:テレビは、これは惜しいと言わせていただきます、なぜならラジオはあるから、ラジオはあるんですよ、すでに。
「パソコン」(コメント)
山路:はそうですね、パソコンないですね。
小飼:けっこうそれはいい線いってますね。
山路:通信はいちおう電話はありますね、電話はあったんじゃないかな、
小飼:電話はあったっけ、まあでも電話ではなくて、電気玩具はあったんだけれども、電話は見当たらないな。
山路:電話はここにはちょっとないか、
小飼:電話ないというのがちょっと不思議ではあるけれども、
柳:そう、弾さんにも通信が弱いよねって、すごい、
小飼:(コメントを見ながら)あ、当たりです、そうなんです、エアコンがないんです。
柳:エアコンね、
小飼:エアコンと同じ原理で動くものとしては、いちおう冷蔵庫はあるんですよね、冷凍器って書いてあります、
柳:電気通風器って書いてある、
「よっしゃ当てた」(コメント)
山路:おめでとうございます、
小飼:その意味では、これはもう実現しているどころか、実現している以上ですよね。
柳:未来は来てますね、
小飼:未来はもう今あるわけです、にもかかわらず、いまだに断熱がしょぼいというのははっきり言って許せないんですけどもね、
山路:日本の家、寒いですよね、
小飼:その通りです、耐震性はとにかく、断熱性がダメで(笑)。
「当時はそこまで暑くなかったのかな」(コメント)
山路:って、確かに今の基準で考えたら、割と涼しいと、
小飼:いや、まあでも寒さをしのぐにも、でもたぶん湿気だと思うんですよね、日本の家屋の断熱がしょぼいままで推移したというのも。本州は、二重窓はtodoですね、さすがに新しい家屋というのは二重窓でサッシュも樹脂か、高級なやつだと木だと思うんですけれども。いや、いまだにアルミサッシュとか普通ですかね。あとタワマンもアルミサッシュが普通になってしまいます、どうしても仕様上。風に耐えられん。なんだけれども、新しい家屋だと、いちおうアルミサッシュなんだけど、少なくともガラスは二重で、かつ樹脂のライナーが入っています。
「光化学スモッグはあった?」(コメント)
山路:光化学スモッグはもっと後ですよね、
小飼:まだでしょうね、
山路:あれは高度経済成長期になってからですよね、
小飼:モータリゼーションとほぼ一緒かな、日本の場合は、
柳:この号だとあんまり出てこないですね、続編に、
山路:さっきタワマンが出ましたけど、けっこう高層建築に関しては未来都市とかでこんな感じで、
小飼:そうなんです、
山路:ニューヨークをモデルにしてるんですよね、だいたい、
小飼:もうすでに本物のスカイスクレイパーがあったので、摩天楼があったので。
山路:ただ本当に、交通機関は飛行船が上に止まってたりとかするんですよね。
小飼:そうなんですよ、
山路:飛行船を映してるところがあったかな。とにかく、こういうでかい飛行機とかが飛んでプロペラ機が飛んで、ここには映ってないかな、飛行船は、飛行船出てくるんですけども、
柳:そうですね、エンパイアステートビルの上も飛行船が止められるようにして作られていたっていう同時代の記事になっております。
スタッフ:なんかジブリっぽいですね、
柳:あーそう言われると、
山路:それはそうかもな、
柳:ちょっと夢があるわ、
山路:その辺のところを参考にして宮崎駿が膨らませるからっていうのはあるかもしれないですよね。
柳:飛行船は本当にぜひ皆さん、チラ見を、
山路:(『子供の科学 完全読本』の飛行船記事を見せながら)これが、これか、期待外れに終わったと書かれちゃってますけども、
柳:かなり1920年代は飛行船に期待していた時代だったようで、『子供の科学』も毎号、飛行船を何かしら取り上げています。でもその間にツェッペリン号だったり、ヒンデンブルグ号の悲劇なんかがあったりして、それも取り上げられてるんですけれども、主役候補はそのまま候補として終わっていったというのが記録されております。
小飼:風に弱かったというのはありますよね、じつは。じつは一番有名な飛行船の事故というのはヒンデンブルグ号なんですけれども、最も死者を出したのはあっちじゃない、それじゃないんですよね。アメリカ海軍のアクロンという飛行船が事故って、その時はもっと70人くらい亡くなったのかな。
山路:結局、『子供の科学』とかではすごい飛行船を推してたんですけれども、もう時代はそのあたりからすでにちょっと期待外れになりつつあって、アクロン号とかで決定的になって、ということですよね。
スタッフ:ちなみに公害の件なんですけど、イタイイタイ病が1900年代初頭あたりに、
山路:そのあたりでイタイイタイ病は、そうか、
小飼:あと公害という名前はついてなかったけれども、鉱山の排水の毒、鉱毒というのはもう大昔からあって、田中正造の話とかってさらにそれよりも前だったんですよね、
柳:田中正造はそうですね、確かに。
山路:足尾銅山の話ですよね。
スタッフ:ただ公害というのは、国が認めたというのが契機になるんですよね、たぶん。
小飼:公害という名前がついたのは、いつの頃からなのかな?
