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  • 404 SPAM Not Found #24 博士の異常な劣情 または私は如何にして心配するのを止めて少子化を愛するようになったか

    2014-06-30 05:14  
    220pt
    小飼弾です。ブロマガをお届けいたします。
    200 Any Questions OK
    今月の質問には痛いところをつかれました。
    Q. 少子化の不都合な真実

    東京都議会の野次問題、まさに弾さんが以前書いた「貧乏な社会で子を産むな」の一例ですね。「景気をよくするために消費税を上げる」のようにわけわかめ。
    なのですが、世界の出生率を眺めていたら、そんなわけわかめがもしかして正しいのかもという気持ちになってきてやばいです。たとえばフランスの出生率は2.0で、日本から見ると羨ましいぐらいなのですが、これって北朝鮮と同じぐらいで、あれだけ国をあげて母子を応援しているのに人口維持に必要な2.1に届いていないんです。それどころか「名誉の殺人」が行われている、日本が天国に思えるぐらい男尊女卑な国の方が出生率高いんです。インド2.2、サウジアラビア2.7、パキスタン3.3…ソマリアにいたっては6.3。
    これって平和と人権をなくせば少子化止まるってことじゃないですか?


    Q. 実はそうです。が、なにか?
    実はおっしゃるとおりなんです。ベビーブームっていつおいきましたっけ?第二次大戦の直後ですよね!
    でもその前に、少子化ってなんでいけないんでしたっけ?
    というわけで今回は去年の私に答えてもらうことにします。『熱風』2013年10月号に寄稿したのは、まさにその「答え」。同誌編集部のご好意のより、このたび転載許可をいただきましたので、加筆訂正の上、以下に転載します。
    300 See 『熱風』2013年10月号
    人口減少は資本主義が育てた
    本稿の寄稿依頼文に、こうありました。

    先進国の中でも先頭を切って人口減少社会に突入した日本。こうした社会構造の変化は、拡大再生産が義務づけられている資本主義そのものの限界、ひいては終焉を意味しているようにも考えられます

    「拡大再生産が義務づけられている?」違います。
    資本主義は、拡大再生産という義務の免除なのですから。
    だからこそ、資本主義を受け入れると人口が減少するのです。
    まずはそれを説明します。
    資本主義とは何でしょうか?一言で行ってしまえば
    「財布が許すかぎり、私がやりたいことは私が決める。他人に文句は言わせない」
    ということです。義務なんかどこにも書いてありません。にも関わらず、資本主義を導入すると、初期段階では拡大再生産が義務づけられているように見えるほど経済が成長します。最初のうちは、やりたいことをやろうにも金が足りないのですから、とにかくとりあえずお金を増やそうとするでしょう。「先立つもの」とはよく言ったものです。義務感では人は動きません。人を動かすのは、欲求です。なぜ計画経済よりも資本主義の方が経済がよく育つのか。義務ではなく欲求を核としたからです。拡大再生産は、あくまでそのための手段。資本主義の目的ではないのです。
    それでは、お金が貯まると何がはじまるでしょう?いや、我々はなにをはじめるでしょう?
    もちろん、やりたいことを、はじめます。
    やりたいこと?なんでしょうか?
    「もっとお金を貯める」というメタ欲求も確かにあります。これのおかげで資本主義が拡大再生産を義務づけているように見えるのですが、これが「やりたいこと」だという人は実はそれほど多くありません。「持てる1%」はとにかく「持たざる99%」がやりたいことはそれではないのです。これを見誤った結果が、「拡大再生産を義務づけている」という誤解です。
    人の三大欲求は「食欲・性欲・権力欲」だったり「食欲・性欲・睡眠欲」だったりしますが、いずれの場合にも食欲と性欲は必ず入っているようです。うち食欲は、21世紀の今では全世界的に満たされているといってもよいでしょう。「先進国の飽食、途上国の飢餓」というのはもう過去の話。一日一人あたりの供給カロリーは、中国が3000kcalに対し日本が2771kcal。残念ながら飢餓そのものは今でも局地的に発生しますが、それは北朝鮮のように計画経済の破綻やソマリアのように、社会そのものの崩壊に起因するものであり、中国などを見れば、資本主義がどれだけ飢餓の根絶に役立って来たかは疑いようがありません。
    では性欲は?
    ここに、「資本主義が人口減少を導く」の秘密が隠されています。
    身も蓋もない言い方をすれば、性欲という欲はあっても育児欲という欲はない--とまでは言えないけれど、性欲に比べればないにも等しい--ということです。我々が欲しいのはセックスであって子供ではない。欲求に対して忠実な資本主義の答えは、明快でした。ならセックスの快楽のみを取り出し、出産の苦痛と育児の苦悩を捨ててしまえばいい。
    なぜVHSがベータに勝ったか?アダルトビデオがVHSだったから。なぜインターネットが爆発的に普及したか?無料無修正のポルノが無尽蔵にそこにあったから。筆者は1969年に生まれたのですが、これはインターネット誕生の年でもあります。その筆者にとって、前者はとにかく後者は生証人。性欲こそが、メディアの進化を推し進める最も強い力。「性欲を満たす」ではなく「性欲に訴える」まで含めれば、性欲に全く触れない作品を探す方が難しいぐらいです。もちろんジブリ作品を含めて。ナウシカのおっぱいにかけて。
    セックスは欲しくても子供は欲しくない我々にとって幸いなことに、いくら自慰に耽ったところで子供は出来ません。そして「本番」では満足できない人々のためにも、セックスのみを入手する手段を現代社会は提供しています。前世紀にはピルという画期的な避妊方法が開発されましたし、中絶すら初期であればRU-486という薬で出来ます(日本では未承認ですが)。こうした子抜きセックスの手法も、もちろん資本主義の賜物。これらの薬が売れなければ、製薬会社にそれを開発し販売するインセンティブはありませんから。
    そして「手慰み」の方に目を向ければ、時代とともに質量ともに充実していっていることは見間違いようがありません。一生かけても視聴できないだけの作品が一年の間に産み出されているのに、セックスなんてしている暇はないという人は増える一方です。ましてや子育てともなれば…
    人口減少は、私権の尊重という資本主義のドグマの当然の帰結なのです。
    社会主義が育んだ資本主義
    しかし、「金はやりたいことだけに払えばよい」という資本主義は、それのみではうまく行かなかったでしょう。なぜかといえば、「誰もやりたくないこと」がどうしても残ってしまうから。

    どんな仕事が好きかという答えは色とりどりだが、どんな仕事が嫌いかという問いへの答えは意外に似通っている。返り血を浴びる「仕事」、ゴミにまみれる「仕事」、いつになったら儲けがでるかわからない「仕事」....職業選択の自由がある限り、これらの仕事を「あなた」がする必要はない。しかし「誰かが」しなければならない。結局誰もやりたがらない仕事は「公」のものとなる -- 「嫌こそ国の上手なれ」

    もしそれらの「誰もやりたくないこと」がされぬまま遺されていたら、資本主義は人口減少という帰結を待たずして、我々の欲求の重さに耐えかねて崩壊していたはずです。ローマ帝国なんてそれで崩壊したといっても過言ではないでしょう。なぜそうはならず、曲がりなりにも今まで来れたのでしょう?
    社会主義という裏打ちがあったからです。
     

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