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ベルトに届かず…されど「世界に届いた中邑真輔」のレッスルマニアを語ろう■斎藤文彦INTERVIEWS
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ベルトに届かず…されど「世界に届いた中邑真輔」のレッスルマニアを語ろう■斎藤文彦INTERVIEWS

2018-04-20 08:00
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    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマは中邑真輔衝撃結末のレッスルマニアです!



    Dropkick「斎藤文彦INTERVIEWS」バックナンバー

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    フミ 今回のレッスルマニアは残念ながらボクは現地取材に行ってないんですよ。レッスルマニア・ウィーク中に行なわれたNXTテイクオーバーやホール・オブ・フェイムなどはWWEネットワークですべてチェックしてるんですけどね。

    ――今回のレッスルマニアは例年以上に日本からメディアやファンが現地を訪れてるように見えたんですけど、この結果にみんな腰を抜かしたんじゃないかなって。

    フミ それはどうしてですか?

    ――正史としては“史上初”ではないんですが、中邑真輔が日本人初のWWEヘビー級王座を獲ると思っていたのに、まさかの王座奪取ならずだったので。

    フミ たしかに「中邑真輔がWWEのチャンピオンになる」ということが確定事項のようになってる雰囲気はありましたね。なぜそうやって信じこんでしまったかといえば、ロイヤルランブルで優勝したレスラーはレッスルマニアでチャンピオンになるケースが多いんです。だからこそ今回はWWEが外してきたという説もあるんですね。

    ――中邑真輔が負けた瞬間「さすがWWEだな……」って唸りました。いや、もし自分が現地観戦していたら空いた口が塞がらなかったかもしれませんが。

    フミ 中邑真輔がAJスタイルズのスタイルズ・クラッシュでワンツースリーを取られたときは「えっ!?」という驚きがありましたね。みんなもがあっけにとられていたでしょう。同じ日本人レスラーのASUKAもシャーロット・フレアーのベルトに挑戦して敗れましたが、こちらはどちらかといえば世界王座奪取は難しいんじゃないかと考えていたんです。

    ――ASUKAが頂点に立つのはまだ時間がかかるんじゃないかと。

    フミ 中邑真輔の場合は今回のレッスルマニアでチャンピオンになり、そのあとの物語を想定する声が挙がっていたんです。レッスルマニア以降はチャンピオンとチャレンジャーが入れ替わってのリターンマッチ・シリーズ。チャンピオンの中邑真輔に挑戦者のAJスタイルズが挑む抗争がサマースラムくらいまで続くんじゃないかと。

    ――ところが中邑真輔は敗れ、試合後にAJスタイルズの前に跪いてベルトを渡すふりをして金的攻撃を見舞ってまさかのヒール転向。日本からの視点でいえば「日本人初のWWE王座奪取」がポイントで、今回のレッスルマニアを一つのクライマックスとして捉えていたので、この展開はさすがに驚いたんだと思います。

    フミ でも、それでは映画でいえば「THE END」のシーンになってしまいますよね。WWEはどこまでいっても連続ドラマを見せていくし、ただのハッピーエンドでは終わらないことが多いんですね。レッスルマニア翌日の『ロウ』、その翌々日の『スマックダウン』は、海外のドラマでいえば新シーズンの第1話に相当するんです。実際にニューカマーが続々と登場してきました。中邑真輔のいる『スマックダウン』にも新展開が起こっていて、『スマックダウン』のGMだったダニエル・ブライアンが復帰をはたして、その後釜には前日の『ロウ』で引退宣言したばかりのペイジが就任しました。新たなGMとなったペイジが初めて手掛けたメインイベントがAJスタイルズ vsダニエル・ブライアンのシングルマッチ。いきなりのビッグカードの試合途中にヒールに転向したばかりの中邑真輔が乱入してきます。面白いのはキンシャサを最初にぶつけた相手はダニエル・ブライアンのほう。返す刀でAJスタイルズにもキンシャサをぶち込んだんです。

    ――中邑真輔はダニエル・ブライアンも標的にするというわけですね。

    フミ これでAJスタイルズ、中邑真輔、ダニエル・ブライアンのトリプル・スレット・マッチまで想像できるんですが、まだ中邑真輔のヒール転向を受け止めきれない日本のファンも多いと思うんですね。

    ――ちょっと展開が早すぎますね(笑)。

    フミ これは各方面で論じられたり、報じられてることではあるんですが、WWEに昇格してからこの1年間、中邑真輔はまだWWEの長編ドラマの登場人物にはなっていなかったんじゃないかと。あくまで国際的なスターとしてWWEにやってきたゲスト的な扱いで。

    ――まだゲストだったと。

    フミ WWEでは破格の扱いでした。あのジョン・シーナからシングルマッチでフォール勝ちをする。ジョン・シーナからワンツースリーを取れる人ってなかなかいないですよ。ランディ・オートンとシングルでやったときは、オートンの必殺技RKOをしっかりと防御して、キンシャサでまたもワンツースリーを取りました。ジンダー・マハールのベルトにも挑戦したときはシン・ブラザーズの乱入もあって負けるんですが、トップレスラーとしての扱いだったんです。そしてロイヤルランブル優勝という流れがあったからこそ、 今回のレッスルマニアでは王座獲得は確定だろうとみんな信じていたわけですね。

    ――いやあ、そう思っちゃいますよねぇ。

    フミ ロイヤルランブルで優勝した中邑真輔は、ブロック・レスナーのユニバーサル王座、AJスタイルズのWWEヘビー級王座、どちらかの指名権を得ました。マイクを向けられた中邑真輔はAJスタイルズを指名しました。するとAJスタイルズは「これはドリームマッチだ!」と中邑真輔の挑戦を喜びます。

    ――AJスタイルズの新日本ラストマッチ、2016年1月4日東京ドーム以来の再戦。感慨深いものはあるでしょうね。

    フミ 新日本時代からの2人の物語を知っている日本のファンにとっては魅力的なカードです。でも、アメリカのプロレスファン、つまりWWEユニバースにしてみれば、中邑真輔とAJスタイルズの2人のそれまでの関係は知らないんですよ。それにアメリカでは滅多にやらないベビーフェイスvsベビーフェイスという構図。アメリカンプロレスのセオリーに当てはめるならば、いずれどちらかがヒールにならないと成り立たない。ところがベビー同士のままレッスルマニアを迎えてしまったんですね。

    ――日本からすれば、ロイヤルランブル優勝、日本人史上初王座獲得、AJスタイルズとの関係……という物語がスムーズに進んでいたことで、ベビー対決の違和感を感じなかったかもしれないですね。

    フミ “日本の続き”ということでWWEの中のお話として見られなかった。これはWWEが日本を無視してるというわけじゃないんですが、WWEは日本のマーケット、日本のオーディエンス、日本のファンだけを視界に入れてストーリーを作ってるわけではないんです。日本はあくまで世界のマーケットの中の一つに過ぎず、大きな流れはあくまでもアメリカを中心として考えてるんですね。それはつまり今回のヒール転向により、中邑真輔はいよいよそのWWEの大河ドラマの登場人物に加わったと言えますね。

    ――お客様から登場人物に切り替わった。


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