山路:ちょっと公害のことに関しては、この時代ではあんまり大きくは取り上げられてなかったなというのか、
小飼:科学の負の側面というのは、まだ戦前の一般向け科学雑誌ではあんまり出てなかったですね。
山路:この辺はちょっと外してる、
小飼:公の害という言語が、ボキャブラリーが初めて出たのは明治29年の河川法あたりらしいです。あるいは明治10年代の大阪府による大気汚染規制っていうのも出てますね、たぶん石炭とかからかな。意外とちゃんと出てはいるんだよな。
山路:あと、その流れで言うんだったら、エネルギーとかなんかに関してもけっこうきちんとした記事が書かれてまして。どこだ? エネルギー、エネルギー、
柳:エネルギーって戦争の時じゃなくて? 電気のとこですね、
山路:そうそう、地下の熱使うとか、そういうような話が出てきたりはしてますね。こういうふうにけっこう、この大正末期から昭和の前期、初頭っていうのってなんかキラキラしてるじゃないですか。
柳:そうですね、
小飼:すごく未来予測、未来の都市こうなるぞとか、未来のエネルギーこうなるぞとか、飛行船は外れましたけど、でもこんなんが交通機関やってすごいキラキラした特集が多いんですよね、
柳:そうでしたね、文明というものになんかこうみんなが憧れ夢と希望を持っていて、それを実現するために科学がこんなに役に立っているっていうところでしたよね、科学の目的が単純にキラキラした暮らしをするためにある、みたいな感じでしたよね。
山路:それがちょっと変わってくるのが、もうちょっと時代遡って、どれが契機と言えるのかな、このあたりか。戦争と科学っていうことになるんですけども。この1928年、1933年あたりから徐々にこう、戦争っぽい、
小飼:自然科学だけですか、まあちょっとそれは、これはちょっと後回しにさせて、
「自然科学だけですか」(コメント)
山路:戦争に関しての記事も徐々に増えてくる。
柳:そうですね、もともと全くなくはなかったと思うんですけれども、本当に強く生活に入り込んでくる感じが出てくるのはそうですね、
横書きが変更になった理由は?
小飼:まずまあこんな感じで始まったんですけども、こんなのが出てくる、ちょっと出してもよろしいですか?
柳:これは昭和12年の9月号の増刊号、
小飼:昭和12ってのは、
柳:1937年ですね、もう戦争特集で増刊号が出されている、
山路:丸々1冊、戦争ですからね、「戦争と科学」。
柳:そうでした。
山路:それはどうしてこんな増刊号が出たかといえば、
小飼:日中戦争が始まったからですね、当時は日華事変と呼ばれていましたけれども、
柳:これですよね、
山路:この今、これが、
小飼:実際に戦争が始まったというのか、まあ再び始まったわけです、
山路:この辺のところっていうのも私、この昔の『子供の科学』読む前ってあんまり戦前戦中の空気感みたいなものって区別ついてなかったんですよね。ここ戦争が始まったって、というあたり、もっと世相って緊張感があるものかと思ってたんですけれども、これって意外になんていうのかな、子供にとってはエンタメ的に楽しんでいる側面がありますよね。
柳:なんかほんと普通の暮らしになんかぬるっと入ってくる感じがなんとなく、毎月読んでいるとあったんじゃないかなとは思って、
小飼:不安より期待が大きいというかね、
柳:そういう書き方をしてますよね。
山路:本当にこう、この戦争の増刊号なんかでも、科学で戦争に、もう科学戦の時代なんだみたいな、そういうテクノロジーを使って戦争に勝利するんだとか、
小飼:そこは間違ってない、
柳:時局豆知識では子供にガチで時局を解説していたり、あとシナの知名の読み方の解説ページもあったりして。そこはもう本気でこの読者をいっぱしのエンジニアなり、軍人なりに育てたいという思惑はあったと思います。それを希望している大人が多かった時代だったんだと思います。
山路:けっこう戦争になったら食えるみたいなところもあったのかな、
柳:あったと思います、
山路:エンジニアなり、あるいは戦地に行って武勲を上げるなり、そういうことっていう感じですかね。
「大本営発表に使われている感じ」(コメント)
山路:ってあるんですけれども、ちょっとまだこのあたりはどうなのかな、そこまで大本営的な圧力が強いかと言われると、
柳:そうですね、ネタバレになっちゃいますけど、アメリカとの戦争が始まるまでは本当に『子供の科学』も比較的牧歌的な記事のほうが多い号もたくさんありましたし、ヨーロッパで戦争が始まったっていう紹介もすごくすごく他人ごとに書いてありましたし、なんか今の私たちと比較していいのかわからないですけど、
山路:そうそう、これ今第2次世界大戦勃発の記事を映しているんですけれど、ヨーロッパの戦争、うちらに関係あるかないかどうかよくわからないですけどね、みたいな、
柳:そうなんですよ、
山路:人ごとなんですよね。
柳:これが人ごとが、昭和14年10月号が人ごとなのがちょっと怖いですよね。
小飼:まぁでも、すでに日中戦争やってたんですよね。
柳:そうなんです。
山路:ぜんぜん別物のこととして捉えてるんですよね、第2次世界大戦と日中戦争の話を。
柳:私たちは今振り返って、一つの歴史のつながりとして見てますけれども、当時の人にとっては一個一個の出来事として、私たちが嫌ですけどパレスチナとかイスラエルとか、
山路:それとウクライナとか別の話だと思ってますもんね、
柳:そう、見てバラバラに、ちょっと似てるのかなって思うとちょっと怖い気持ちにはなりますが、それがリアルに。編集後記ですもんね、だってこれ普通に。今だったら雑誌の編集後記って、よく最近ラーメンが美味しい季節になってきましたねとか(笑)、なんかどこそこオリンピックが盛り上がってますね、みたいなことを書くコーナーですからね。
山路:「この張り切った10月特大号をご覧ください」ってグライダー読本を推してますからね(笑)、
柳:そうですね、
山路:グライダー遊んでみようぜ、みたいなことをまず推してますからね。その辺の雑誌の感じっていうのは、昔の号を実際に読むまではよくわからなかったですね。
柳:でも、弾さんも後書きに書いてくださいましたけど、軍事の記事は本当に多くて、専門的にあるので、戦時下だからなのかなとも思いますけど、どうなんでしょうね。
小飼:しかもですね、寄稿してる人たちがですね、何々中佐、
山路:中将とかもいますよね、
小飼:中将、あっ少将はいたな、中将は、
山路:少将は確かに見ましたね、
小飼:中将はかなり、
柳:上の方の人なんですね、
小飼:軍団長とかそんな感じになりますからね、
柳:ガチの軍人さんが書いて、
小飼:ガチの軍人さんが書いて、
山路:ある意味リクルーティング的な要素もあったのかもしれないですよね。まだひと事だったのが大きく変わってくるのが、これですよね。
「戦争中でも英語を使ってたのかな」(コメント)
柳:なんていい質問なんでしょう、
小飼:ちなみにですね、この『子供の科学』増刊号の戦争と科学特集では、
柳:1937年、
小飼:急降下爆撃という記事があるんですけれども、そこにはヘルダイヴァーとルビが振ってあります(笑)。他にも戦車はちゃんとタンクって、
柳:それありますね、
小飼:中にルビ振ってますし、英語萌え萌えというのか、テクノロジーには英語のルビを振ってあることが多いですね。
柳:マスクもね、防毒面って書いてあって、マスクって書いてあるんですよ、ルビが振ってありますし、
小飼:マジかって言うやつですね、
柳:なんとかビジョン、暗視とかも、
山路:ノクトビジョン、
小飼:ノクトビジョンって言葉が出てくる、当時まだ実現してない技術だったけれども、
柳:漢字を当ててるのが偉いのか、ちゃんとした単語を紹介してるのが偉いのか、ちょっとよくわかんなくなってきますよね、
山路:原語を引けるようにしてますよね、
柳:意味がね、わかりますよね、
山路:それはすごく教育的な材料なのかなとも思いました、単なる中二病ではなく、
柳:中二病(笑)、
小飼:中二病だと思うのは現代人的な感覚であってあくまでも、
山路:やっぱ実用的というか、教育的な方針でそれをやってたと見るべきなのかなと思いますね。
小飼:たぶん現場ではカタカナというのか、英語を使ってたはずです、
柳:マスクを漢字にするにはどうする、という議論だったのが先かなという気がしますけどね。
山路:で、日米開戦のあたりからどんどん、私らがイメージする戦中という、
柳:この時からやっとそんな気はしますし、本当にプロパガンダもどんどん強くなってきます、
小飼:なんですけれども、1942年1月号の大政翼賛会のこれ、
柳:映していただければ。私たちも見てすごいびっくりしたんですけど、
小飼:第6年の正月を迎えました、ですから当時の日本人の認識としては日米開戦というのは戦争が始まったんじゃないんです、戦線が拡大したんですよね、中国との戦争というのはもうかなり長いことやっていて、それがいよいよ太平洋の向こうにも、あるいは南シナ海よりもさらに南にも広がっていったという、そういう認識だったんです。そもそもの認識が違う。
柳:こんなにはっきりとね、すっかり5年もの戦いを続けているのですって書いてあるというのがびっくりしました。
小飼:だから、大東亜戦争なんです、あくまで。
「明治製菓提供かよ」(コメント)
山路:って、そうなんです。
小飼:そうなんです。
山路:明治製菓、本当に『子供の科学』にはミルクキャラメルの広告をいつも載せてくれている会社なんですけども、それが大政翼賛会のやつをどーんとこう(笑)、なかなか、
柳:表紙の裏の表2と我々雑誌業界で呼んでいるスペースを買っていただいていたと思われ、ちょっとそのからくりはわからないんですけれども、この時は大政翼賛会のお知らせ、早寝早起きしろとか、物を粗末にするなとか、よく運動して強い日本の国民になりましょう、と書いてあります。
山路:そうですね、じゃあちょっともう本当に、終戦のあたりにヤバくなってきたところまで飛ばしますか。ここのところでちょっとスタンスとして、『子供の科学』開戦と同時に大増刷(笑)、おいおいおいおいという。
小飼:本当に、
柳:シクシクシク、
山路:いやー、もうね、
小飼:死の商人だったのか、お前はみたいなね、
柳:それはもう偽らざる姿です、私たちは雑誌を発行するために、国から紙を回していただかなければならなかったという事情があって、選ばれた雑誌だけが出し続けることができたと聞いています。
山路:そういうふうに、戦況悪化していくわけですよね。
柳:そうですね、
山路:42年、1944年とどんどん窮乏していく、それこそ『この世界の片隅に』とか、人々の暮らしがきつくなっていくみたいなのが描かれているのがこのあたり、
柳:さっき弾さんが持ってくださった増刊号はすごいボリュームなんですけれど、これが昭和19年の12月号も、超ペラペラ、わかるかな。
山路:背表紙見ると、
柳:ZINE(同人誌などの小規模刊行物)みたくなってきてる、
山路:紙質も悪いんですよね、
小飼:紙質も落ちてます、
柳:ページ数もとっても少なくて、ペラペラになっているんですけど、
小飼:こっちが古いほう、こっちが新しいほう、薄くてしょぼいほうが新しい。ありがとうございます。
山路:さらにそれが進んでいくと、もっとペラペラになっていき、もうどうでしょう、最後のほう、行っちゃいますかね。
柳:そうですね、こういうふうに戦争が進む中でも、
小飼:終わった直後ですね、これは、
柳:『子供の科学』を出し続けていたところ、
小飼:じつは1945年に入ってから『子供の科学』を出していた版元の誠文堂新光社が焼けちゃったんですね。
柳:こことかちょっと見て、出してもらってもいいですか、最後のページ。この本の最後が21年間分の表紙を全241点出しているんですけれど、このページを見てもらうと、さっきの号の後がカラーの表紙でも何でもないのになっていくのがわかると思うんですけど、この昭和19年の12月号の後、誠文堂新光社の関係社屋が空襲でなくなりまして、本を出すことができなくなりました。出せたのは終戦直後の11月号、それと12月号です。
山路:この終戦直後の12月号というのがなかなかすごい内容なんですよね。
小飼:そうだ、横書きに関しては、よく気がつきましたね。これもちょっと後で。後のとっておきということで。
柳:そうですね、この見開きにちょうどあったのも、
小飼:途中で縦書きと横書きが入れ替わります。
山路:それ先に行った方がいいかな、
小飼:先にそれを紹介します。じゃあここで問題です、現代日本語も同様に、
柳:ここ出したらいいんじゃないですか、ここが分かれ目だから、
小飼:横書きは左から右に書くようになってますけれども、これ途中で変わりましたけど、どんな理由だと思います? これ立派な理由があるんです、
柳:こっちに切り替えてもらってもいいですか、ちょうど右から、
山路:このあたりはまだ右から左に読むようになっているのが、
小飼:6月号と7月号の間に境目があるのが、
柳:そうなんです、『子供の科学』の向きが、
小飼:『子供の科学』の向きが変わっております。これは何年でしょう?
柳:わからないですよね、これ。
山路:ここで年が読めないかな。
柳:年はわからないですね、皆さんね、そうですよね。そうですね、
「戦争中に変わったの?」(コメント)
山路:って、そうなんですよね。
スタッフ:なんでしょう? 開き方、
小飼:見開きは変わってないんです、主文は縦書きなので、主文っていうのかな、ボディは縦書きなので。答えは1942年です。皆さんもこれ見て気づくと思いますけれども、戦中なんですよ。変わったのは。なんで戦中に変わったんでしょう。
柳:わからないですよね、絶対。
小飼:これ、なんと当時の文部省の指導なんですよ。じつはそうです、文部省主導だったんですね、縦書き横書きの変更というのは。縦書き横書きじゃない、ごめんなさい、横書きにした時に右から左か、左から右かというのは。じつは横書きにした時に右から左っていうのはある意味、縦書きのままで1文字ずつ改行をしているっていう、理解ですけれども。それが横書きになったと。横書きじゃない、しつこいようですけど、左から右になったと。それが文部省の指導で、しかも戦中だったというのはすごい意外だと思いません?
柳:編集後期に書いてあったんですよね、そういう指導のもと、今後から『子供の科学』の題字はこちらから読んでください、
スタッフ:『はだしのゲン』にあった外国語禁止令とか、そういうエピソードと関係ないんですか?
小飼:関係ないです、むしろこれはあれじゃないですか、ローマ文字表記にあった、
山路:むしろ外国語との親和性は高まるわけですよね、
柳:そうですね、外国語禁止令みたいな香りはぜんぜんないですね、
小飼:むしろ逆でしょ、
山路:鬼畜米英的な文言が出てくるのも、1944年とかそういうレベルですもんね、
柳:そうですね、それまではずっとアメリカの追い越せというか、科学を、
小飼:ちょっと戻って、
山路:ニューヨーク万国博覧会とかの話ですか、
小飼:そうでなくて、B-17の見取り図が、
柳:ありましたね、
小飼:出てくるやつ、それも戦中、
柳:109ページですね、空の要塞ボーイングB-17Eの作り方。これが昭和18年の、
小飼:もったいぶろうと思ったのに、せっかく、
柳:すいません、姉妹誌『学生の科学』5月号に載っていた1943年の記事ですね。
小飼:これだ、
山路:この時はまだアメリカの鬼畜米英みたいな、すごく憎んでいるという感じではないというか、
柳:いちおう敵機の模型として紹介はしていますね。
山路:だけど、空の要塞ってかなりポジティブな表現じゃないですか、
柳:かっこいいですもんね、あこがれ、
山路:相手の強さを認めている言い方ですよね。
小飼:欧州では実際に使われていたわけですよね、でも日本には来ませんでしたね、日本に来たのはこれよりもずっと性能がいいB-29でした。
柳:戦闘機の紹介はとっても詳しく載っていて、やはり解像度を高めようとしていたのか、本当に、それを詳しくなっていいエンジニアを育てようとしたのか、はたまた怖いから、ちゃんと学んでもらおうとしたのか、
小飼:山本五十六を打ち落としたP-38の図面とかも出ています。
スタッフ:この頃は『学生の科学』なんですか?
柳:姉妹誌なんですよね、ちょっと姉妹誌も、戦時中はたくさんの姉妹誌も作らせていただいて、
山路:ちょっとややこしいんですよね、『子供の科学』として売っていたものがある号から、『学生の科学』に名前を変え、それまで『小学生の科学』と言っていたものを『子供の科学』に名前を変えて、いきなり違う雑誌にある号からなるという、
柳:そんな時もありました、
小飼:100周年とは言っても、じつは途切れもあるんですけども、それを言ったらあれじゃん、
山路:南朝北朝、
小飼:皇室もそうじゃん(笑)、ひどい例えだな。旧字体が使われなくなったのはいつかというのは、これはもう割と有名な話で、これはちゃんと戦後で、ちゃんとなんて言えば、字体の単純化をしたというのもやっぱりこれも、文部省からこうしろというのが。たぶんその頃に一緒に当用漢字、常用漢字というのも設定されたと記憶しております。でも、横書きの時に右から左が、左から右になったというのが戦時中で、しかも文部省の、
柳:指導だったというのが、
小飼:意外も意外だったですね。(コメントを見ながら)ISBNはまだないですね、さすがに。
柳:どうしてそういうのにご興味があるのですか、すごい、業界の人かな。
小飼:けっこう重要ですよ、Amazonとかの商品管理ってそれでやってるので。ASINってもともとISBNでしたからね、ISBNをそのままASINでやってて。
山路:いろいろあって、なんとか1945年、昭和20年には2冊だけ出せるんですけれども、この最後というか、1945年の12月に出した本に関しては丸ごと読めるようにしております。この紙版の『完全読本』では。
柳:帯に載っているんですけれども、『子供の科学完全読本』を来年の3月8日までにお買い上げいただいたお客様は漏れなく、この1945年、これもすごいペラペラでちょっとあれなんですけど、この12月号を全ページ読めるようにしてあります、それはこの、こちらにちらっとQRコードとかが載っていて、
小飼:これ、素手で触るのがすごいはばかられるんですけれども、
柳:保存が悪くてすみません、
小飼:この紙質を見ていただけるでしょうか、これ以上開くとばらけちゃうんで、
柳:しかも表紙にもチルドレンズサイエンスって書いてある(笑)、
山路:原著というか原本というか、実物ですね、
スタッフ:これ実物ですか、よく残ってましたね、
柳:ちょっとご提供いただいたりして書き集めているんですけど、
小飼:もう少しひいて、もう少し、そうそうそう。
柳:この12月号は本当に敗戦というのをしっかり書かれている最初の号ですし、編集局便りというか編集後記には、かくかくしかじか新しい時代になったと、でも、どこまでも諸君の真面目な科学研究を力強く育むことを目標として、我々はまた頑張ると、細かいことは1月号で発表するけれども、今後は毎月出していくつもりだと書いてあります。
山路:これ、何ページだって質問ありましたけど、16ページですね、
柳:32ページ、
山路:32ページか、16ページはその前か、
柳:全32ページです、この表紙も入れて。ここにはもう工作教室なんて牧歌的なものもありますが、間に合わなかった新兵器とか、
小飼:ほんと同人誌みたいですね、
柳:電波兵器陣を探るとか、原子物理学の進歩、
山路:原爆も解説してありますもんね、
柳:ちょっとこれは、私もこの本を作る時に初めて読み込んだので、非常に資料性はあるなと思っています。チルドレンズサイエンスがなんか切ないですよね。
スタッフ:その本は流通に乗ったんですか?
柳:乗ってます。80銭って書いてあります。
山路:本当にたくましいんですよね、日本の流通網って、45年って全部壊れてるのかなと思いきや、書籍売ってるんですよね。雑誌書籍を、
柳:じゃあちょっとその恥ずかしい話をしてもいいですか、恥ずかしくはないか、
山路:あれですか、
「戦後最初のベストセラー」と『完全読本』紙版電子版の違い、イベント告知
柳:すいません、さっきのが1945年の12月号なんですけれども、1945年の9月に私たちアメリカ兵が来ることを予想して、私たちの先輩が『日米会話手帳』というものを。これはレプリカです。
小飼:そのまま、そのままの形で復刻したものです。もちろん紙質は現代のものなので、当時ほどショボいのは逆に作れないんですけれども、でもなるべくその辺も真似して作ったようです。
柳:スキャンして作ってますね、
小飼:このサイズ、
柳:これはちょっと私が持ってみましょうか、このカバー、
小飼:ちょっとまたズームしていただけると、そうですね。最初の、さらにズームできるかな、こんな、これ字体見てくださいよ。この活字のつたなさ、
山路:サンキューと書いてあります
小飼:サンキューはいいですけれども、サンキューのほうは割とまともなんだけれども、上のThank you、エクスクラメーションマークというのがもう滲んでいるというか、印刷しているというよりはタイプライターで打ったみたいなクオリティ、明らかにクオリティが低いじゃないですか、大変ありがとうの変とかっていうのはかなりきれいに刷れているのに。この辺のところっていうのも、需要と供給というのか、じつは当時は紙だけではなくて、アルファベットの活字もけっこう難しかったんだなっていう。
「左なんでローマ字なん?」(コメント)
山路:おそらくアメリカ人も日本語を発音できるようにっていうことでしょうね。
小飼:たぶんそういうことなんでしょうね。
柳:これは小川菊松という弊社の創業者社長が天皇陛下のラジオを聞きながら思いついたと聞いてます、
山路:売れるぜ! って、
小飼:もうその時から、じつはですね、日本がオフィシャルに無条件降伏したというのは8月15日ではなくて9月の2日だよね、なのに、まだまだ戦争がオフィシャルに終わる前にこういうのを企画したというのは(笑)、もうなんちゅうしたたかさや、
柳:草稿がもう、大正出版界の風雲児小川菊松さんという方がいて、終戦の天皇陛下のラジオを聞いた時に思いついたという逸話が、もうちょっと本当かどうかわかりません、
山路:なぜこれを出せたのかと、
柳:そうなんですね、
小飼:戦後最初のベストセラーですね、これって、
柳:刷りも刷ったり、300万部。
山路:ははは、300万部。
柳:大日本印刷の輪転機を1週間動員して、地方は間に合わなかったという武勇伝も書かれております。
「終戦の翌月によく紙が入ったね」(コメント)
山路:というコメントがありますけど、まさにそこなんですよ。
スタッフ:売れたんですか?
山路:めちゃくちゃ売れた。
柳:これは本当に商魂はそうですけど、当時の人が心の底から困ったと思うんですよ、負けてアメリカ人が来ることになったってなった時に、一番欲しくなったものを思いついたのを商魂とも言っておいてもいいと思うんですけど、その困りごとに目をつけた、たぶんその人たちのお悩みを解決する方法でもあった、なに笑っているんですか(笑)?
小飼:しかも無条件降伏直後というのは、まだ物資とかっていうのは不足して、配給制のままだったわけじゃん。まだ紙の優先配給というのは活きてたわけじゃん。それを横流しして刷ったわけです。
山路:まさにこの大政翼賛会、
小飼:本当何、この火事場泥棒という、
柳:でもそうやって戦時中に子供たちに戦争と科学を伝えてきた時の紙をちょっと使わせていただいたんだとは思います。
スタッフ:これ、開戦って大谷フィーバーみたいなものだったんですね、つまりお祭りっていうか、
柳:そういう側面もあったと思います、
山路:そういう戦意高揚、国意発揚みたいなそういう感じはあったんでしょうな。
小飼:でも、敗戦で手のひら返しっていうのはよくTwitterとかに出てくる、『はだしのゲン』の何だったっけ、
山路:自治会長だっけ、
小飼:そう、自治会長だっけのが出てくるけど、単なる手のひら返しではないっていうのの一番の証拠が『子供の科学』の復刊なんじゃないかなと。
柳:この本を読んでほしいので、あんまりベラベラ喋りませんけれど、資源不足についても子供たちにとうとうと説明してましたよね。どれだけ石油が必要で、私たちは石油のために云々っていうのも、プロパガンダとも思いますけど、
山路:世界の資源地図みたいな形で、どこが資源があってみたいなことっていうのを世界地図の上にもどれくらいの国が、どういうふうに持っているのかみたいなことを、
柳:埋蔵量とか、何ガロンとか書いてあって。子供たちに戦争を正当化するっていうほどの上、高い視点でもなく、当時本当に心の底からみんなが求めていたのかもしれないですし、ちょっとわからないですよね、当時の雰囲気はって私は思っているんですけど、どうでしょう。
山路:そうですね、本当に読者がそれに関してどれくらいの感じで受け取っていたかというまではわからないですからね。
柳:ちょっとそれを想像する一つのよすがというか、道具にしてもらえたらいいなとは思います。
山路:ただけっこう『子供の科学』の読者層って、やっぱりよく言うブルジョワ臭がするところもあって、本当に44年とかその前とかだと、わりと気楽な投稿が多いんですよね。
小飼:そうなんですよ、
山路:42、3年くらいだとまだ。けっこうそのあたりの温度感というのは階級によっても、階層によっても違ってたところはあるかもしれないですね。
小飼:当時の日本人にとっての、「日本」という感覚というのは現代人とはかなり離れてますよね。当時の日本人というのか、区別をつけるために帝国臣民の皆さんというのは四島だけじゃなくて、北海道本州、四国九州、沖縄だけではなくて、台湾も朝鮮も、当時は韓国ってなかったから、日本の範疇なんですよね。
柳:たくさんお便りをいただいてましたね。
小飼:後には日本が独立させたことになっている満州国という傀儡国家がありましたけれども、そこに住んでいる日本から来た人たちというのも、当然日本の外地に住んでいるという意識で、普通にそこの子が投稿してるんですよね。
柳:そうですね、タイとかも紹介されてますし、やっぱり地方の次男三男の方たちも含めて、そういった資源のある外地に行くというのは比較的好意的に紹介している記事が多いのも、この時代の特徴だと思います。
小飼:やっぱり現代人から見て一番ショッキングなのは、悪気ないんですよ、ぜんぜん悪気ないんですよ、当時は当然、本州とか九州とかの、大もとの日本人以外の人たちというのはやっぱり当然下に見られてたわけですよね。今の言葉でいうと、二級市民とかそんな感じであったんですけど、そういう人たちがいるのが当然の時代だったんですよね。たぶんこの感覚というのは、もはや現代人にはわからないんじゃないかな。僕も知識としては、そういうことなのではというのはわかるんだけど、まず二級市民という概念がもう受け入れられないわけですよ、もう今の憲法の第三章の部分というのが、もう血肉になっちゃってて。もうそれで生まれ育っていっちゃったので。
山路:しかし今起こっている、海外でも起こっている移民排斥とかの流れとか、というのはまさにそういうことの揺り戻しというのかというのでもあるのかなと思いますね、
小飼:揺り戻しではないんです、じつは彼らにもないんですよ。
山路:その経験がということね、
小飼:そういうことです。人種差別ですらない、本当に奴隷が当然のようにいる世界。トイレが当然のように分かれている世界。むしろそういうのはアメリカ人のほうが敏感なんじゃないかな。それがあった時代というのが、日本よりもさらに最近なので。
山路:20世紀半ばを過ぎてあったわけですもんね。
小飼:公民権法って1960年代、
山路:60年代ですよね、そのあたりですよねあ、
小飼:あ、1964だ、
山路:64かそうですよ、アポロ計画始まってます。
柳:でも薄く選民思想じゃないですけれど、そういう前提としている社会常識の違いみたいなものはありますね、読んでてね。
小飼:そういうのを復活させたがっている人も、感覚持ってないんですよ。
山路:なるほどな。ちょっと本の体裁と、イベントの告知について。まず体裁に関して、これは紙の本なんですが、
柳:9月12日に発売になります、
小飼:明後日です、
柳:『子供の科学完全読本』は紙版は先ほど申し上げたように1945年12月号が読めるQRコードが付いてきますので、中身は基本的には白黒です、
山路:予約ありがとうございます、
柳:ありがとうございます、山路さんが紙面、カラーを見せていたと思うんですけれど、カラーは電子版をカラーで今回出させていただきました。ちょっと複雑で恐縮なんですけれども、カラー版にはこの付録は付いてきていません。
山路:NFTの、
柳:NFT付録は付いてきていません。
山路:終戦直後のやつですよね。
小飼:そう、原田さん的口上を言ったら、両方買って(笑)。
山路:原田三夫の商魂が息づいている(笑)、
柳:商魂のDNAを受け継いだ誠文堂社員として申し上げますと、確かにほとんどが一色なので、当時は、一色でもぜんぜんご満足いただけるとは思うんですけれども、たまにグラビアページが入っておりまして、この本書の冒頭にもありますけど、こういうものですとか、あと図面なんかもカラーで見たほうが当時の雰囲気がよくわかるものがありますので、もしカラーで見たいという方は電子版もご覧ください。
小飼:ただですね、手触り、
柳:そう、
小飼:これはですね、こっちのほうがちゃんと当時の雰囲気をきちっと再現しています。
柳:ありがとうございます、
小飼:そうなんです、ちょっと紙版でなければできないことというのは、まさに手触りなので。この手触りの感覚って、けっこう重要なんですよね。
柳:みなさん思い出してください、紙の本の手触りを、
山路:制作の本当に終了間際、柳さんから色校を見ませんかみたいなお誘いが来たんですけど、弾さんも私もまあいいっすみたいな感じでお任せしてたんですけど、実物出来上がると、
柳:なんの興味ももたない二人(笑)。
小飼:当然、我々は現代人なので本書の作成というのは電子的に進められたのですけれども、本書の原材料というのは本当に当時、紙で出版されていた『子供の科学』なので、これの部分というのをどれだけ再現できるかというのはすごいよく考えたところなんですけれども、なので、紙でしか伝わらない部分というのはあります。
柳:ぜひご覧ください。ただ表紙の、先ほど言ったこの21年間の全表紙はちゃんとカラーで見れるようになってございますので、そこは紙版の方もたっぷり、この雰囲気を、
小飼:というのか、基本的に『子供の科学』というのは当時からカラー刷りの部分というのが多くて、表紙とか、時には表紙以外も、そういった部分というのは紙版でもなるべくその部分がカラーになっていますので。ただし面記事というのは基本白黒というよりも黒いインク一色刷りなので、
柳:青だった時もありましたね、青のもあったんですけれど、
小飼:その部分というのは紙版のほうが再現性が高いと思います、僕もびっくりしました、PDF版との違いに。僕も紙版を手にしたというのは、けっこう最近なので、
柳:そうですね、まだ発売前ですからね、
小飼:そうなんですよ。え、こんなに違うの? みたいな感じで。
スタッフ:電子版はけっこう拡大とかできるんですか?
柳:こうすれば、できますので。老眼の方は電子版もいいかもしれないですね。ピンチアウトしてもらえると。
山路:あとこの『完全読本』、今のは『完全読本』ですけれども、実際の当時のバックナンバーも、こちらの科学タイムトラベルというサイトのほうで、それぞれのもう1冊単位ですよね、
柳:これでできるんですか? みなさんに見てもらえる、
山路:これでリンク貼ってあるので、リンクから飛んでいただければ、
柳:1924年の創刊号から1934年の12月号までは、古い本をそのまま電子版として販売しております。こちらのほうも、この本で実際に読んでみたい号に出会われると思いますので、それが1934年の12月号までに入っていれば、全ページAmazonで基本、全ページ読むことができます、ここから先はまだちょっと電子化が進んでおりませんので、皆様がたくさん買っていただければ、
「当時の値段ですか?」(コメント)
小飼:あっはっは、
柳:え? 何? 何?
山路:当時の値段ですか? って、80銭では売れないな、
柳:80銭では売れないな、そういうのをやるとちょっとびっくりされちゃうかもしれないですけど、
小飼:じゃあ当時の通貨で、
柳:通貨で?
小飼:でもAmazonの場合、どうやってそれを決済するのかね。
山路:代引きでも無理だよな。
小飼:読めるようにきれいに電子版を作ったり、目次を作ったりするのに若干お金がかかっておりますので、ご協力いただければ。
スタッフ:それ考えたら、今に至るまでどれくらい価値が上がったかというか、お金がインフレしたかというか、インフレしたかがわかるというか、
柳:そうですね、
スタッフ:当時いくらだったか、
山路:創刊当時と、また終戦の時でもかなり違ってますけどね。
小飼:ただ円は一度デノミやってるので、100分の1にしてるので。
山路:あとイベントですね。9月21日の14時でいいんですよね、9月21日の土曜日の(※編注:日曜日と言っているのは間違い)。
̗̀📣イベント告知- ̗̀ 『 #子供の科学 1924-1945完全読本』 発売記念 トークイベント&サイン会開催決定! 9/21(土) 14時〜 アカデミア 児童書売場前 予約不要、参加費無料 ご来店お待ちしております✨
小飼:続編はこれが売れたら出せるかもしれないですね。
柳:ぜひ弾さんに高度経済成長期のバックナンバーを読んでいただきたいとは思っております。
山路:高度経済成長期編、やりたいですね。
柳:やりたいですね、ぜひ、お声をいただければ、
小飼:僕が生まれた直後ぐらい、高度経済成長期っていうのはいつからいつなんだ?
柳:出た、定義、ただ、今の視聴者の皆さんが自分の子供の頃を見たいというお気持ちがあるようでしたら、一生懸命応援していただければ(笑)、
山路:とりあえず50年代から、1973年ぐらいまでが高度経済成長期、
小飼:やっぱりオイルショックで終わったっていう認識でいいのかな。
柳:今回1945年までやらせていただきましたので、この後1970年代までをやるというプランがあります。
山路:イベント、9月21日土曜日の14時から、イーアスつくばというショッピングモール、
小飼:の中にあるくまざわ書店さんの、
山路:アカデミアという書店ですね、
柳:店舗でお二人に来ていただいてトークショーをいたします。つくばというとけっこう研究学園都市で、研究者のご家庭なんかも多く住んでいるところで、昔から『子供の科学』がよく売れる店舗さんなんですね、それもあってこの本のイベントについてもお声掛けを先方からいただきました。
山路:びっくりしました、まだぜんぜん本とか、書店に見本も行ってなかった段階ですよね、
柳:見本もぜんぜん行ってないですね、でも『子供の科学』が好きな、
小飼:サイン会ではない?
柳:サインも、来ていただいた方には、今回これは申し込み不要、参加料無料でやらせていただくんですけれど、弾さんのサインが欲しいという方は、そのお店で本を買っていただければ、サインしていただけますね。
小飼:はい、
柳:ぜひその時はいらしていただけると。
小飼:つくば万博、いつだったか、198、
柳:4年ですね(※編注:正しくは1985年)。お子さんがたくさんいらっしゃるので、大きなお友達はあんまり怖い感じに、怖い質問とかしないで、
小飼:筑波万博は僕も行った覚えがあります。
柳:なるほど、
小飼:えらい遠かった、
柳:遠いですよ筑波、秋葉原から、
小飼:今はぜんぜん遠くないよな、TXで行けば。
山路:研究学園都市駅、
柳:筑波の終点の、筑波の一つ手前の、
小飼:もちろんバスもなかった。
山路:ということで、
柳:すいません、宣伝ばかりで。あと何か言ってないことあるかな。
スタッフ:中身いっぱい見せてもらってすいません、
柳:ぜひ、視聴者の皆さんは、
小飼:これはもうこの番組を見ていただいている方の特権なので、
柳:たぶん弾さんに感想をコメントで言える立場かと思うので、私も一視聴者として皆さんのコメントが聞けたら嬉しいですし、続編を作る参考にさせていただきます。
山路:ということで、いきなり出演してくれと当日、さっきお願いして出演していただいた柳さんでした。じゃあ、ここからはまた、
小飼:皆さん拍手で、
山路:そうですね、
柳:ありがとうございました、宣伝ばかりで恐縮です。
山路:じゃあ次回の告知も、
柳:『子供の科学』もよろしくお願いいたします。
スタッフ:枠作ってないんで、ごめんなさい、
小飼:枠作るまでは、
山路:じゃあ限定のほうで何やるかの話なんですが。限定のほう、タイトルにもあった通りAppleの新製品発表会あったんで、それのことには触れないわけにはいかんかなと。
小飼:まあまあ、触れられる程度には。
山路:あとはちょっとサイエンス絡みでまた面白げなネタもありましたので。コメントで、
「当日呼んで、これだけ話せるのすごい」(コメント)
柳:いやいやいや、商魂だけでしゃべってます、
山路:もう原田三夫の精神が、
柳:引き継いでおります、
山路:引き継いでおりますね。
柳:ぜひ感想をここにお寄せください。
スタッフ:確認なんですけど、次回が何日?
山路:24日の火曜日ですね。
スタッフ:じゃあ作ります、
「無料長かった」(コメント)
柳:なんか1時間半もすいません、長くなっちゃった、ありがとうございました。
「Apple株売られた」(コメント)
山路:Apple株上がってましたよ、Apple株ちょびっとだけ。
柳:私、いいですか、こんな映ってるままから失礼していいですか?
山路:どっちみち、
柳:切り替わるんですか?
山路:ワイプとかないですからね、
柳:そっか、
スタッフ:時間いっぱいまでどうぞ、
柳:ど真ん中にいるのはちょっと変なので、じゃあ退出します。
山路:イベントは9月21日の土曜日ですね。もう1回いちおう、場所の、イベントのページがなんかないんですよね、
柳:まだないんですよ、これから作ります。
小飼:じゃあできたら、
「21日は土曜日ですよ」(コメント)
柳:土曜日だ、土曜日です、
山路:土曜日か、大変失礼しました、21日土曜日だ。
スタッフ:土曜日、
山路:危ね危ね、めっちゃ、もう最近土曜日、なんか曜日の感覚が。これコメントで、
「本持って、買って持っていけばいいの」(コメント)
柳:そうですね、できればお店で買っていただいて、最初に読んでみたいですもんね、お店的にはどこで買ったものでもいいとはおっしゃってました。可能であれば筑波のお店で買ってください、
山路:なかなかこの辺の、どこで買ってもらうのかって出版社的には戦略的に悩ましいとこではありますよね。
柳:そうですね、地域によってぜんぜん本屋さんがないところもあると思いますし。ただ今回は中高生広く来てほしいので、どこで買ったものでもいいよとはおっしゃってくれました。
小飼:そうなんですよ、うちの近所にという書源という、そこそこ大きな本屋もあったんですけど、そこも閉じちゃったし。
「電子で買って、当日紙で」(コメント)
小飼:それは理想です、大感謝です、
柳:すばらしい!
小飼:それはもう本当に、
柳:大変理想的な読者です、
小飼:最高です。
山路:いやいや、本当にありがとうございます。じゃあちょっと場所を移して。
小飼:いつもと同じような形で。じゃあ次回はですね、これ、9月10日になっているよ。
スタッフ:日程のところ変えるの忘れてしまいました。すいません、
山路:リンクはそのままで大丈夫なんですね。
スタッフ:リンクはちゃんとしてます。
山路:はい、じゃあ次回は9月24日20時からになりますので、よろしくお願いします。じゃあここまで見ていただいた方、どうもありがとうございました。
小飼:ありがとうございました。
山路:じゃあ引き続き限定のほうで。
2 / 110